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婚約破棄対策室 〜王太子に婚約破棄されましたが、あざと可愛い弟王子に懐かれています!?〜  作者: 空丘ジル


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13/53

始めまして、じゃないんだけど

 陽光が降り注ぐ昼休みの中庭。ベンチに腰を下ろすアイリスとセレナは、穏やかなティータイム……ではなく、意外な話題に花を咲かせていた。


「体術というのは、学べば学ぶほど奥が深くていけませんわ」

「ええ。あの忌々しい元婚約者を投げ飛ばした時の指先の感触、今でも忘れられなくて。もっと大きな殿方を制圧してみたいものですわ」

「ええ、自分の技量を試したいというお気持ち、分かります。大きな男性を倒してみたいものですわ」


 淑やかな微笑みを浮かべながら物騒な望みを口にする二人。そんな彼女たちの視界の端を、一人の男が何度も通り過ぎる。

 二人は自然と彼を目で追った。


 レオはなかなか話しかけるきっかけを作れずにいた。

 もう何周目だろうか。

 いや、まだまだ疲れはしないが、何のためにここに来たかを思えば、情けないことだ。

 そう思って彼女たちの方をちらっと見れば、こちらを凝視しているような気がする。

 いや、気のせいだ、と思いつつ、しばらくしてからまたチラ見すれば、明らかに見ていると思われる。

 そして、アイリスがおもむろにどうぞこちらへと手招いた。


 しっぽブンブン状態の大型犬を思わせる騎士が、いそいそと目の前にやって来ると、セレナは信じられない思いでアイリスを見た。

(ええ、ええ、大男を倒したいとは申しましたが⋯)


 アイリスが突然、口を開いた。

「セレナ様、こちら、レオ様ですわ。私たちを三ヶ月間ずっと見守ってくださっていたのよ」

「えっ?!」

 はあ、と照れながら頭を掻くレオ。


 セレナは居住まいを正して言った。

「それは、本当にありがとうございました。私は多くの方の助けを借りて、不本意な婚約を解消できたのですね。感謝いたします」

 深くお辞儀をした。


 レオは、あわわわ、止めてください、と焦っている。

 フィンは今だとばかり植え込みの陰から飛び出して、わざとらしく言った。

「あれえ、兄さん、こんなところで何してるの?」


(兄さんたらまだあわわわしてるよ。頼りないんだから、もう!)

 仕方なく、自己紹介した。

「初めまして、じゃないんだけど。僕はフィン・グラント。二年生。これの弟です」

 と、兄を指さす。


「あっ、昨日の⋯」

 セレナは、思わず呟いた。


(麦袋状態の僕を見られてた!? 兄さんのバカぁ!)

 フィンはシミュレーションしていた会話が頭から消し飛んだ。


 まだ、あわわわしているレオと、魂が口から出かかっている弟。


 令嬢二人は、いそいそと彼らを介抱するのだった。

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