2-1-2 セットリスト~“歌姫”レーヴ
「小杉さん」
相変わらず、何か独り言を言いながら
作業をしている小杉さん。
「ここのブースは、
いつまで使っていいでしょうか?」
「予約確認するっすね」
カチャカチャ、カチャ、カチッ。
小杉さん、キーボード入力、早い…。
「飛び込みさんがなければ、
ラストまで空いてますね」
「ありがとうございます。
セットリストを作るのに、
演出?確認のため、
ちょこちょこ歌ってみてもいいですか?」
「大丈夫っすよ。
俺こそ、ここ座り込んでて平気っすか?」
無言で頷く。
早速歌ってみたい曲があるので、
私は深く息を吸った。
―――ララララ…ラーララ…
私の、大好きな曲。
光が差し込む。
まるで光のカーテンのよう。
…あれ…?…もしかして天気雨かな…?
“恵み”で雨になってるのかもしれない。
「そんな…マジすか、天気雨なんて…」
うふふ。小杉さん、感動してくれてる。
うん、これならどんな人も、いいかな。
ウェルカムソング、これにしよっと。
他は…
どんな時の歌を決めておこうかな…
その時、ブースのドアが少しだけ開いた。
「俺だ。入っていいか?」
遼叔父さんだ。私は小杉さんを見た。
頷き返してくれる小杉さん。
「大丈夫です」
遼叔父さんの顔を見て、
ホッとする。
「どうだ?」
「技術的にはなんも問題なさそうです。
今すぐでもいけますね」
小杉さん、かなり興奮気味に見える。
でも叔父さんも安堵したような表情を浮かべた。
「セットリストを作ろうと思ってるんです。」
「名案だな。
どんな曲にしようとしてる?」
「ウェルカムソングと、
“もう完全にお手上げ”というときでも、
すぐ歌わないといけない時の曲を何曲かは。」
遼叔父さんは満足げに頷いてくれた。
「初めてのジェムが居る時、
ピュアジェムが来た時、
後はそうだな…
女性客が入った時かな」
さすが遼叔父さんだなあ。
「小杉、ほかにセットリストあった方が
無難なケースって思いつくか?」
「うーーーん…そうっすねえ…」
少し、時間かかるかな?
歌ってみたいから、
歌ってみようかな…
―――アー………
しばらく歌うと、
バラの花びらが塩湖の上に舞い散った。
「はいっ!?」
「小杉、なんだこれ…」
二人が、なんだかすごく驚いている。
「バ…バラ…?ですかね…?」
「いや、それはわかる」
「た、たぶん…
AIが“勝手に生成”してます…」
?
気持ちいいし、
このまま歌っていいかな。
「マジで魔法だ…」
小杉さんの目が、
きゅるんきゅるんしてる…。
「俺、今までエンジニアしてて
マジでよかった…」
遼叔父さんが肩をすくめてる。
「で、セットリストに対して
“何か実のある助言”はできそうか?
天才エンジニア小杉様?」
「無理っす…レーヴちゃん女神…」
「俺の姪っ子な」
「わかってますよおおおおお」
歌い終わったのでお辞儀した。
「すみません。
気持ちよくてフルコーラス
しちゃいました」
「謝ることなんかないぞ」
「もう何曲か試したい曲は
あるんですけど…
ちょっと、質問があって」
遼叔父さん、
なんとなくご機嫌な気がする。
「どうした?」
「セットリストがある程度できたら、
フィードバックをいただきたいと思っていて…」
頑張れ、私!
「お忙しいと思うんですが、
お時間がだいじょうぶな先輩ジュエルの
皆さんに、聴いていただくって
どうでしょうか…?」
二人の表情が明るくなる。
「ぜひ!!!!!!」
「いいな。声かけよう」
やった!
「ありがとうございます。
試し終わったら、
リスト、急いでメモしちゃいます」
さあ、どんどん試そう!
「俺は控室に声かけてくる。
小杉、レーヴのサポートよろしく」
「っス~」
そう言って遼叔父さんは、
私に軽く手を振って、
ブースから出て行った。
このブースの仕組み、
大学の講堂とかに入れてくれないかな~。
本当に、歌っていて
とってもいい気分。
こんなに気持ちよくていいのかな。
ふふふふふ…。
遼叔父さんが
開けたままにしていた扉の向こう――
通路から、
聞いたことのある効果音が
聞こえたのは、その時だった。
―――ピロリンっ!ピロリンっ!
…レベルアップ???




