第一章 7『足虫ハンティング、再び』
「何はともあれ、借金を返すのが先決だって話だ。」
レアは、ぐったりとしている私にそう言った。
仲間募集に失敗してから一時間が経ち、私は完全に気力を失っていた。本当に何もやる気が起きず、指一本動かすのも億劫だった。
「……なあ、いい加減元気出せよ。そんなにしょんぼりしてると、逆に気味が悪いぞ。周りの空気までお前の色に染まりそうだ。」
どうやら私の気分に影響されたらしく、この辺りの雰囲気も陰鬱になっていた。通りかかる人々は無意識に私たちを避けて通っていった。
今日も引き続き足虫の狩猟だ。何せ今のところ、これが唯一慣れている仕事だ。まったく未知のクエストに飛び込んで死ぬよりはマシだ。
ただ、今の私の状態では、普通に歩くことすらままならないだろう。ましてやクエストをこなすなんて無理な話だ。
自分でも理不尽だとは分かっているが、心の中にぽっかりと穴が空いたような感覚があった。まるで何か大切なものを奪われたかのように。
「そんな態度じゃ、足虫に食われて死ぬぞ。だから頼むから元気を出せ……」
レアは諦めたような口調で説得した。
しかし、私は彼の言葉を完全に無視し、黙って彼の後ろについて町の外へと歩いていった。
足音も息遣いも、ほとんど聞こえないほどに軽く、まるで歩く死体のようだった。
やがて、前回足虫に出会った森の近くに到着した。ここはクエストの目的地からそう遠くない場所で、空気にはかすかに草木の香りが残っていた。
しかし、今のところ足虫の気配はない。
「もういい。どうしても元気が出ないなら、ここで死を待てばいい。俺が戻ったら、『食い物に殺されたバカ』って噂を世界中の酒場に流してやるからな。わざわざ石碑も建ててやる。『食い物にやられた無能』って書いてな。」
重苦しい空気に耐えかねて、レアがついにそんな言葉を放った。
その言葉を聞いて、私の身体が微かに震えた。頭の中に無意識に、粗末な石碑が浮かんだ。そこには私の名前と、その下に嘲笑めいた言葉が刻まれている。
レアがこんなことを言うのは、おそらく私を元気づけようとしてのことだ。もちろん、ただ単に私をからかいたいだけかもしれないが。
しかし、その手は確かに効いた。私の感情に微妙な変化が生じた。
その効果を確かめたレアは、畳みかけるように続けた。
「この世界で、こんな低級な生物に殺される奴なんてな。それも食材に殺されるなんて、きっと大評判になるだろうな。何せ、こんな死に方は相当な屈辱だからな。」
私の感情はますます変化し、次第にあの無気力な状態から抜け出し始めていた。
この世界で足虫に殺される確率は、おそらく空から落ちてくる鳥に頭をぶつけられる確率と大して変わらない。専門の狩猟クエストでもない限り、わざわざ彼らに近づく者はいない。二十メートルもある虫と、食べ物のために命を懸ける者はいないからだ。
「……こんな時に限ってこんな死に方する奴なんて――」
レアが続けようとしたその時――
「ああああああ――! くそったれ! 食材だろうが化け物だろうが、まとめて始末してやる! 人間の力ってものを見せてやる――!!」
私の感情が一気に爆発した。
私にとって、仲間募集の失敗なんて、食材に殺されるという死に方に比べたら、全く大したことではなかった。後者の方が、もう一度死にたくなるほど屈辱的だった。
その時、私は血の気に上って頭が真っ白になり、目には足虫への怒りと足虫の肉への欲望だけが宿っていた。
もちろん、本当に殴りたかったのは隣でずっと愚痴っていたあの男だが、自分が彼に敵わないことはよく分かっていたので、その矛先を足虫に向けたのだった。
そう叫んで、私は森の中に飛び込んでいった。
しかし、この安心はほんの数秒しか続かなかった。
森に飛び込んだ次の瞬間――
「わああああ――レアさん――! 助けて――!!」
私が再び逃げ出してきたのを見て、レアは思わず額に手を当て、大きくため息をついた。
「……だから言ったんだ。」
私はこの世で一番の速さで森から飛び出し、その背後には三匹の巨大な足虫が執拗に追いかけてきていた。まるで追跡競争でもしているかのような勢いだった。
おそらく前回残した匂いを嗅ぎつけたか、あるいはうっかり彼らの縄張りに足を踏み入れてしまったのだろう。いずれにせよ、彼らは我先にと追いかけてきた。
さらに厄介なことに、私は今まさにレアのいる方向へ全速力で突っ込んでいた。
正直なところ、彼を巻き込もうという意図は全くなかった。ただ無意識に彼の方へ走っていただけだ。
この突然の展開に、レアも一瞬固まった。
「――!」
彼は慌てて横に飛びのき、私とその後ろの巨体たちをかろうじて避けた。
私は必死に走りながら、叫び続けた。
横に飛んだレアは体勢を崩し、地面に尻もちをついた。
その間も私は必死に走り続けていた。
「わああああ――レアさん、早く倒してよ――!!」
無鉄砲ではあったが、私は昨日レアに教えられた方法を覚えていた。できるだけ円を描くように走り、レアを中心に回り続けた。
「わかった、もう……本当に。」
レアは背中に手を伸ばし、杖を探った。
「……?」
杖に触れた瞬間、彼の表情が固まった。
「レアさん――?! 何してるのよ――!?」
私の催促にも、レアはその場に立ち尽くしていた。
そして彼は、何度も太ももを触っているのが見えた。その顔には、何か不吉なことを知ったかのような表情が浮かんでいた。
その時、私の中にも嫌な予感が走った。
案の定、杖は真ん中から折れていた。
レアの手に残っているのは半分だけの杖。私の心には絶望が広がった。
もう半分は、何の変哲もなく草むらに転がっていた。おそらくさっき避けた時に誤って折ってしまったのだろう。
魔法使いにとって、杖は最も重要な道具であり、魔法を発動するための媒体だ。一般的な魔法使いは杖を失えば、ただの非力な人間と変わらない。
もちろん、レアはただ者ではなかった。
「動くな――!」
彼は折れた杖を投げ捨て、私に向かって走り出した。
こうしてレアは、素手で三匹の足虫を鮮やかに仕留めた。
※ ※ ※
「はあ……はあ……うっ……おえ――」
私は全身に足虫の体液と血液を浴び、その異臭に何度も吐き気を催した。
レアも同じように全身ずぶ濡れだったが、明らかに私より慣れているようで、その表情は比較的落ち着いていた。
足虫を解体し終えたレアが、私のところに歩いてきた。
「よし、今回は忘れ物はないな? 落ち着いたら片付けて戻るぞ。」
前回の教訓を活かし、今回は収集袋と剥ぎ取り用ナイフをきちんと持ってきていた。
もっとも、レアは終始そのナイフを使うことはなかったが。
「あ、はい。」
私はそう返事をし、立ち上がろうとした。
しかし、立ち上がった瞬間、右足首に激しい痛みが走り、私は力が抜けてその場に再び座り込んでしまった。
「痛い痛い痛い……」
私は右足首を押さえ、苦しそうに顔を歪めた。
「またかよ……? 先に言っておくが、サボりなら認めないからな。」
どうやら私がサボっていると思ったのか、レアの口調には不満が満ちていた。
しかし、右足首の痛みは本物で、私を苛んでいた。
「……おい、どうした?」
私が急に苦しそうな表情を浮かべたのを見て、レアも異変に気づいた。彼は早足で近づき、私の隣にしゃがみ込んだ。
あまりの痛みに、私は自分の右足首を押さえながら、額に冷や汗が滲むのを感じていた。レアは無言で私のふくらはぎを支え、もう一方の手で靴のかかとを持ち、慎重にズボンの裾をまくり上げた。
「痛い痛い――!! 何すんのよ!?」
レアは私が痛みで目を閉じている隙に、気づかれないように捻挫した箇所を押した。突然の激痛に私は悲鳴を上げ、危うく彼の顔を蹴りそうになった。
「結構ひどいな……どうやら当分自分で歩けそうにないな。となると、この素材の運搬も難しいな。」
よく見ると、私の足首は暗紫色に変色しており、明らかに捻挫しているのが分かった。
レアは私の足をそっと地面に戻しながらも、口ではさっき手に入れた足虫の素材のことを気にしていた。
「何よ! 私より先に素材を気にするの!?」
「違う。お前が不注意だったのが悪いんだ。自分の状況を把握できなかったお前が悪い。」
実は、ケガには原因があった。
先ほどレアが足虫と戦っている最中、一匹の足虫の死体が私の方に倒れかかってきた。その時私は他の足虫の攻撃を避けるのに必死で、体勢を崩して地面に倒れ、その時に右足が死体の下敷きになってしまったのだ。
足虫の外皮は非常に硬く、その重みで簡単に怪我をする。幸いにも地面は柔らかい土の上だった。もし町の石畳の上だったら、おそらく骨まで折れていただろう。
今、私は地面に座りながら、レアと言い合いをしていた。
「あんたって人は……もう、大嫌いだ――!」
私は地面に座りながら抗議したが、レアは気にした様子もなかった。
「くそっ、誰かの助けがなくたって立ち上がってやる……」
そう言って、私は歯を食いしばって立ち上がろうとした。
しかし、足首の激痛がその試みを無情にも打ち砕き、私は再び地面に崩れ落ちた。
「動くな。無理をすれば、捻挫がもっと悪化する。」
無理に立ち上がろうとして何度も失敗する私を見て、レアの口調は相変わらず厳しかったが、その目にはわずかな心配の色が浮かんでいた。
「私……私……」
「……」
レアはそんな私を見て、仕方なくため息をついた。そして、背を向け、私に背中を見せた。
「足が動かないなら、手くらいは使えるだろ。」
「え……?」
「ぼんやりするな。もしお前に何かあったら、ギルドに説明ができない。」
レアは横を向いて私を促した。
この突然の出来事に、私は戸惑い、その場に固まってしまった。
「で、でも……これらの素材はどうするの……」
「後でギルドに運ばせればいい。どうせ報酬から運搬費を引かれるだけだ。」
そう言われて、私は慎重に彼の背中に這い上がった。レアはしっかりと私の膝裏を支え、立ち上がった。
彼の背中は、安心できるほど広く、しっかりとしていた。
私は無意識に頬が熱くなり、心臓が少し速く打ち始めた。
……結構広いな。
「率直に言わせてもらうと……」
そんな微妙な雰囲気に浸っていると、レアが突然口を開いた。
「何?」
「本当に重いな。」
「…………」
一瞬で照れくさい気持ちは消え去り、代わりに燃え上がるような怒りが沸き起こった。私はレアの肩を掴んでいる手に思い切り力を込めて、その肩をぎゅっと掴んだ。
しかし、彼にとっては、それがまるで猫が爪を立てる程度のものだったらしい。
「下ろして! 自分で歩くから――!」
「動くなよ。落ちても知らないからな。」
私は身体を揺さぶりながら、先ほどのレアの言葉に抗議した。
レアは口では「知らない」と言いながらも、私の膝裏を支える手に、わずかに力を込めているのが分かった。
私たちは全身がべとべとだったが、少なくとも今日は、空っぽで帰ることはなかった。




