10話 パ
――とある、シアタールームにて。
清掃用の衣服に身を包んだ、銀色の髪をした青年が、せっせとシアタールームの清掃をしている。
色白で美しく、線の細い、中性的な外見に似つかず、楽しそうに肉体労働に従事していた。取り回し易そうな、ハンディの掃除機で、座席の埃を吸い上げている。
彼は、彼を見ているあなたに気がつくと、笑顔で歩み寄り、話し掛けてくる。
◇◇◇
やぁ、こんにちは。
今は、清掃員を務めてる、パンドラ・コントンスだよ。この名前に、聞き覚えは?
無い?
無いよね。
うんうん、そうだよね。
むしろ、その方が、好都合かも。
じゃ、パンドラ・コントンス……、長い名前だから、略して『パ』と呼んでもらおうかな。
さて。
ずいぶんと、深いところまで入り組んでしまった、この物語……。ここから、クライマックスに進む前に、ゲストの思考を整理・整頓・清掃する。パは、そんな御仕事を任されているんだよ。
それから……
お話を、二つ目のプロローグからもう一度、見返してもらえたら、パが物語を"整理整頓清掃"するために働いていた、他の御仕事についてもわかってもらえるんだけと……。
まぁ、そこまでは望まないよ。
それじゃあ……。
本編が、世界の巻き戻りと改変を続けている幕間の待ち時間の間――、物語を最初から、振り返っておこうか。
◇◇◇
【なろうモノ嫌いの異世界記】
流行りの「なろう系」に馴染めず、なんとなく否定的な考え方を持って暮らしていた尾張匙は、ある夜突然、女神によって異世界へと運ばれる。
彼には、チートスキルも、ハーレムも与えられることは無かった。だが、彼を召喚した召喚術師、ポタル・ギムズとの共同生活の中で、自分の能力や経験を活かしながら、それなりに異世界での成長を続けていった。
サジは、王都の裏で陰謀を企てる、自称・正義の魔王フギリと対峙する。冒険の中で仲間となった、彼の使い魔、黒曜岩龍オンと、そしてポタルと力を合わせ、フギリの野望を打ち砕く。
魔法の力を使い果たすと同時に、使命を終えたサジは、現実世界へと帰還するのだった。
女神から冒険の御褒美として与えられた、web小説『なろうモノ嫌いの異世界記』とともに。
◇◇◇
【なろうモノ嫌いの異世界2】
サジが異世界から帰った後、残されたオンは、フギリの魔力を喰らったことで人間体を得て、ポタルと共に暮らしていた。
ところがある時、ポタルはなろう系主人公、ジークにうっかり勝ってしまったことで、世界から存在が抹殺される。
オンは、理性と調和の天使、キョウザメエルの協力を得て、兄弟分の使い魔アキ、旧敵のフギリを仲間に加えつつ、ポタルを取り戻すためにジークへと挑む。
しかし、勇者ジークの起動チートスキルがオンを阻む。
オンは、ジークの手によって、最強のスキルを奪われてしまう。だが、それによって、オンは闇堕ちし、ポタルの奪還よりも勇者を殺すことを目的と認識してしまう。
結果として、ジークは追い込まれるが、そのとき、ジークの隠されていたスキルが発動する。
勇者のピンチに自動的かつ無意識下で発動する、受動チートスキル。その力は、物語そのものを、勇者にとって都合良く書き換えてしまうものだった――。
◇◇◇
どうだったかな。
整理整頓清掃、出来たかな?
さて。
そろそろ、本編世界の準備が整ったようだから……。
パは、ここでゲストとはお別れ。
巻き戻されたオン一行が、次に打つ手段とは。
そして、彼らに待ち受ける、旅の終わりは――。
では、引き続き、お楽しみくださいませ。
ってね。




