第3話:千の舌を持つ女
『異世界SNS戦記』主要キャラクター・初期プロフィール
【主人公】青島
Lv.1 / HP: 12 / 攻撃力: 5 / 防御力: 800 / MP: 2 / スキル数: 512
現実の姿: 大学サークル『コネクト』の最底辺。一軍メンバーのパシリとして扱われ、SNSでも日々ブロックされ続けている陰キャ。
特徴: HP12という「アリに噛まれても死ぬ」レベルの脆弱さだが、現実で浴び続けた罵詈雑言やレスバの経験が、異常な防御力800として結実している。
能力: 誰からも相手にされない孤独な魂に、なぜか管理者権限をハックする512個のバグスキルが宿る。
【ライバル】真吾
Lv.1 / HP: 20,000 / 攻撃力: 12,000 / 防御力: 20,000 / MP: 30,000 / スキル数: 0
現実の姿: サークルの代表。フォロワー2万人を誇る圧倒的なインフルエンサー。
特徴: 「人気」がそのまま力になる世界において、最初から魔王クラスのステータスを持つ。
弱点: 誰からも全肯定されて生きてきたため、絡め手や批判への耐性が皆無。スキル数0が彼の傲慢さを象徴している。
紘
Lv.1 / HP: 150 / 攻撃力: 8,000 / 防御力: 2,500 / MP: 150 / スキル数: 4
現実の姿: 普段は愛想の良い小心者だが、酒が入るとネット上で暴言を吐きまくる「レスバ狂戦士」。
特徴: 酔った時の凶暴性が攻撃力8,000という極端な数値に反映されている。酒がない状態ではただの臆病者だが、アルコールを摂取すると「言葉の弾丸」を放つ。
信子
Lv.12 / HP: 3,500 / 攻撃力: 50 / 防御力: 120 / MP: 20 / スキル数: 8
現実の姿: サークルのマドンナ。しかし裏では12個の「裏垢」を使い分け、敵対者を匿名で追い詰める「裏垢の女王」。
特徴: 裏垢の数=Lv.12という執念の深さを持ち、そのレベルに応じた高位の干渉魔法を使いこなす。
不気味な点: 男を騙す「嘘」を得意とし、異世界でも甘い言葉で他人を支配下に置こうとする。
伊織
Lv.1 / HP: 300 / 攻撃力: 150 / 防御力: 5,000 / MP: 10 / スキル数: 1
現実の姿: 知識自慢の早口オタク。他人の投稿に延々と重箱の隅をつつくような解説コメントを入れるのが日課。
特徴: 解説コメントで培った「屁理屈の壁」が防御力5,000という数値に。
役割: 常に真吾の横で状況を解説しているが、その知識欲こそが彼の最大の弱点でもある。
美桜
Lv.1 / HP: 5,000 / 攻撃力: 3,000 / 防御力: 800 / MP: 5,500 / スキル数: 0
現実の姿: 「映え」が全てのキラキラ女子。真吾の隣をキープすることに命を懸けている。
特徴: 典型的な「人気者」としての高いHPとMPを持つヒーラー。
性格: 自分よりステータスが低い者(特に青島)を「汚いもの」として徹底的に見下している。
正志
Lv.2 / HP: 80 / 攻撃力: 200 / 防御力: 10 / MP: 5 / スキル数: 2
現実の姿: 真吾の腰巾着。ガタイが良く、自分より弱い者に対しては徹底的に強気になる典型的な取り巻き。
特徴: ステータスは平凡だが、真吾の威光を自分の力と勘違いしており、青島を最も直接的に痛めつける。
【スキル:No.005『プロフィール偽装』】
僕は正志の姿になりすまし、真吾たちの横に立っていた。王都の立派な宿舎。この力を使えば、外見もステータスも、消したはずの正志と全く同じに見える。
「おい、正志。いつまで荷物をいじってるんだ。早くしろ、すぐに出発するぞ」
真吾の傲慢な声が響く。真吾たちは僕が青島だとは夢にも思っていない。だが、部屋の端でじっとこちらを見つめていた信子が、不気味に笑った。
「ねえ、真吾くん。ちょっと正志くんと二人で話したいことがあるの。少し席を外してくれる?」
信子は真吾たちを部屋の外へ促した。扉が閉まり、二人きりになった瞬間、彼女の瞳が魔力で怪しく光る。
「いい加減にしたらどう? あなたは誰?」
信子が指を鳴らすと、彼女の瞳に映る僕の姿から偽装の魔力が剥がれ、ガラスのように砕け散った。
「え、青島くん? なんであなたがここにいるのよ。正志くんはどうしたの?」
信子が後ずさりしながら叫ぶ。その手には、いくつもの魔力球が生成されていた。
「あいつなら、もう消したよ。次は、お前の番だ」
「レベル1のゴミが調子に乗らないで!私は、正志くんみたいに、甘くないわよ。それに、この部屋は防音魔法をかけてあるから、叫んでも無駄よ!」
信子の周りに12個の光る球が浮遊する。それは彼女の隠された名前の数。この世界でのレベル12は、熟練の魔導師に匹敵する。
「魔法――深淵からの追放者」
12個の光弾が、避ける隙間もない速さで僕を襲う。轟音と共に爆発が起き、部屋の中に煙が立ち込めた。信子は勝ち誇ったように笑う。しかし、煙の中から僕はゆっくりと歩き出した。
「どうして。直撃したはずよ。HP12の青島くんなら、跡形もなく消えているはずなのに!」
「新しいスキルを使った」
【スキル:No.012『通知オフ設定』】
自分に向けられた殺意ある魔力を、世界の認識から外す力。今の僕にとって、彼女の魔法はただの光の残像と同じだ。
「ふざけないで。これならどう。魔法――沈黙の鎖!」
信子が叫ぶと、床から黒い鎖が這い出し、僕の四肢を縛り上げた。だが、僕は動じることなく、空中に浮かぶ理のウィンドウを指でなぞった。
「信子。お前はいくつもの偽りのアカウントを使い、安全な場所から人を呪ってきた。でも、その魂の根っこは全部つながってるんだよね」
【スキル:No.256『全垢紐付け(アカウント・リンク)』】
信子の周りに浮いていた12個の魔力球が、一本の赤い糸で数珠繋ぎにされた。さらに。
【スキル:No.300『過去ログ発掘』】
信子の頭上に、巨大な断罪の刻印が現れた。そこには、彼女が隠してきた真吾や美桜への醜い本音が、消えない呪言として刻まれていた。
「これを今から、外にいる二人に公開しようか?」
「やめて、お願い! それだけは!」
信子が絶望に顔を青くする。その瞬間、彼女の体に真っ赤な炎が燃え上がった。大炎上。他人にぶつけてきた悪意が、因果応報の業火となって彼女自身を焼き始めたのだ。
世界のシステム音が響く。
『ユーザー:信子の信頼が消失。ペナルティ、レベル剥奪』
信子のレベルが1へと墜落した。
「隠し事が暴かれるのは、怖いよね。さよなら、信子」
【スキル:No.512『永久凍結』】
「あ、ああ」
信子は悲鳴を上げる間もなく、黒い虚無に飲み込まれ、消滅した。
だが、このままではまずい。部屋は爆発で壊れ、焦げ臭い。僕は急いで次のスキルを選択した。
【スキル:No.002『衝突判定無効』】
【スキル:No.004『再読込』】
ノイズが走り、部屋の壁や床の亀裂が、ビデオの巻き戻しのように修復されていく。焦げた匂いも霧散し、空気までもが戦闘前の状態に書き換えられた。
僕は再び偽装の魔力を纏い、正志の姿へと戻った。扉が開き、真吾と美桜が入ってくる。
「信子なら、転移魔法で行ってしまった。魔王軍の痕跡を見つけたとか言って」
「なんだと? 魔王軍だと。チッ、勝手な真似を」
真吾は拳を握り、信子が消えた場所を睨みつけた。部屋に争った形跡がないため、彼は僕の言葉を疑うことなく信じた。
「伊織、すぐに状況を分析しろ。信子が危険だ。急いで出発するぞ!」
「了解しました。魔力残滓から座標を特定します」
僕は真吾の後ろを歩きながら、冷たく微笑んだ。
「大変だね、真吾」




