112話 5月24日#06
手に入れた弓は、普段リアが持っていてくれることになった。この時初めて知ったが、リアは物の大きさを自由に変える能力を持っているらしい。
――やっぱり本人がこんなに小さいのは、自分自身にその魔法をかけているからだよな。
確かに、リアは弓の貴重さを理解してくれているし、レイの大量の本に潰される心配もない。ソラも星霊使い特権の収納庫を持っているはずだが、やはり持ち運ぶのは、リアが一番適任だろう。
気が向いたら手入れすると言ってくれたし、ここはリアを信じてあげよう。
俺たちはあちこちの店を巡り、4時近くになり、定期船が乗り入れる船乗り場目指してとことこ歩いていた。一昨日は雨が降っていたが、今日はすっきりと晴れていた。
遠い水平線も、きれいに見える。
「ああ。『何も起きない』って、こんなにいいことなんだな」
『ホント、平和ですねー!』
「たまにはこういう時間も必要だな」
ぼけーっとしているうちに船乗り場にたどり着き、定期船に乗船した。
「いやー。ホント何もないね」
「平和……大事……」
「そうよねー♪何より、楽ちんよねー♪」
みんなで同じようなことを言いながら、割り当てられた船室|(3等の8人部屋)に入り、カードゲーム|(神経衰弱)をやっていると、船室の中に誰かがやって来た。
「貴様……ここにいたのか」
振り返ると、そこには女性がいた。
その人はソラと同じように真っ黒な服を着ていたが、ソラとは異なり、メイド服ではなさそうだ。どちらかというとゴツい感じがする。
それはたぶん、腰についている大きな鎖とか、肩についている小さな棘状の飾りとか、硬そうなアームカバーとか、靴底の高い靴とか、そういうのがあちこちにあるからだろう。
その人は長い金髪で、目が赤かった。そして手に、なぜか黒い日傘を持っていた。日焼けが気になるのだろうか?
「これから『おとめ座の星霊使い』に会いに行くのか?」
その女性の目線の先を見ると、ソラがいた。ソラは下を向いていて、少し怯えているように見える。
「それから……貴様らは何だ?」
もう一度女性の方を向くと、バチッと視線が合った――睨まれた。
「なぜ、その女といる?」
「僕たち、友達でーす」俺が何か言う前に、テンが挑発的なトーンでそう言った。
「まあ、そんなところだ」俺は肩をすくめた。「どういう関係か知らないが、あまり高圧的な態度をとらねえ方が身のためだぞ」
「……ふん。そうか」
女性は鼻を鳴らすとくるりと後ろを向き、どこかへ行ってしまった。
『「「「……今の誰?」」」』
俺たちがソラに訊ねると、ソラは小さな声で答えた。
「モルガン……ウィルゴに会いたがっている……『レジェンダリ』」
――ん?何だそれ?
みんなが首を傾げる中、ピエール33世が1人、『ひええええ!!』と反応した。
『『レジェンダリ』!』ピエール33世は赤い光を発した。『みなさん!あの人はドラゴンですよ!!』
「「「…………え?」」」
「大昔、世界を支配していたドラゴン……」と、ソラはつぶやいた。「月の神たちが生まれた時に、ほとんど滅ぼされた……『レジェンダリ』の生き残り……」




