第十話
早朝のクラブハウス。まだ朝の5時だ。
毎日、誰よりも早く来ているというミッチーくんと待ち合わせて、トレーニングルームを開けてもらっていた。
ミッチーくんは不思議そうな表情ながらも付き合ってくれていた。
「ありがとうミッチーくん」
「問題ないけど、なにすっの?」
さっきミッチーくんにも伝えた、陽仁くんとの待ち合わせは朝の6時半。まだ一時間半もの猶予がある。
私は手書きのノートを開き、ミッチーくんに見せる。
彼はしばらくみてから「ああ」と気づいた。
「これは……陽仁のトレーニングメニューか」
「一応、私もできるようになっておきたいんだよね」
「いいけども、そりゃまた何で」
「自分が実践できないメニューをやれって言っても、説得力に欠けるっしょ」
「なるほどね~」
納得いったのか、彼はカラッと笑う。
「俺が見るから、どんどんやってみ。上手く体使えてなかったら修正してこう」
「お、ありがとう!ほんとうに助かる」
「さて、それじゃメニューを……」
ミッチーくんは私のノートを再度見て……ふと言葉を止めた。
その表情は怪訝そうで。いったいどうしたというのか。
「どしたの」
「おかしいな。俺は陽仁にはグルートハムベンチはあくまで補助程度に……と伝えてたんだが。よく見たらメインのトレーニングになってんのよ、これ」
「え……渡した時は違ったの?」
「そりゃ当然。昼時の自主練にこんな、負荷のかかるトレーニングは勧めない」
黙って練習メニューを変える……?陽仁くんは今のところ、そんなことをしてしまう人には見えなかったから、内心ちょっと動揺している。
なにか理由あってのことだろうか。
「……後で陽仁くんに意図を聞いてみるよ」
「頼むわ。昔からあいつ、責任ため込んで無理しがちなやつだからな。お灸据えてやってくれよ」
「ええ、私がぁ……?」
「まあまあ、プライベートトレーナーとして存在意義をアピールして、存在を受け入れてもらっていくのもさ、大事じゃない?」
「正論過ぎる」
「ほなよろしく、じゃ、トレーニングメニューやってこか」
「許せねえよ……なんか……」
何も言い返せず、私はミッチーくんが直接手直ししたトレーニングメニューを、彼の補助のもとこなしていった。
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午前6時前。トレーニングルームを後に、私は指定の会議室に入り、陽仁くんを待っていた。
流石に少し眠たい。
集合時間の6時半まで、ちょっと、寝るか……
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あの日。
プリンスリーグEAST第8節。
セイラーズユースとサルヴィーズユースの一戦。
高校生の私もまた、才能ある1人の選手として、勉強のつもりで観戦していた。
そしてフィールドに立つ、陽仁くんと兄さんを見て、この二人の輝かしい活躍を期待せずにはいられなかった。
彼らは、セイラーズユースの至宝と呼ばれていたのだから。




