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クラブ・ジェムノット~エピソード2-少女の歌は花開く~  作者: (さ)くま
幕間・脇話

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2-3-4.2 脇話5・デスマーチ

※脇話は、イヴ/レーヴが完全に知らない話です。

(EP2 第3章4話の後 / 小杉視点です)



レーヴちゃんは、さっき予定通り早上がりした。

伏見さんの明日の勤務は、日中オフになってる。

この点は、俺は絶対に触れない。

面倒ごとは、絶対に、絶対にごめんだ。


……俺はこれから、死ぬ。

正確にはあと1、2か月くらいで死ぬ。絶対。


事務所に入る。


「お疲れっすー」


一直線に伏見さんに向かう。


「伏見さん、いけますか」


「ああ。行こう」


空いているブース――

先ほどまでレーヴちゃんが使っていた

ブースへ向かう。


「ワイトモ洞窟からいきます」


俺はPCからブース操作した。

ブース内が、ワイトモ洞窟に切り替わった。


洞窟の、独特の湿っぽさ、

ひんやりとした気配。足元をとろりと流れる水。

…この水の表現がさ、演算がさ、ちょっとほんとにさ。

ちょっと聞いてくれる?ちょっとマジでやばいのよ。

俺マジで3日くらい寝ないで作った。超力作。めっちゃ好き。


「発光体が通常状態で微動するところまでは

 何とか実装できてます」


発光体微動もやばいんよ。

自分でも結局何が一番効いてこうなってるか

正直わかんないくらいコード書きまくったわ。

俺、ソースにコメント書き残したかな…

今読めって言われたら、たぶん叫ぶ。


…俺永遠に語れるわ。ストップ俺。


そんなわけでワイトモ洞窟の通常状態の仕上がり、

発光体の動きは、まあ大丈夫だと思いたい。

けど、かなり残念なことに

“大丈夫かどうか”を決めるのは俺じゃない。


…この、姪馬鹿のおっさんだ。

馬に蹴られろ………。

いやだめだ、店が死ぬ。くそっ…。


「流石小杉だ…イメージ通りだ…」


俺は多分ちょっとチョロい。

けど、明らかに少し気分が上がった。


「演出のファンネルは調整中っす。

 AI任せなとこがあるんで、

 レーヴちゃんに使ってもらいながら

 調整するのが現実的かもしれません」


伏見さんは頷く。


「小杉に任せる。

 どうせ、ほかのブースでは

 実装してないようなことしてるんだろ?」


流石伏見さん。

この人盗み見してるんじゃないかってレベルだ。


やっぱ俺は多分ちょっとチョロい。

また気分が上がってる。


「伏見さんで動作テストしますか?

 レーヴちゃんの歌、録音ありますよ」


ズリネ…なんでもない。

俺は面倒ごとには首を突っ込まない。


面倒ごとには首は突っ込まない。

でも、だ。


俺は、俺のおなじみさんに許可をもらって、

「お客さん側のセンシング」をさせてもらってる。

俺のブースで、

許可くれてる人だけブースにいるとき。


レーヴちゃんの歌は、

HF…副交感神経が跳ねあがる。

副交感神経は、

穏やかな幸福感を感じると、そういう感じになるらしい。

“跳ねあがる”までいっちゃうのは、

めっちゃめちゃリラックスしてるってこと。らしい。

俺専門家じゃないから、らしい、しか言いようないけど。


だから、

レーヴちゃんの歌が演出テストの

おかずに最適、は、譲りようがない。


「そのくらいはお前が自分でやってるだろ?

 俺にファンネルが扱えるとも到底思えない」


伏見さん。俺もファンネル動きません。


「オイトモで直してほしいところは

 ないな。次頼めるか」


「っス」


俺はまたPCからブース操作する。


「三十槌(みそつち)…

 氷柱のライトアップまではできてます。

 ライトが動く、色かわる、のも、ざっくり組み込めました」


「!早いな」


「給料アップ期待してます」


試験データ流して、実際に動かして見せる。


「ん、ちょっと雑だな…」


「っスね。もうちょい詰めたかったんですけど、

 オイトモの方の実装で先週はリソース潰れました」


そして今週は今週で、

無限城っすよ、伏見さん…


「三十槌の進捗は、たぶん来週以降です。

 無限城優先しますよね?」


「ああ。すまん…

 ほんとにすまん」


「あんま進捗ないんで、

 三十槌はこんなもんでいっすか」


伏見さんが俺に向かって頷く。


「ああ。無限城、頼む」


「了解す」


PCからブース操作する。

三十槌の氷柱は音もなく溶けて消えて、

無限城が立ち上がる。


階段、座敷、ふすま…

順にカンカンカンカンッという感じに組みあがっていく。


「この場面転換の感じ、

 本番でそのまま使えないか?

 興奮するだろ」


俺もそう思います。


「確認しときます」


組みあがるのが止まった。全部表示できたようだ。

圧巻だな…めっちゃいいわ。

これ俺が作ったんだな。

褒めて。俺のこと褒めて。


「最高だな…」


立ち尽くす伏見さん。

俺今最高に褒めてもらってるわ。

給料上げて(褒めて褒めて)。


「今週、動かすとこ書いてくつもりです。

 モデル作るの大変なんで…

 細部、しっかり確認してもらえますか」


意訳:おっさん今日帰れると思うなよ。


「明日、予定あるんだけどな…」


「俺が毎日予定無いみたいに聞こえるじゃないすか」




俺はたぶん、

あと1、2か月くらいで死ぬ。絶対。


……伏見さんを道連れに。


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