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クラブ・ジェムノット~エピソード2-少女の歌は花開く~  作者: (さ)くま
第2章 浸透

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2-2-5 止まない歌声

今日は……

怒涛の、15連勤、最終日。


やっと…終わる…っ。


全然隙間がなかった。

本当にすごかった。

…まだ、今日が終わってないけど。


ぱんっ。

痛くない程度に

自分のほっぺをたたいて、活を入れた。


――言いにくいなら、

前みたいにLINEで送っていいぞ――



先日、遼叔父さんに話したかったこと。

結局、メッセージにまとめられなかったし、

他の人がいるところで話すことじゃない気がしたから、

時間を取ってもらうことにした。


『すみません。

 うまくメッセージに

 まとまりそうにありません。

 どうしても、ほかの人がいないところで

 話した方がいい気がします。

 少し時間をもらえませんか。』


『休み前日の閉店後、俺の家でいいかな。

 15連勤の、軽い打ち上げのつもりで』


ほとんど即レスだった。

忙しいはずなのに。


胸がじゅわんとした。


…というわけで、つまり。

今日のお仕事のあと、

遼叔父さんに話を聞いてもらえる。


だから今日は絶対、

気持ちいい歌を歌いたい。


世界中整えるくらい。



私のブース―――

ウユニ塩湖が、水で満ち満ちている。


今日初めのお客様たちが入ってきて下さった。


1度来てくれていそうな

方たちばかりの気配がする。


それなら。


私は、ウェルカムソングを

急遽アメイジング・グレイスから変更することにした。


――ヒッヒハッハ ウォッホッホッホ!…――


チャーリーとチョコレート工場、「ウォンカ・ソング」。

とってもシュールなウェルカムソング。


せっかく何度も来てくださるなら、

いろんな私、いろんなあなたに出会ってほしい。


届くといいな。

この歌はすごく短い。

1分もあれば終わってしまう。


だから、すぐに続けて2曲目に。


「いつくしみ深き」――

ほんとに、誰でもご存じの讃美歌。


罪、咎、憂い―――

あなたにとっての重荷を、

すべておいていけますように。


雲一つない晴天の青空に、光が降り注いだ。


ああ…今日もきれい。

ありがとう――――。


お客さんの影が整っていく。

神楽を観ていただいているときくらいの整い方で、

自分でも少しドキドキしてしまう。


素直に、うれしい。

どんな喝采や賞賛より、たぶん、うれしい。


イエスさま。

わたしも、みんなの荷物を“重くないよ”って

背負えるようになるでしょうか。


最後の1音まで、

のびやかに、高らかに、ていねいに。


――ああ、

また1曲、おわってしまう――。


お辞儀をする。

拍手をいただいた。


「今日のウェルカムソングは、

 チャーリーとチョコレート工場の劇中歌でした。

 そのあとは、『いつくしみ深き』…

 イエスさまに祈る讃美歌を歌わせていただきました。」


お客様から手があがる。


「リクエスト、いいですか。」


「はい。もちろんです」


嬉しい。ありがとう―――


今日はもう、

整理番号の音が聞こえない。

予約でいっぱいだからだ。


遼叔父さんの声も聞こえない。


負担、減ってるかな。

減ってるといいな…。


リクエストをつつがなくお伺いできた。

大丈夫、歌える。


今夜は、基本的には3回入れ替え。

頑張るぞ!


さあ、思い切り歌おう―――。




「レーヴちゃん…

 営業中フルで歌い続けて、

 もしかして、まだ歌ってる?」


お店は無事クローズ。

私も無事最後まで歌い切った。


でも、少し…ほんの少しだけ、

テンションが下りてこなくて…。


私、サウンドオブミュージックで

お掃除しております。


…歌がオマケですよ?

お掃除がオマケじゃありませんよ?


「ハウスキーパーにほしいよな」


「大江さんそれ贅沢すぎ。

 ウチ帰るね!おつかれさまでした~。」


シズクさんが帰っていった。

連休楽しんでくださいね!シズクさん。


「さ、そろそろ閉めるぞ。

 全員退店。

 ハウスキーパーさんも

 退店いただけますか?」


「は~い」


大江さんのお声がけで、みんな出ていく。

遼叔父さんが見当たらない。


「伏見は先に出たよ、レーヴさん」


大江さんが、

私にだけ聞こえる程度の声で教えてくれた。


タイミングよく、LINEの着信音が鳴る。


『添付したURLの場所で、

 ケータリング受け取ってる。

 これそうか?』


店から歩いて5分くらい、

駅のすぐ近くあたりにピンが立っていた。


『はい。向かいます』


…サウンドオブミュージックはどうしてるか?


曲が変わって、続いています。


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