127話 5月25日#13
岩場の一番高いところで、誰かが佇んでいた。近づいてよく見ると、それはモルガンだった。
「……貴様らか」
モルガンはそれだけ言うと、俺たちから離れていこうとした。
『モルガンさん。一緒に見ましょうよ〜!』ピエール33世が、明るい黄色に光りながら言った。
「貴様らと馴れ合うつもりはない」
「まあ、そう言わずに」テンはそう言いながら、帽子から大きな布のようなものを取り出していた。
「……それは?」
俺が訊ねると、テンは得意げに言った。
「『レジャーシート』だよ!少しでも座り心地がよくなると思って!」
「……思うんだけど、あんたのその帽子、ずいぶん収納能力高くない?あたしたち星霊使いの『家』の収納並みな気がする」リアがテンの肩の上で、そう言った。
「そうでもないよ?」
「そうかしら?」
「……うるさい。早く座れ」
――おや?モルガンがレジャーシートの上に座っている。
「貴様らが、我を置いてこんな座り心地よさそうなところで座っているのは、我慢がならん」
俺たちはくすっと笑い、モルガンの邪魔にならない位置に座って、レイの方を見た。
レイは、ピアスのランプをつけていたので、夜でもどこにいるかすぐにわかった。大剣がレイの後ろに浮かんでいて、月の光の反射でキラッと光っていた。
対するソフィアは、そこから離れた小島のところにいた。こちらは花から噴き出す粉――たぶん花粉――が月の光をキラキラ反射していた。幻想的ではあるが、なぜ花粉が光を反射するのかはよくわからなかった。
突然、植物の蔓が動き出した。レイの頭の上を独占し、大量の花粉を振りかけていた。
「『ミラージブラスト』!」
レイがそう言うと、熱い風が吹き荒れ、花粉が空へ舞い上がった。そして俺たちは、その花粉を吸いこんだ。
途端に、全員が苦しみ始めた。
「これ……ビリビリする……!」
「神経を麻痺させる系の花粉だね……!」
「……んな花粉、いらねえよ……!」
よく見ると、レイは片膝をつきながら「間違えたー」とつぶやいていた――レイも花粉を吸ったらしい。
そこへ、6本のハチェットを持った6本の植物の蔓が迫っていく。
「……あー、なるほど」
レイは、ぼーっとハチェットを眺めている。
しかし、ハチェットが振り下ろされる寸前、
「『ウールプロテクション』」
と、つぶやいた。
突然、蔓に何かが絡みつき、ハチェットの動きが止まった。
それと同時に、そこらで舞っていた花粉の量が徐々に減っていく。
「『ウール』?」リアは、震えながら立ち上がった。「あれ……『羊の毛』なの?」
――思えば、レイは『おひつじ座の星霊使い』なのに、今まで羊らしい魔法を使ったことがなかった。
これはなかなか珍しいものを見た――と思った瞬間、
「『フラッシュバック』!」
――蔓に絡みついていた羊の毛が、燃え出した。
「え……」
羊の毛は、燃えながら伸びて植物に絡みつき、一緒に灰になっていく。それと共に、花粉が火で弾き飛び、あちこちで小さな火花が飛び散った。
それを見た俺の感想は、
「……やっぱり燃やすんだ……」




