1-5-6.1 脇話3・猫
※脇話は、イヴ/レーヴが完全に知らない話です。
※霧島は、「最も危ういキャスト」です。
(EP1 第5章 6話 / 霧島視点です)
「…霧島さん。
…霧島さんの下の名前、
俺に教えてくれませんか。」
誠さんの影が、近くに―――――
………。
「誠さん、モテますよね。」
ガタッ!と、椅子の動く音。
後ずさる誠さん。
「いきなり、何おっしゃってるんですか!
ここは名前を教えてくれるいいシーンのはずです!?」
ああ~、誠さんかわいい~。
この人、こんなにわかりやすくて、
どうやって女性と生活してたんだろ?
あーもう、最高に好き。かわいい。
………さて。
俺の名前、ねえ。
「どうして今更、俺の下の名前が知りたいんです?
離婚の呪縛から完全開放された、
晴れて自由の佐伯さん?」
に~っこり。
俺、自分の見た目が
アクセサリーになるくらいにはイイって
自覚あるからね。
笑顔の練習くらいしてるよ。
絶対逃がさないよ。
こんなに“綺麗”なニャンコちゃん。
俺がここまで、
どんだけ時間かけたと思ってんの。
猫かぶりまくってましたよ?
「う…。
霧島さん、許して…」
誠さんがたじたじになってるのが分かる。
でも影は全然戸惑ってない。
ごめんね誠さん。
なんかズルしてる気分になっちゃう。
あー、顔見たい。
絶対いい表情してる。
ああー、見たい。
でも、湊みたいに
先に逝かれるパターンの想像するとなあ。
たった一人なんてもう要らないかなって
思っちゃうのも事実なんだよなあ。
あ、やば。
思い出しちゃって寂しい。
そういうのは今はいいから。よくないけど。
「……誠さん。」
…完っ全にオトすまで、
もうあと少しだけ
猫かぶったほうがよかったかな?
とは思うけど。
でもさ。
「…だってさ、誠さん……
俺の本音は…
誠さんにずっと筒抜けですから。」
そうなんだよね。
このブース、ほんと凄い。
かなりわかりにくい演出になるように、
めっちゃくちゃ考えて作ってもらった。
自分でも抑えられるものは抑えてる。
けどやっぱり、どうしても出る。
だから――――
誠さんは知ってるはずなんだ。
俺が、
誠さんをめっちゃ気に入ってるって。
だから。
ねえ、誠さん。
「ううう…」
誠さんの心、
言葉で、
俺に見せてよ。お願い。
「…怖いですか?」
誠さんの顔も髪も服装も仕草も表情も、
何もかも見たいよ、俺。
「怖くは…ないです。」
誠さんが顔を上げたのが分かる。
「俺…霧島さんに、
影じゃなくて俺を全部見てほしいから。
だから霧島さんを、名前で呼びたいです。
霧島さんの名前が知りたいです。
教えて、いただけませんか。」
あああああああ~!
キターーーーっ!!
これ!これ!!!
ほんと誠さん、最高にかっこいい。
木々がものすごいざわめきでうるさいくらいだ。
木漏れ日もやばい。鳥うるさい。
誠さんの声が聞こえなくなるだろうが。
……これ、
とろけそうなくらいの笑顔だろうな。俺。
「奏人です。
“奏”でる“人”で、奏人。
誠さん。
俺の名前……呼んで。」
誠さんの影が
ボンッ!って音聞こえそうなくらい揺らいだ。
あーーーーっ、かわいい!
マジかわいい!
「…奏人さん。
奏人さん……。」
誠さんが近づいてくる。
はあ~、思いっきり抱きしめたい。
思いきり抱きしめて、そのまま閉じ込めちゃいたい。
誠さん、最高。
……顔、見たいなあ。




