第2話:臆病者の忠誠
『異世界SNS戦記』主要キャラクター・初期プロフィール
【主人公】青島
Lv.1 / HP: 12 / 攻撃力: 5 / 防御力: 800 / MP: 2 / スキル数: 512
現実の姿: 大学サークル『コネクト』の最底辺。一軍メンバーのパシリとして扱われ、SNSでも日々ブロックされ続けている陰キャ。
特徴: HP12という「アリに噛まれても死ぬ」レベルの脆弱さだが、現実で浴び続けた罵詈雑言やレスバの経験が、異常な防御力800として結実している。
能力: 誰からも相手にされない孤独な魂に、なぜか管理者権限をハックする512個のバグスキルが宿る。
【ライバル】真吾
Lv.1 / HP: 20,000 / 攻撃力: 12,000 / 防御力: 20,000 / MP: 30,000 / スキル数: 0
現実の姿: サークルの代表。フォロワー2万人を誇る圧倒的なインフルエンサー。
特徴: 「人気」がそのまま力になる世界において、最初から魔王クラスのステータスを持つ。
弱点: 誰からも全肯定されて生きてきたため、絡め手や批判への耐性が皆無。スキル数0が彼の傲慢さを象徴している。
紘
Lv.1 / HP: 150 / 攻撃力: 8,000 / 防御力: 2,500 / MP: 150 / スキル数: 4
現実の姿: 普段は愛想の良い小心者だが、酒が入るとネット上で暴言を吐きまくる「レスバ狂戦士」。
特徴: 酔った時の凶暴性が攻撃力8,000という極端な数値に反映されている。酒がない状態ではただの臆病者だが、アルコールを摂取すると「言葉の弾丸」を放つ。
信子
Lv.12 / HP: 3,500 / 攻撃力: 50 / 防御力: 120 / MP: 20 / スキル数: 8
現実の姿: サークルのマドンナ。しかし裏では12個の「裏垢」を使い分け、敵対者を匿名で追い詰める「裏垢の女王」。
特徴: 裏垢の数=Lv.12という執念の深さを持ち、そのレベルに応じた高位の干渉魔法を使いこなす。
不気味な点: 男を騙す「嘘」を得意とし、異世界でも甘い言葉で他人を支配下に置こうとする。
伊織
Lv.1 / HP: 300 / 攻撃力: 150 / 防御力: 5,000 / MP: 10 / スキル数: 1
現実の姿: 知識自慢の早口オタク。他人の投稿に延々と重箱の隅をつつくような解説コメントを入れるのが日課。
特徴: 解説コメントで培った「屁理屈の壁」が防御力5,000という数値に。
役割: 常に真吾の横で状況を解説しているが、その知識欲こそが彼の最大の弱点でもある。
美桜
Lv.1 / HP: 5,000 / 攻撃力: 3,000 / 防御力: 800 / MP: 5,500 / スキル数: 0
現実の姿: 「映え」が全てのキラキラ女子。真吾の隣をキープすることに命を懸けている。
特徴: 典型的な「人気者」としての高いHPとMPを持つヒーラー。
性格: 自分よりステータスが低い者(特に青島)を「汚いもの」として徹底的に見下している。
正志
Lv.2 / HP: 80 / 攻撃力: 200 / 防御力: 10 / MP: 5 / スキル数: 2
現実の姿: 真吾の腰巾着。ガタイが良く、自分より弱い者に対しては徹底的に強気になる典型的な取り巻き。
特徴: ステータスは平凡だが、真吾の威光を自分の力と勘違いしており、青島を最も直接的に痛めつける。
「なっ、なんだよこれ!」
正志の喉から、引きつった叫びが漏れた。
不快な電子ノイズが響き渡る。
僕の泥にまみれた指先が正志の足首に触れた瞬間、そこから真っ黒な模様が、まるで生き物のように這い上がった。
「うわぁ、きもちわりぃ! おい、離せよ汚ねえな!」
正志は苛立ち、僕を泥の奥へ踏み込もうと力を込めた。
だが、その瞬間に感触が消えた。
正志のブーツが、まるで水面に石を投げ込んだ時のように、泥の底まで沈み込んだのだ。
「え? あ、あれ?」
バランスを崩した正志が泥の中に、ダイブする。
一方、僕は、泥という物質を一切無視して、ゆっくりと上体を起こした。
【スキル:No.002『衝突判定無効』】
僕の身体にまとわりついていた重い泥も、正志の汚いブーツも、今の僕にとっては空気と同じだ。
物理的な干渉をすべて拒絶し、僕は汚れ一つない姿で泥の中からヌルリと這い出た。
「う、わ、わああああ! なんだこれ! 何したんだよ青島!」
正志は恐怖に顔を歪ませ、無様に泥の中でもがいている。
蹴られた手の傷も、泥で汚れたはずの服も、システム上の接触を否定したことで何事もなかったかのように修復されている。
「何をしたか、だって。簡単だよ。この世界の管理者に、お前を不適切なコンテンツとして通報したんだ」
僕は無表情に、空中に浮かぶ半透明のウィンドウを指先でなぞった。
【スキル:No.100『ソース表示』】
瞬間、正志の身体から無数のテキストデータが溢れ出し、空中に羅列された。
「へえ。スキルは威圧と逃走だけか。現世でもそうだったよね。自分より弱い奴をビビらせて、強い奴が来たら真っ先に逃げる。お前の人生、たったこれだけのコードで書かれてるんだ。薄っぺらすぎて笑えるよ」
僕は羅列されたテキストの存在許可という項目を、指でスワイプして消去した。
【対象:マサシ / 状態:利用規約違反により凍結処理(4%完了)】
「ひっ、ひいい! 消える、足が消えてる! 助けてくれ、真吾! 美桜!」
正志は泣き叫び、泥を掻き分けながら這いずって逃げようとした。
だが、泥を掴もうとするたびに、あいつの足はノイズとなって崩れ、地面を蹴ることすらできなくなっていく。
「無駄だよ。お前の声、もう誰にも届かない設定にしたから」
【スキル:No.101『沈黙 of 言霊』】
一瞬、正志の口元に赤いバツ印のアイコンが浮かび、すぐに消えた。
次の瞬間、正志がどれだけ口を大きく開けて絶叫しても、そこからは空気の抜ける音すら聞こえなくなった。
叫び声すら世界から拒絶される恐怖。正志の顔が、見たこともない絶望に染まる。
僕は歩み寄り、泥の中でもがく正志の顔のすぐそばまでしゃがみ込んだ。
「ねえ、正志。お前さっき、僕に泥の味を聞いたよね?...味わえよ、美味しいか?僕は怒ってるんだ。勝手に連れてこられて、勝手に最弱にされて、勝手にゴミみたいに捨てられて。そんなの、納得いくわけないだろ!...僕を本当に消したいなら、もっと完璧にやれよ。中途半端に防御力なんて残すから、僕は簡単に死ねなかった!けど、けどさ、死ななかったお陰で、こんなバグ見つけちゃったよ」
正志の身体の半分が、すでに黒いノイズに飲み込まれ、粒子となって霧散していく。
「あ、あ」
声にならない悲鳴を上げる正志。
その瞳に、僕は冷たい事実を突きつけた。
「お前さ、現世でも僕のことパシリにして笑ってたけど、裏では僕にお前の秘密、全部握られてるの気づかなかったの? 裏垢で部長の悪口書いてたの、全部スクショ撮ってあるよ。この世界でも同じだ。お前の卑屈なステータス、全部僕が削除してあげる」
【凍結処理:95%】
「さよなら、正志。次は真吾のところで会おう。あ、お前はもう存在しないから、会えないか」
最後の瞬間、正志の顔が恐怖で引きつったまま四散した。
肉体も、魂も、この世界のどこにも残らない。
湿地には、また雨音だけが戻ってきた。
僕は自分のステータス画面を開いた。
【アオシマ HP12。防御力800。レベル1。そして、スキル数512。】
現実世界で、誰かに拒絶されたブロック数が、そのまま特殊スキルに変換されていた。
「まずは、ひとり」
神殿があるはずの空を見上げた。
そこには、今頃勇者として祝福を受けているであろう、真吾たちの光が見える。
「待ってろよ、真吾。お前の2万のHP、どうやってゼロにしてやろうか...楽しみだ」
読んで頂き、ありがとうございます。新しいシリーズを書き始めました。身内ネタ感があるので、悪しからず。
毎週木曜日更新予定




