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クラブ・ジェムノット~エピソード2-少女の歌は花開く~  作者: (さ)くま
脇話

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2-1-6.1 脇話2・屋台骨

※脇話は、イヴ/レーヴが完全に知らない話です。

(EP2 第1章 6話の後 / 大江視点です)

レーヴさんが潰れてしまった。

気持ちよさそうに寝ている。


……伏見を壁にして。


酒で赤く染まった頬、

規則正しい寝息、

時折支え直す伏見。


微笑ましくはある。

そして、それ以上の可能性は想像しない。


一切。


しかし、多少この後のことは

聞いてやるべきだと思った。


「伏見。

 レーヴさんは、起きなきゃお前の家か?」


「遺憾ながら。後見人は辛いです」


表情は全く遺憾ではないとアピールしている。

当然スルーだ。


「俺含め、キャスト皆が

 レーヴさんの歌を気に入ってるようだ」


「ありがたいですね」


ドヤ顔。スルーだ。


「小杉が筆頭で、自分の客に話しまくってる。

 来月あたりから爆発するかもしれない」


レーヴさんのスケジュールが、人気が、

爆発しそうな気配がしている。


こういう空気は初めてじゃないので、

備えあれば憂いなしだろう。


「俺も同じ見解です。

 そう遠くなく、大学のスケジュールも含めて

 俺が管理させてもらうよう打診予定です」


レーヴさんの首が、伏見と反対側に舟をこぐ。

自分の方へそっと引き寄せる伏見。


スルーだ。徹底的に。


「話してた件はどうだ?」


――ジュエルではなく、

スタッフに籍を移したい。


関わると約束した当初からの希望だ。


「俺としても本当にそうしてほしいです。

 けどもう少し待っていただけませんか。

 すみません」


「わかってるよ。無理はしないでくれ」


俺を支配人、伏見をオーナーに。


これが、もともと俺たち二人が目指している形だった。


しかし創業期に、裏方二人分の給与――

つまり経費を抱え込むわけにはいかない。

これも二人で同意していたことだった。


俺が裏方に回れない理由は―――


「やっと、表舞台を“任せられるカード”が来ました。

 ジェムノットは、もっと面白くなります」


任せられるカード…

レーヴさんのことだろう。


こんな若い子に、

ましてやアルバイトに

任せていいものだろうかと一瞬思う。


彼女の歌を聞いていなければ、

絶対にそう思っていた。


翁氏をファーストジェムに迎えて

興奮が冷めやらなかった彼女は、

ジェムノットが

ミュージカル会場にでもなったかのように

歌い続けた。至る所で。


―――大江さん!


俺を見つけて歌いだしたのは、

マイフェアレディの1曲だった。


「踊り明かそう」だったかな。


妻の一番好きな映画の一つだ。

それを、従業員通路で、踊りながら。


やられてしまった。完全に。


オカルトをすべて肯定するつもりはない。

しかし、超自然的なことというのは

存在していると思わざるを得ない時がある。


あれは、そういう類だと、直感的に感じた。


だから、伏見の言っていることがわかる。


レーヴさんの髪をひと掬い、

耳にかけてやっている。


わかっている。スルーだ。


俺は、

伏見が結構気に入っている。

レーヴさんも、気に入っている。


ジュエルからスタッフに移籍できたら、

妻と一緒に、レーブさんのブースに行こう。


きっと、雨と一緒に

踊り明かしてくれるはずだ。


テーブルの面々に目をやれば、

大分、どの連中も出来上がっていた。


「…そろそろお開きにするか」


「はい。

 大江さんすみません、

 会計お願いできますか」


任せろという代わりに、

席を立って会計に向かった。


結局、

お開きになってもレーヴさんは起きなかった。


伏見に背負われて、その影は、

だんだんと、夜の街頭に消えていった。

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