2-1-4.1 脇話1・早合点
※脇話は、イヴ/レーヴが完全に知らない話です。
(EP1 第5章 7話の回想から。EP2 第1章4話の後 / 伏見視点です)
―――遼叔父さん……
―――私……
―――下宿、引き払ってもいいですか……?
―――……絶対、ダメです―――
……やらかした……。
“下宿引き払って、どうするんだ?”
が、安牌だろうが……。
俺は頭を抱えた。
酒に逃げる以外に、もう何も考えられない。
思考回路が止まってしまったときに
気が付くと座ってしまっている店が、俺には何軒かある。
ここもその1軒だ。
キープしているブランデーがある程度に。
しかし今日はそんな甘い酒の気分じゃない。
…今日の俺に、甘さは禁忌に違いない…。
ロックで頼んだウィスキーを煽る。
…イヴが、俺と暮らすことを
考えていると思い込んでしまった。
確かに十中八九そうだろう。
あれが本気だとしても、イタズラだったとしても。
だから絶対に駄目だと、
考えるまでもなく判断した。
その判断はいいんだ、しかしだ。
「“下宿引き払う”以外、イヴは言ってなかった……」
なのに……!
俺の阿呆、間抜け、早合点…。
あれじゃ、
“意識してます”と言っているのと同じだ。
瑞々しい肌。
綺麗なピンク色に上気した頬。
絶妙に当たる呼気。
耳元で囁かれる甘いねだり声。
確かに姪だ。
姪だが……。
……俺だって人間だ……。
いかん、いかんいかんいかんいかん。
叔父と姪は結婚できん。
だからストップだ。
…かわいらしかったなあ……。
いかん!!!!!!!!!!!!!!
カランカラン…
店のドアが開いた音だ。
「伏見さん。ここでしたか」
小杉が来た。
…助かった、今は一人より誰かいてほしい。
「どうした。」
「レーヴちゃんのブースの件っすよ。
伏見さんの思いのたけを聞かせてもらおうと思って」
ヤメテ。
今だけはそういう言い方ヤメテお願い。
「マスター、梅酒いいですか」
小杉は、酒は強くないが
梅酒が好物だと言っていた。
注文を通しながら、俺の隣に座る。
「3つは構想決まってるんだがな」
「3つで満足してくださいよ。
で、その3つはどんなのを考えてるんです?」
小杉大魔神様、恩に着る。
「1つはあれだ、“無限城”だ」
「はっ!?」
「何だお前、あの鬼狩りの漫画知らんのか」
「んなわけないじゃないですか。
いまだに本誌愛読者っす。知ってますって」
ん~!?と小杉がうなっている。
「あれの元ネタになったのがここだ」
スマホで、ある宿のサイトを見せてやる。
「いや確かにかっこいいっすけど。
演出、どうするんすか」
「考えてるわけないだろ。
…これからだ」
動いたらいいなとは思ってる。
デスマーチ確定なので、今は言わないでおく。
「2つ目はこれ。ワイトモ洞窟。」
画像じゃ伝わらん。わかりやすい動画が…。
「え、なんすかこれ。
…動いてません?」
「ああ、発光体…蛍が動いてる。
レーヴが任意に動かせるとかどうだ?」
「ファンネルじゃないすか」
またデスマーチ確定だな。
「3つ目がこれだ。
埼玉、秩父の三十槌、
…氷柱のライトアップ。」
「演出どうするんすか」
肩をすくめて両手を上げる。
「またノープランすか」
「これから考える。
とりあえず3日くれ」
こうしてみると、
ウユニ塩湖は本当に最高のブースだ。
他の連中に持って行かれずに済んだのは、
ただのラッキーなのか、それとも……。
煙草に火をつける。
「え、伏見さん吸ってたんですか」
「たまにだけどな。
俺は愛煙家だよ」
あの時寄せられた左頬から、
どうしてもイヴの体温が離れない。
―――あんたまさか、手出してないわよね―――
だから、
言うなって言ったんだ。
言ってないけど。
煙を吸って、吐き出す。
全身が、ふっ、と
軽くなるような重さを感じた。
「週イチくらいでミーティング入れて進める、
でどうだ」
「了解す」
「レーヴちゃんは“一緒に作る”って確か言ってましたけど。
それどうしますか」
「俺が忙しくて捕まらん、って感じで
しばらくかわそうと思う。
何かやりたそうで小杉の手が空いてたら、
ほどほどに相手してやってもらえるか?」
小杉は、面倒ごとに踏み込まない男だ。
「了解す」
「次までに演出のイメージ練ってみるよ。
わざわざ来させてすまん」
小杉の梅酒はまだ残っている。
「俺が来たくて来たんで。
たまには飲みたくなります、俺も」
「そうか」
煙草の火を消す。
「何か話したいんだろ。
聞かせてくれ」
そこから先は、
レーヴとじいさんのログ考察を、
酒がなくなるまで延々聞かされた。




