124話 5月25日#10
「うーん。いいアイディアだと思うんだけどなあ……」
「何というか、思い切ったこと考えるね、レイさん……」
テンはレイの横を歩きながら、少しずつレイの方へ近寄っていった。
「ところで、レイさん。これから2人きりでどこかへ行きませんか?」
「どこへ?」
「どこへでも、レイさんの好きなところへ」
「私、ベッドの上以外に好きなところない」
「うーん……あ。そういえばレイさん、本が好きだよね?本屋なんていかが?」
「……何でもいいが、俺たちの前で堂々と口説くなよ」
俺は呆れながら、2人の後ろを歩いていた。ピエール33世とソラと、ソラの肩の上のリアも一緒だ。
「……ホント、君って無粋だよね」テンは、俺の方をちらりと見てから、はあとため息をついた。
「『無粋』というか、お前が恥ずかしいとは思わねえのか?」
「だって、あんな開けっぴろげに僕の気持ち言われちゃったら、君たちに隠す必要ないし……」
「『隠す』って、何を?」
――レイには、テンの気持ちが全く届いていないようだった。
「そんなー……でも、そういうところもいいんだよなー……」
「そもそもあんた、最初からその気持ち、ほとんど隠してなかったわよ」
リアが、マジでめんどくさそうにそう言った。
「うーん、やっぱそうかー……ポーカーとかは得意なんだけどなー……」
何か、これ以上いじったら、ちょっとかわいそうかもしれない。俺は何も言わず、2人の後ろを歩くことにした。
「それで、夕食はどうするの?」と、リアが訊ねた。
『そうですね……』ピエール33世はあたりを見渡した。『あっちの方行ってみませんか?いろんな屋台があるみたいですよ!』
ピエール33世が見ている方角に目を移すと、確かにいろいろあって……しかも、どこか外国の珍しい料理もある!
「ヴィクトリアの、海峡を挟んで北側には『テルメア国』がある……」ソラはガイドブックを見ていた。「テルメアは多くの国と国境を接しているから、いろんな国の食べ物が手に入りやすい……」
「でも、テルメア自体はあんまりいい国じゃないよね」と、テンは言った。「隣国とよく戦争してるし……今でもイェリナとギスギスした関係だし……」
「でも……ごはんは美味しい」
「まあ、確かにそうね」リアは、小さな体で背伸びをして、遠くの店の様子を眺めた。「あ♪あそこ……いろんなお菓子が並んでいるわ!かわいい♡美味しそう♡」
「……俺たち、夕飯食いに来たんだけど」
そんな話をしながら、俺たちは屋台で適当に料理を見繕って、イートインスペースで食べようとした。
そこで出会った人物は……
「………………」
「あの……ソフィアさん……?」俺たちは目を丸くしていた。
「……ああ。君たちか」
ソフィアさんが屋台飯……何だか意外な組み合わせだ。
「君たちもここで食事か」
「はい、そうです」
「じゃあ、ここに適当に座ってくれ」
ソフィアはそう言いながら、ペーパータオルで口元を拭いた。
俺たちは顔を見合わせてから、ソフィアさんの座っている席の周りに座って、夕飯を食べ始めた。




