第8話:宿敵
二〇二〇年・一月。
あれから十五年。
大阪でデポルを狩っていた少年。
彼の名は、久世恒一。
そして私は今。
内閣総理大臣として。
その男から挑戦を受けている。
十五年前。
防犯カメラに映った少年を見た時。
面白いと思った。
何者なのか。
なぜデポルを知っているのか。
どこまで行くのか。
しばらく泳がせるつもりだった。
だが、あまりに目障りになってきた。
山本や三橋を差し向けたが、彼らは返り討ちにあっていた。
彼は。
法曹界へ進み。
政治へ踏み込み。
仲間を増やし。
こちらの想定より遥かに速く、私のいる場所へ近づいてきた。
経歴だけを追えば。
順調に見えるかもしれない。
だが。
実際は違う。
何度もデポルと戦い。
何度も追い詰められ。
仲間を失い。
それでも止まらなかった。
私とは。
まるで違う。
私は魔王覇気を持っていた。
政治家になってからも。
大臣になってからも。
総理になってからも。
大抵のことは。
人を動かせば解決した。
その他にも。
多くの人間が私の周囲へ集まった。
政敵も反対勢力もいたが、敵と呼ぶほどではなかった。
いつの間にか。
勝つことに慣れていた。
だが、久世の名前が資料に出るたび。
少しだけ。
気分が上がった。
私は長い間。
デポルを消す理由をいくつも並べてきた。
妹を怖がらせたから。
人間を傷つけるから。
異世界からこちらへ来た存在だから。
私と同じ時代へ流れ着いた以上。
勇者だった私が後始末をするべきだから。
どれも。
嘘ではない。
だが。
本当に。
私はそれだけのために動いていたのだろうか。
デポルはすでに。
敵ではなかった。
居場所。
数。
繋がり。
その多くを把握している。
必要なら。
集めることもできる。
甘い言葉を使い。
保護を約束し。
国家へ協力させる。
戦力として利用し。
最後には消す。
その計画も。
着実に進んでいた。
私はもう。
デポルを恐れていない。
盤面の上に置かれた。
駒の一つとして見ていた。
だから。
久世が現れてからだった。
久しぶりに。
何が起きるか分からないと思ったのは。
私は。
女神を知っている。
異世界を知っている。
久世恒一。
あの少年も。
何かを経験しているのではないか。
転生。
異世界。
女神。
あるいは。
私とは違う何か。
そう考えれば。
説明できる部分があまりにも多かった。
そして、確かめたい。
彼は、どんな人間なのか。
転生者なのか。
私の魔王覇気が、彼にも通じるのか。
胸の奥が、僅かに高鳴っていた。
ようやく、勝敗の分からない相手に会える。
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