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僕の愛  作者: R
第一章 あと半年

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10/11

新しい毎日

彼氏と会った週末から、何度も考えていた。


学校を辞めて、一緒に暮らす。


彼の言葉を思い出すたびに、その生活を想像してしまう。


課題に追われることもなくなる。


バイトから帰って、疲れたまま机に向かうこともなくなる。


それに、今より彼と一緒にいられる時間が増える。


考えれば考えるほど、魅力的な選択に思えた。


もちろん、学校を辞めることに迷いがないわけじゃない。


美容師になりたいと思って、自分で選んだ進路だった。


それでも、今の生活をこのまま続けていける自信はなかった。


学校も、バイトも、彼との時間も。


どれも大切にしたいと思うほど、全部が中途半端になっていく気がした。


だったら、今の自分にできることを選びたい。


そう思った。


次に彼と会ったとき、私は自分の気持ちを伝えた。


「私、学校辞めようと思う」


彼は少し驚いた顔をしたあと、笑った。


「そっか。じゃあ、一緒に暮らすことも考えようよ」


「……うん」


彼が嬉しそうにしているのを見て、私も嬉しくなった。


一緒に暮らすのは、まだ少し先の話。


でも、これから先のことを彼と考えられるのが嬉しかった。


自分で決めたことだ。


これでいいんだ。


そう思いたかったし、実際、決めた直後は気持ちが軽くなった。


それから私は、学校を辞めるための手続きを進めた。


*


学校に通わなくなってから、毎日の過ごし方が変わった。


朝、課題のことを考えながら慌てて準備する必要はない。


バイトから帰っても、机に向かう必要はない。


以前なら、少しでも時間が空けば課題を進めなきゃと焦っていた。


今は、そんなことを考えなくていい。


それだけで、ずいぶん楽になった気がした。


彼氏と会う時間も増えた。


仕事が休みの日には、彼の家に泊まることもあった。


一緒にご飯を食べたり、買い物に出かけたり、家でのんびり過ごしたり。


特別なことをしなくても、彼と一緒にいられるのが嬉しかった。


「最近、楽しそうじゃん」


彼にそう言われて、私は笑った。


「そうかな?」


「うん。前より余裕ありそう」


確かに、そうかもしれない。


学校に通っていた頃は、彼と会っていても、帰ったら課題をやらなきゃという気持ちがどこかにあった。


今は、目の前の時間を素直に楽しめる。


学校を辞めてよかった。


そのときは、本当にそう思っていた。


*


ある日、彼氏と街を歩いていたときのことだった。


前から、数人の学生らしい人たちが歩いてきた。


楽しそうに話しながら、笑い合っている。


手には教材らしきものを持っていた。


何気なく見ていただけのはずなのに、私はつい、その姿を目で追ってしまった。


自分と同じくらいの年齢だろうか。


今も学校に通って、勉強をしている。


そんな当たり前のことを、なぜか久しぶりに意識した。


「どうしたの?」


隣から彼に声をかけられ、私は我に返った。


「ううん、なんでもない」


そう答えて、再び歩き出す。


彼はそれ以上、何も聞かなかった。


私も、わざわざ話すほどのことじゃないと思った。


ただ、さっきの学生たちの姿が、少しだけ頭に残っていた。


*


その日の夜、彼の家で過ごしていた。


彼はソファに座ってゲームをしていた。


「何してるの?」


「ゲーム。今日、休みだからさ」


「そっか」


私は彼の隣に座った。


いつもの光景だった。


彼がゲームをしている横で、私はスマホを眺める。


たまに話しかけて、返事をして。


そんな時間も嫌いじゃなかった。


彼と一緒にいられる。


それだけで、十分幸せなはずだった。


なのに、ふと昼間に見かけた学生たちのことを思い出した。


楽しそうに話しながら歩いていた姿。


あの子たちは、明日も学校に行くのだろう。


私は、もう行かない。


それだけのことなのに、胸の奥に小さな引っかかりが残った。


何が気になるのか、自分でもよくわからない。


学校を辞めたことを後悔しているわけじゃない。


彼と過ごす時間も、今の生活も、嫌いじゃない。


それなのに。


私はスマホの画面を見つめたまま、しばらく考えていた。


「……私、これからどうするんだろう」


口に出した言葉は、ゲームの音に紛れて消えた。


彼は、まだ画面を見ていた。


私はスマホを置き、彼の隣で小さく息をついた。


今はまだ、何もわからない。


ただ、胸の奥に生まれた小さな引っかかりだけが、消えずに残っていた。

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