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月と星座と剣士の旅〜魔法が苦手な俺が、魔法で神様を救う話〜  作者: く~が~
バッカス編

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103/122

103話 5月23日#14

 それから、俺たちはブレーカーを探して、あちこちの部屋の中を見て回った。



 ――しかし、それらしいものは見つからなかった。



 そしてとうとう、廊下の一番奥にある部屋にたどり着いた。部屋の中央に台座があるだけの、簡素な部屋だった。


 そして、台座の上にあったものは……



 「……ボタン……」



 赤くて丸いボタン。説明書きはないが、絶対に押してはならない雰囲気がある。



 「……これは無視しましょ」


 「そうだね」



 俺たちが部屋から出ようとしたその時、



 ――レイがボタンを押した。



 『「「「「え……」」」」』



 鉄の扉が、大きな「バンッ!」という音を立てて、ひとりでに閉まった。


 それと同時に、大きなサイレンの音が鳴り響いた。



 『緊急事態ハッセイ!緊急事態ハッセイ!』


 「……何これ」


 「『何これ』じゃないわよ!アリエスのバカーーー!!!」



 部屋の天井に、赤く光るライトがついていた。サイレンと同時に作動したものだ。


 部屋全体を照らすくらいには明るかったが、手元がよく見えるほどではなかった。



 「……やっぱり、開かない……」ソラが渾身の力を込めて入り口の扉を開けようとしていた。


 「どうしよう?」


 「この部屋、台座以外に何もない気がするけど、まだどこかに仕掛けが……?」



 テンがそう言って1歩歩くと、足元から「ピチャッ」という音が聞こえてきた。



 「……水?」



 部屋に入ってきたときはなかった水が、足元を濡らしていた。



 『まさか、アレじゃないですか?』ピエール33世が赤く光った。『水がどんどん溜まって、最後は溺れ……』


 「そんなの、いやー!!」


 「……僕も、せっかく乾いた一張羅のコートを、またびしょびしょにしたくない」



 ――余裕あるなー。



 「とにかく、この部屋から出る方法を探さなきゃ」



 見たところ、この部屋には赤く光るライトと、中央に鎮座するボタン付きの台座ぐらいしかない。


 あたりをきょろきょろしているうちに、水の量がだんだん増えてきて、あっという間に足首近くまで溜まってきた。



 「きっとこのライトに仕掛けがあるわ!」



 リアはそう叫び、赤いライトに向かって矢を放った。



 ――結果、赤い光とサイレンは消えたが、相変わらず扉は開かないし、水かさはどんどん増えるし、ついでに真っ暗になった。



 「え……」



 その時、パッと光が灯った。空中に、テンの生首が浮いている。



 「……きゃああ!!」


 「……あ。思ったより反応がいいね!」



 テンは『電池式小型ライト』を、光が自分の顔の下から当たるようにして持っていた。



 「やっぱりこういう時は、ユーモアがなくちゃ!」


 「……今は、そういう幼稚なユーモアは要らん」


 「それはさておき」テンは、もう1本のライトを俺に渡しながら言った。「この部屋、他に何かある?壁に仕掛けがあるとか?」


 「…………ない!何もないぞ!」



 水が、膝に届こうとしている。



 「こ、これ以上水が増えたら、僕のコートが……!」


 「あんた、自分の命は気にならないの!?」


 「あたしはもう、膝上まで水に浸かってる……」


 『どうしたらいいんでしょう!?ワタクシ、神なのに、何もできない役立たずでごめんなさい!!』


 「あ!水が増えたら、扉が耐えられなくなって開くとか……」


 「あんな頑丈な扉が!?」


 「……たぶん、その頃にはあたしたち……」



 水が、腿の真ん中くらいまで上がってきた。



 「もー!死にたくない!!誰か扉を開けてーー!!!」



 ――と、リアが叫んだその瞬間。



 「……めんどくさいなあ……」



 レイはそう言って、また赤いボタンを押した。



 『「「「「え……」」」」』



 ――ガチャン。



 鍵が外れる音が聞こえた。



 「……マジで?」



 扉を押してみたら、ちゃんと開いた。


 水が勢いよく廊下へ流れ出て、俺たちは押し流されるようにして廊下へ出ていった。



 『「「「「………………」」」」』



 「……ただ、あれを押せばよかったってこと……?」リアは、俺の肩の上で腹ばいになってため息をついた。


 「レイさん、君……いつから気づいてた……?」



 テンがそう訊ねると、レイは不思議そうな顔をしていた。



 「『気づく』も何も、『ボタンを押すと閉まる扉』なら、『もう一度ボタンを押せば開く』んじゃないのか?」


 「……だったら、さっさとボタンを押してくれれば……」


 「……そんなに、あの部屋にいるのがイヤだったのか?」


 『「「「「………………」」」」』

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