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クラブ・ジェムノット~エピソード2-少女の歌は花開く~  作者: (さ)くま
第1章 レーヴ、初仕事へ

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2-1-6 オタクエンジニア・小杉さん

「歌わないの?」「歌いません」事件が

従業員だけでなく、お客様にも広まり始めたようで、


「1曲だけ歌ってもらえる?」


と、私のブースに来て下さる方が現れ始めた。


神さま、仏さま、先輩ジュエル様。

ありがとうございます、ありがとうございます…。


今日も、もうすぐお店はクローズの時間。

そろそろ片づけないとな…。


そんな風に思っていたら、

小杉さんから全体メッセージが入った。


『伏見さんが、みんなで飯行くか?って言ってます。

 ご都合いかがっすか』


今日は夕ご飯を食べそびれていたので、

これは嬉しい。


『レーヴ、行きます』


送信。


何食べるんだろう?楽しみだな。

控室から荷物を取って、事務所に向かった。


「最後はレーヴか。お疲れさん」


もう皆さん揃ってらっしゃるその中心で、

遼叔父さんが声をかけてくれた。


ううっ。新人は最初に行動…なのに…!


「すみません」


「レーヴちゃん大丈夫だよ!

 伏見さんの思い付きだもん。

 おいしいものごちそうしてもらお~♪」


シズクさんがフォローしてくれた。

でも、遼叔父さんからも一言あった。


「シズク…あまり適当なこと言うな。

 レーヴが霧島のブース見に行った件、

 聞いてるからな?」


「えー?ウチ覚えてないよ」


とぼけてるのか、

本当に覚えてないのか、

全くわからない。


す、すごい…。


「まあ、レーヴの歓迎会兼ねて、だ。

 いつものとこ行こう」


そうして、

みんなで店を出て、少し歩いた。



ほどなくして。

大江さんが声をかけてくれた。


「レーヴさん。ここですよ」


少し年季の入った、小さな木製の扉のお店があった。

素敵な外観だなあ。


みんなで入る。私は最後に。


「マスター。

 お勧め、適当に4人前ずつお願いできますか」


繁盛している店内で、

大江さんが仕切ってくれた。


「はい、ありがとうございます。

 ドリンクオーダー、お願いします」


私の隣は、大江さんとシズクさん。


「お酌とか無しね!レーヴちゃん」


「その代わり、

 自分の分は全て自分でお願いします」


流れるようにドリンクが提供される。


「みんな、自分の分来たな?

 それじゃあ、乾杯!」


遼叔父さんが乾杯の音頭をとってくれて、

私は両隣の大江さん・シズクさんと乾杯した。


カンカンッ!


ん~、おいしい。


「レーヴちゃん大学生だよね。

 こういう飲み会とかってよく行くの?」


シズクさんが話しかけてくれた。


「いえ、実は全然…

 は、はじめて、です…。」


「えーーーっ!

 めっちゃピュアじゃん。飲も飲も」


斜め向かいの遼叔父さんの眉間のしわが、

少し深くなった。


「シズク、ほどほどにな。

 たぶん飲み慣れてない」


?


「いいじゃん、伏見さん送ってあげなよ」


「勘弁してくれ…」


遼叔父さん、いやそう。

私は、なんだか少し、フワフワしていた。


みなさんとご一緒に飲んで、食べて。

飲み会ってこんな感じなんだな。

楽しいなあ~。


私は、とても、フワフワしていた。


「おいレーヴ、大丈夫か……」


遼叔父さんがきてくれた。


「はい、だいじょうぶです~」


「これ大丈夫じゃないやつだろ………」


パンッ!

誰かが手を叩いた。小杉さんかな?


「伏見さん!今日こそ俺はみんなに言いますよ」


遼叔父さんがぎょっとする。


「レーヴちゃんが!いかに!マジスゲーかっていうことを!!!」


ん?

私、呼ばれたかな?


「見てくださいこのデータログ。センシング結果がものすげークリアなんですよ。S/N比が異常に高い。えーっと、ノイズがめちゃめちゃ少ない。どういうことかわかります?AIがめちゃくちゃ判定しやすいんですよ。普通だったらこのあたりにもっといっぱいなんか値取ってるもんなんですけど、もう全然ない。身体的なノイズが少ないってことだと思うんす。いや俺も実はこの辺ブラックボックスなんですけど」


いっぱいことばがきこえるなあ。


「レーヴちゃんがブース演出山ほど叩き出せるのはこの“ノイズの少なさ”がたぶん影響してると思うんす。俺らとレーヴちゃんのログで明確に違うのがこのノイズの量なんで。でですよ、じゃあノイズの量で解析結果が変わるんだと仮定したら、俺らのセンシングもノイキャンをうまく設定できれば勝ち確なんじゃないかと思うんすよね!?いやたしかに今ちょっと別件でリソースゼロなんすけど」


なんだか、きもちいいなあ。


「おい、レーヴ」

遼叔父さんが、私の肩をそっと揺らす。


「ゼロなんですけどこれは絶対試したい。絶対。で、うまくいったら俺らもレーヴちゃんくらい演出が出るようになる。“AIが勝手に演出生成してくれるレベル”になる。ちょ、誰か聞いてくれてます?これものすげーんですよ?ほんとにすげーんですって。レーヴちゃんが来なきゃ、こんなことわかんなかったんすから」


ん~、やっぱりよばれてるのかな~。

わかんないなあ、

遼叔父さんの手、きもちいいなあ~。

なんかひんやりしてる。


「駄目だ、酔ってる…ここまで弱いのか。

 こら、もう飲むな」


ほっぺにひんやり。きもちいいなあ。

ん~。


「キャー!レーヴちゃんちょうかわいい。

 伏見さん、写真撮らせて!写真!そのまま!」


「や、やめろシズク!!

 俺を写すな!!」


「で、なにがすごいって、みんな“自分のブースの演出を知ってる状態”で使ってるじゃないですか。レーヴちゃんは演出知らなくても演出出せちゃうんですよ。やばくないですか?俺もうマジで感動した。あんなん魔法っすよ魔法。皆さん見たことありますっけ?あ、フィードバック会の時に見たか。でもあんなもんじゃないんすよ?最近も、ウユニのログになんか意味わかんねえのがあって」



んん~、きもちいい。。。





私は、この後の記憶がありません。


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