第5話:賢者の饒舌、愚者の沈黙
『異世界SNS戦記』主要キャラクター・初期プロフィール
【主人公】青島
Lv.1 / HP: 12 / 攻撃力: 5 / 防御力: 800 / MP: 2 / スキル数: 512
現実の姿: 大学サークル『コネクト』の最底辺。一軍メンバーのパシリとして扱われ、SNSでも日々ブロックされ続けている陰キャ。
特徴: HP12という「アリに噛まれても死ぬ」レベルの脆弱さだが、現実で浴び続けた罵詈雑言やレスバの経験が、異常な防御力800として結実している。
能力: 誰からも相手にされない孤独な魂に、なぜか管理者権限をハックする512個のバグスキルが宿る。
【ライバル】真吾
Lv.1 / HP: 20,000 / 攻撃力: 12,000 / 防御力: 20,000 / MP: 30,000 / スキル数: 0
現実の姿: サークルの代表。フォロワー2万人を誇る圧倒的なインフルエンサー。
特徴: 「人気」がそのまま力になる世界において、最初から魔王クラスのステータスを持つ。
弱点: 誰からも全肯定されて生きてきたため、絡め手や批判への耐性が皆無。スキル数0が彼の傲慢さを象徴している。
紘
Lv.1 / HP: 150 / 攻撃力: 8,000 / 防御力: 2,500 / MP: 150 / スキル数: 4
現実の姿: 普段は愛想の良い小心者だが、酒が入るとネット上で暴言を吐きまくる「レスバ狂戦士」。
特徴: 酔った時の凶暴性が攻撃力8,000という極端な数値に反映されている。酒がない状態ではただの臆病者だが、アルコールを摂取すると「言葉の弾丸」を放つ。
信子
Lv.12 / HP: 3,500 / 攻撃力: 50 / 防御力: 120 / MP: 20 / スキル数: 8
現実の姿: サークルのマドンナ。しかし裏では12個の「裏垢」を使い分け、敵対者を匿名で追い詰める「裏垢の女王」。
特徴: 裏垢の数=Lv.12という執念の深さを持ち、そのレベルに応じた高位の干渉魔法を使いこなす。
不気味な点: 男を騙す「嘘」を得意とし、異世界でも甘い言葉で他人を支配下に置こうとする。
伊織
Lv.1 / HP: 300 / 攻撃力: 150 / 防御力: 5,000 / MP: 10 / スキル数: 1
現実の姿: 知識自慢の早口オタク。他人の投稿に延々と重箱の隅をつつくような解説コメントを入れるのが日課。
特徴: 解説コメントで培った「屁理屈の壁」が防御力5,000という数値に。
役割: 常に真吾の横で状況を解説しているが、その知識欲こそが彼の最大の弱点でもある。
美桜
Lv.1 / HP: 5,000 / 攻撃力: 3,000 / 防御力: 800 / MP: 5,500 / スキル数: 0
現実の姿: 「映え」が全てのキラキラ女子。真吾の隣をキープすることに命を懸けている。
特徴: 典型的な「人気者」としての高いHPとMPを持つヒーラー。
性格: 自分よりステータスが低い者(特に青島)を「汚いもの」として徹底的に見下している。
正志
Lv.2 / HP: 80 / 攻撃力: 200 / 防御力: 10 / MP: 5 / スキル数: 2
現実の姿: 真吾の腰巾着。ガタイが良く、自分より弱い者に対しては徹底的に強気になる典型的な取り巻き。
特徴: ステータスは平凡だが、真吾の威光を自分の力と勘違いしており、青島を最も直接的に痛めつける。
夜の静寂を切り裂くように、真吾のテントが内側から爆ぜた。
現れたのは、顔を真っ赤に染め、瞳にどす黒い殺意を宿した紘だ。
その背後には、実体化した罵詈雑言の弾丸が幾百と浮遊し、周囲の空気を歪ませていた。
「おい、真吾。起きろよ、この無能な操り人形が」
紘の怒号とともに、文字の弾丸が一斉に真吾へ撃ち込まれる。
テントから飛び出してきた真吾は、鎧も着けていない寝巻き姿だった。
慌てて枕元にあった聖剣を抜き放ち、剥き出しの腕を震わせながら攻撃を防ぐ。
ドォン。
凄まじい衝撃波が周囲の樹木をなぎ倒す。
青島がお酌して飲ませた酒によって、紘の攻撃力は推定18000まで跳ね上がっていた。
「紘。お前、頭でもおかしくなったのか。自分が何をしてるか分かってんのかよ」
真吾の怒声に、美桜が震えながらすがりつく。
「真吾。紘くんの様子が変よ。まるで別人みたい」
「うるせえよ、この加工女。お前も真吾の隣で聖女のフリして、裏じゃ他人をゴミ扱いして笑ってただろ。お前らコネクトの連中は、どいつもこいつも中身が腐ってんだよ」
紘の口から放たれるのは、もはや理性のカケラもない、剥き出しの呪詛だった。
青島は正志の姿のまま、焚き火の影でその光景を眺めていた。
その隣には、無機質な駒となった伊織が直立している。
「伊織。状況を説明しろ」
青島の低い命令に、伊織は機械的な速さで口を動かした。
「了解しましたわ、マスター。現在、被検体『紘』の攻撃力は18000。対する被検体『真吾』は12000。純粋な火力では紘が上回っていますわ。ですが、致命的なのは耐久力の差ですわね。真吾のHPは20000、防御力も20000。対して紘はHP150、防御力2500。真吾にとっては1万回の掠り傷でも、紘にとっては、たった1度の接触が死に直結しますわ」
「そうか。面白い。どんなに吠えても、一撃で消える泡みたいな命ってわけだ」
青島が歪んだ笑みを浮かべる中、戦場では紘が連撃を繰り出していた。
「真吾。お前が守りたいのは、自分の人気だけだろ」
紘の放つ言葉の弾丸が、真吾に降り注ぐ。
真吾は寝巻きを血に染めながらも、その圧倒的なHPに物を言わせて強引に距離を詰める。
紘の攻撃は真吾の皮膚を裂くが、その命を削りきるにはあまりに遠い。
逆に、真吾が大きく聖剣を振り上げた。
「紘。お前の言葉は威勢がいいけどさ、ステータスはゴミ以下だな」
「っ、しまっ」
紘が回避しようとしたが、間に合わない。
真吾の無造作な、しかし圧倒的な12000の質量が、防御力2500の紘を正面から粉砕した。
「あ、あ」
紘の体から力が抜け、握りしめていた酒瓶が地面に落ちて割れた。
琥珀色の液体が土に染み込み、彼の最後のアピールは、誰にも届かぬまま消失していった。
「ふん。酒の力を借りたって、結局お前は、ネットの隅っこでコソコソして吠えてるだけの『名無し』なんだよ」
真吾は血のついた聖剣を無造作に振り、冷たく言い放った。
そこには、さっきまで一緒にいた仲間を失った悲しみなど微塵もない。
力と人気だけで全てを支配してきた男の、傲慢な勝利宣言だけがあった。
美桜が恐る恐る真吾に歩み寄る。
「真吾。紘くん、本当に死んじゃったの?」
「ああ。俺を裏切る奴は消えるのがこの世界の決まりだ。さっさと準備しろ、美桜。こんな場所、一刻も早くおさらばするぞ」
真吾が美桜を突き放すように命じる。
青島は、正志の姿のまま隣の伊織に命じた。
「伊織。次の段階へ移る。紘の死体に残った『怨念』を回収する」
「了解しましたわ、マスター」
【スキル:210『ゴミ箱復元』】
伊織の指が動き、紘が消えた場所に漂う黒いモヤを、1つの結晶へと変えていく。
それは、真吾が力だけで切り捨てた、かつての仲間の恨みの塊だ。
青島は、その黒い石を懐に収めた。
「真吾、お前は仲間をゴミみたいに捨てた。だったら、そのゴミがどれだけ熱く燃えるか、たっぷり教えてやるよ」
青島は正志の声で、真吾に向かって叫んだ。
「真吾。大丈夫か。紘のやつ、マジで頭がいかれてやがったな」
真吾は肩の傷を美桜に治療させながら、正志を振り返り、力強く頷いた。
「ああ、正志。お前だけは、俺を裏切るなよ」
「当たり前だろ。お前を置いていくわけないじゃん。最後まで一緒に行こうぜ、真吾」
青島は正志の声で、どこまでも親しげに笑ってみせた。
その言葉の裏にある、底知れない悪意に真吾が気づくことはない。




