カルテNO6 本編012 最終話
光の道へ導く役目を終えた千代は、最愛の圭一郎と幸せな時を過ごしていた。
「千代。君を待っている間、ふたりでしたいことを考えていたんだ」
「私と?」
「うん。時間はいくらでもあるからね。千代としたいこと、たくさん考えたんだ。まずは……」
そう言うと、圭一郎はひざまずき、千代の手をとった。
「千代。命や時間を越えたこの世界で、俺は誰よりも千代を愛することを誓うよ。君の名の通り、千代の刻をこの先ふたりで歩んで行こう」
胸がいっぱいになり、千代の気持ちが涙となってあふれ出てくる。
そんな千代をそっと抱きしめる。
「泣かないで……千代」
千代を腕の中に包み込んだ。
「さぁ、これから式を挙げよう」
ふたりだけのささやかな結婚式。
「ふふっ。結婚式の方がお葬式よりあとなんて、きっと私たちだけね。いいえ、あの世でしか一緒になれない人もいるかも知れないわ。私たちのようにね」
魂だけの存在のふたりは、想像しただけで、思い通りの姿になることが出来た。
圭一郎はタキシードを、千代は純白のウェディングドレスを纏い見つめあった。
「白衣以外を着るなんて、いつぶりかしら。圭一郎さん? 私、変じゃない?」
「とっても素敵だよ。千代は白がよく似合うね。君の為にある色みたいだ」
「2人とも白衣の時間が長かったものね」
千代はそう言って圭一郎を見つめた。
「あとは……指輪かな。千代、目を閉じて」
「これでいい?」
圭一郎は千代の左手薬指に、指輪をはめる仕草をして見せた。
「目を開けてごらん」
ゆっくりと瞼をあげると……。
「……素敵」
「うーん。いまいちだったかな?」
「えっ? こんなに輝いてるのに?」
「だって、千代の方が輝いてるから」
頬を赤らめて、俯きながら照れる千代。
「千代。最後にもうひとつ。とっても大切なことを忘れてた。もう一度……目を閉じて」
「ん? あとは何が……」
「しぃぃ……」
目を閉じた千代の唇に、圭一郎の唇が重なり、数十年想い続けた気持ちが、一気に流れ込んでくるような感覚がした。
愛は時間と空間を超越し、ふたりにこの言葉を言わせた──
「千代。愛してる」
「圭一郎さん。愛してる」
十年後も──
百年後も──
例え何度生まれ変わろうとも、このふたりは永遠の愛の下、幸せを手にすることだろう──