125話 5月25日#11
「……で、何でソフィアさんはここにいるんですか?」
テンの問いに、ソフィアは涼しげな顔でこう答えた。
「私はいつも、屋台で食事を摂っている」
『え?い、家では食べないのですか……?』
「私は家事が苦手でな……家の中が、人が住むのに適した環境とは、とても言い難くて……」
――どんな『環境』なんだろう……?
「それより、レイ」ソフィアはレイの方を振り返った。「君、ずいぶん思い切った行動に出たな」
ほぼ、テンと同じことを言っている。
「私の考えは、悪くないと思うんだが」
「……まあ、確かにな」ソフィアは頷いた。「だが、あの高慢なレジェンダリを動かすのは難しいだろう」
「えっと……そもそもあのアイディア、『悪くない』んですか?」
ドラゴンの手伝いするなんて、かなり突飛なことを考えたなと思っている。
「実は、ドラゴンの心の中は、私でもピスケスでも読むのは難しい……つまり、敵に情報を与えることがない」
ソフィアは、ビールをごくごく飲んだ|(これも、何かイメージと全然違う)。
「それに、完全に力を戻せば、星霊使い並みの火力がある。こちらに協力してもらえると、これほど心強いものはない」
「でも、ドラゴンは危険……大丈夫……?」
ソラは不安そうにソフィアに言った。
「……まあ。たぶん大丈夫だろう。仮に本来の力で歯向かってきたとしても、レイなら簡単にねじ伏せられる」
「……それって一体、どんな戦いなんだよ……?」
――というか、話しぶりがさっきから……
「もしかして、モルガンに鍵を渡すつもりでいるんですか……?」
「……ああ」ソフィアは頷いた。「先代のウィルゴは頑なに拒否したようだが、私はそんなことをする必要性を感じなくてな」
ソフィアはビールのジョッキをテーブルに置くと、急に難しい顔をした。
「しかし、何もせずただ渡すだけというのも違う気がして、私は条件をつけた。私としては、彼女にもう少し謙虚さを学習してもらいたいと思っているのだが」
『まあ、仲間として動くようになったら、そういうのも必要ですよねー』ピエール33世はピコンと緑色に光った。
「だから、モルガンが負けた相手であるウィルゴが、実はアリエスに圧勝されるとわかったら、少しは自分の力を見直すきっかけになると思う」
それを聞いて、俺は首を傾げた。
「それって、手を抜くってことじゃないですよね?」
「違う。お互い本気で戦ったら、私はレイに絶対勝てない」
それを聞いて、全員の目線がレイに集まった。
「あれに……レイが圧勝するの?」
「レイは火力だけでなく、心の中を読みにくい体質だからな」ソフィアもレイの顔を見た。「勘を頼りに、何をするか一瞬で判断できる。私ではその早さについていけないと思う」
「んー、そなの?」
本人は、自覚がない。
「……ま、そういうわけだ」ソフィアは立ち上がった。「今夜、私とレイが戦う。それをモルガンに見てもらう……モルガンは私が探すから、私がソラに連絡するまでどこかで待機していてほしい……以上だ」
ソフィアは、料理を食べ終わった後の皿を手に、返却台の方へと去っていった。
ちなみに、『心を読む魔法』は結構魔力を使うので、戦闘中もそうでない時も、『常に心を読み続ける』ということはできないようです。




