第三十九話 コンテストが終わって
スカーレットの一行は、紅の庭園へと戻ってきていた。
深紅の花々が咲き誇る、彼女たちの拠点。
何度も集い、何度も語り合ってきた場所。
だが今日は、いつもより騒がしい。
【さつき】「やったああああああ!!」
【cat】「優勝ですよ!? 優勝!!」
本人たち以上のテンションで叫んでいる二人に、アメリアとメリッサは思わず苦笑する。
【アメリア】「そんなに叫ばなくても……」
【メリッサ】「喉、潰れますよ?」
【さつき】「潰れてもいい!!」
【cat】「歴史的瞬間ですから!!」
ゆりは穏やかな笑顔で頷き、ミロクは腕を組んだまま、どこか誇らしげに言う。
【ゆり】「本当に……嬉しい結果ですね」
【ミロク】「まぁ、努力は裏切らなかったってことだな」
ももは、いつも通りの落ち着いた口調で肩をすくめる。
【もも】「わかってたけどね。二人なら、ここまで来るって」
アメリアのステータスウィンドウには、新たな勲章が輝いていた。
【箱庭の王者】
優勝者の証。
この大会で、頂点に立った者だけに与えられる称号。
【さつき】「うわぁ……本物の“王者”だ」
【cat】「まぶしすぎます……!」
だが、メリッサはクスッと笑った。
【メリッサ】「スカーレットの面々は、元から箱庭の王者みたいなものですよ」
【ミロク】「違いねぇ」
【もも】「今さら感ある」
【アメリア】「みんなのおかげだよ」
その言葉に、誰も否定しなかった。
しばらく笑い声が続いたあと、メリッサがふと思い出したように言う。
【メリッサ】「ねぇ……今度、みんなで祝勝会やりたいな」
【アメリア】「リアルで?」
【メリッサ】「ええ。今度は、アメリアのいるところに行きましょうよ」
【さつき】「行く行く!!」
【cat】「観光もしたいです!!」
【ゆり】「いいですね」
【ミロク】「予定、空けとくか」
【もも】「仕方ない、付き合ってあげる」
自然と、次の約束が決まっていく。
勝利の余韻の中で、彼女たちは“次”を見ていた。
やがて、各自がログアウトの準備に入る。
【アメリア】「じゃあ、またね」
【メリッサ】「お疲れさまでした」
紅の庭園に、静けさが戻った。
――そして、現実の世界。
アメリアは阿里亜として、メリッサは玲華として、スマホを手に取る。
LINEの通知が、ほぼ同時に届いた。
「今日は本当にお疲れさま!最高だったよ!」
「うん……ありがとう。アメリアが優勝してくれて、嬉しかった」
玲華は、ここで本音を伝えることにした。
本当は隣に並ぶより、阿里亜を越えたかったと。
「次のコンテストは、覚悟しといて」
阿里亜はその意味を理解する。
いや、本当はもう、わかっていたのかもしれない。
「うん、全力で勝負しよう!」
画面の向こうで、二人はそれぞれ、静かに微笑んでいた。
勝利の先にあるのは、順位でも称号でもない。
また一緒に笑える未来だった。
一方、大会が終わり、喧騒の残り香がまだ空気に漂う中。ケルベロスの拠点には、いつもの騒がしさとは違う、誇らしい熱気が満ちていた。
中心にいるのは、4位入賞という快挙を成し遂げたアリス。その周りを、ギルドメンバーたちが囲んでいる。
【牙】「4位だぞ? 胸張れ胸張れ!」
【Miley】「ベスト尽くした結果だよ。マジでカッコよかった」
【白兎】「あの立ち回り、芸術点高すぎ」
【黒鉄】「無駄がなかった」
【らん】「最後まで冷静でしたね」
【伯爵】「誇るべき結果だ」
【ピノキオ】「ボク、ちょっと泣きそうだったよ……!」
アリスは照れたように笑いながら、静かに首を振る。
【アリス】「ありがとう。でもね、悔しさはないの」
その瞳には、後悔も未練もない。
【アリス】「できることは全部やり切った。だから、すごく満足してる」
その言葉に、誰もが納得する。
【Miley】「それが一番だね」
【黒鉄】「潔い」
そして、牙がニヤリと笑った。
【牙】「よーし……」
指が動き、32サーバーの全体チャットが開かれる。
【牙】「長らく待たせたなバトル勢!俺たちは箱庭コンテストでさらに絆を深めた!今週からギルバト再開すっから覚悟しとけよぉ!!」
一瞬の静寂。
そして、爆発するようにログが流れ出す。
【鬼朱雀】「いいねぇ、待ってました!」
【シン】「またやろうぜ」
【ベディビア】「戦いでは負けません!」
【すなっち】「歓迎だぜ!」
【ぽよぽよ】「また賑やかになるね〜」
【飛車】「受けて立つ」
32サーバー全体が、再び戦いの熱に包まれていく。
【白兎】「相変わらず、牙さんの一言で嵐ですね」
【伯爵】「だが、それが32の日常だ」
【らん】「うんうん、牙さんは……いや、私たちケルベロスこそ32サーバーの中心だから!」
【牙】「ハッ!ちげえねぇ!!」
アリスはチャットの流れを見つめながら、静かに微笑んだ。
【アリス】「……やっぱり、この場所が好き」
順位でも、称号でもない。
共に戦い、笑い、ぶつかり合える仲間がいる場所。
それこそが、ケルベロスにとっての居場所だった。




