第一章 6『仲間募集中』
「……」
「……」
私たちがぼろぼろの状態でギルドの扉をくぐった瞬間、ホールにいる全員の視線が一斉に私たちに注がれた。
続いて、何本もの手がほぼ同時に鼻を覆った。
理由は簡単だ。私たち二人は全身足虫の粘液まみれで、髪はベタベタと頭皮に張り付き、服は半透明のどろどろした液体を滴らせていて、まるで沼から引き上げられたかのような姿だった。さらに言えば、その強烈な生臭さは三テーブル離れていても届くほどだった。
そして、このすべての原因を作ったのは、私だ。逃げる時に引きずっていた死体が激しく揺れたせいで、粘液がレアに飛び散ったのだ。本来なら後ろを走っている人が被害に遭うはずはないが、レアは私の速度に追いつけず、ただ濡れられるままだった。
レアには申し訳ないが、これで少しは心が晴れたのも事実だ。
「レアさん……」
「何だ……」
「ここって……お風呂とかある……?」
「先に納品して、金が入ってからだ……」
私たちの声は極限まで抑えられていた。口を開けたら粘液が入りそうで怖かったからだ。それに、この匂いはあまりにも強烈で、まるで化学兵器の貯蔵庫にでも落ちたかのような気分だった。
私たちが通り過ぎるたびに、周囲の冒険者たちは我先にと避けていった。壁ぎわを歩くようにしていたが、それでも匂いは逃げ場なく広がっていく。鼻を覆って顔をそらす者、酒杯を置いて立ち去る者、カウンターの女性でさえ無意識に半歩後退した。
「……」
依頼を納品し、報酬を受け取った後、私たちはほとんど逃げるようにギルドを飛び出し、入り口の前で立ち止まって大きく深呼吸した。
レアの手には数枚の金貨が握られていたが、その目は虚ろだった。
私も同じだった。
必死に町まで逃げ切った後、追いかけてきた足虫たちはようやく諦めた。しかしその代償として、私たちの体力と気力は完全に底をつき、両足は鉛のように重く、立っているだけで精一杯だった。
一瞬、石畳の上にそのまま寝転んでしまいたい気分になった。
「レアさん……」
「何だ……」
「今……お風呂に行っても……いい……?」
「いいぞ……」
粘液まみれの服を引きずり、必死に稼いだ金貨を握りしめて、私たちは町の銭湯を探す長い旅に出た。
※ ※ ※
「やっぱりさ、仲間を募集した方がいいんじゃない?」
席に座った私は、カリッと揚がった黄金色の足虫肉を頬張りながら、くぐもった声で言った。
私たちは身体を清めてからギルドに戻り、ようやく獲れたての食材を味わうことができた。
依頼の報酬は日雇いよりは確かに多かった。しかし、加工代や洗浄代など諸々差し引かれると、手元に残るのはそれほど多くなく、結局バイトの時と大して変わらなかった。ただ、解体費がかからなかったのは幸いだった。レアが素手で足虫を完璧に解体してしまったため、工房の職人たちも呆れ顔だった。
ギルドへの借金は報酬から直接差し引かれるため、手元に入ってくるのはごく一部だ。
しかし、足虫肉の味は予想外に美味だった。身は締まっていて歯ごたえがあり、天然の甘みが広がる。揚げれば外はカリッと中はジューシーで、ついつい手が伸びる。
何にしても、食べ物は美味しいに越したことはない。
「仲間を募集するなら、実力のある奴を探さないと。それに報酬の分配も考えなきゃいけない。そもそも俺たち、まだ借金があるんだぞ。装備もこんなにしょぼいし、誰が入りたいと思うと思う?」
向かいに座ったレアは腕を組み、冷静に分析する。目の前の足虫肉には一切手をつけず、明らかにこの食べ物には興味がないようだった。
「うーん……そういう状況って、前に読んだ小説にあったな。もしかしたら、すごく可愛くて強いロリの女の子が自らやってくるかもしれないよ?」
「……小説を読む前に、まずは生き残ることを考えた方がいい。」
確かに、小説の内容はせいぜい参考程度にしかならない。具体的なことは、結局自分で経験しなければならないのだ。
でも今はそんなことは気にしていられない。もっと大事なことがあるからだ。
そう思いながら、私はもう一切れの揚げ肉を口に放り込んだ。
「何だよ、一人じゃ絶対に無理だって! 確かにあんたはすごい大魔法使いで、魔力も才能も経験も十分にあるけど、気づいてるだろ? 敵の数が多ければ、あんたも手こずるし、囲まれたら終わりだ。それに、二人だけでずっとクエストをこなすなんて、つまらないじゃん――」
そう言いながら、私はレアの注意が逸れた隙に、素早く彼の皿から一切れの足虫肉を奪い取って口に放り込んだ。
「数が多くても俺には対処法がある。ただ装備が持たないだけだ。それに、クエストがつまらないかどうか……そんな甘い考えは早く捨てた方がいい。いずれ分かるさ、これがどれだけ過酷なことか。あと、俺の分を食べたいなら堂々と取れ。こっそりやる必要はない。お前の身体は確かにエネルギーを必要としているんだから。」
レアはそう言って、自分の皿を私の方に押し出した。
この突然の気遣いに、私は戸惑い、フォークを空中で止めた。
「な、何だよ……心配してくれてるから譲るって言うなら、もう食べないからね!」
「食べないなら捨てるぞ。」
レアが皿を引き戻そうとしたので、私は素早く反対側を押さえた。
「ややや! やっぱり私の身体はこの一皿を必要としてると思う! だから捨てないで! 食べ物を粗末にするのはダメだよ――!」
レアが手を離したので、私は安心して食べ続けた。彼は呆れたように私を見ていたが、私は食べ物に集中していて、彼の口元に一瞬浮かんだ微かな笑みには気づかなかった。
「それで、どうやって仲間を募集するつもりなんだ?」
レアは杖を手に取り、くるくると回しながら、気軽な口調で尋ねた。
「うー――まだ決めてないけど、掲示板に貼るのが一番だよね!」
「飲み込んでから話せ……」
私は口の中の食べ物を必死に飲み込み、咳払いをした。
「もちろん、依頼掲示板に貼るんだよ! そうすればきっと誰かが見てくれるでしょ!」
「人が来るかどうかは別として、問題はどうやって掲示板に貼るかだろ。」
「ふふん……それは後でわかるよ。」
私はフォークを左右に振りながら、勝ち誇ったような様子で言った。
ただ、レアの目が心配そうに私を見つめていることに気づいた。どうやら彼は私にあまり自信がないようだ。
すぐに、皿の上の料理は空っぽになった。私はカウンターの女性から紙と羽根ペンを借り、机の上で書き始めた。
しばらくして、レアは完成したものを見て、複雑な表情を浮かべた。
「これがお前の考えた方法か……?」
机の上には一枚の募集チラシが広げられていた。丁寧な字で募集要項が書かれ、その隣には二枚の似顔絵が描かれている。一枚は私で、もう一枚はレアだ。どうやらレアは似顔絵の部分に不満があるようだった。
「どうどう? 結構上手く描けたと思わない?」
「字はまあまあだが……この絵はな……」
レアはひどく歪んだ似顔絵を見つめ、口元を引きつらせた。
私は全く気にせず、誇らしげな表情を浮かべていた。立ち上がってチラシを掲示板の方へ持っていき、背伸びをして、一番目立つ中央の位置に丁寧に貼り付けた。
この紙は、ついでに何枚かの依頼書を隠してしまった。
「これで待っていれば、仲間が来てくれるよ! その時はみんなで私を守ってね!」
「守るっていうより……お前はチームで一番役に立たないだろう。それに、逃げる時は誰よりも速いしな。」
レアの容赦ないツッコミを私は無視することに決め、満足げに席に戻り、足を組んで仲間が来るのを待った。
「そういえば、募集の条件はどうするんだ?」
「条件? もちろん強い職業に決まってるよ! 大司祭とか、聖騎士とか、狂戦士とか、あんたの大魔法使いに負けないくらいの奴! そうすれば俺たちのチームの強さが証明できるだろ!」
私が堂々と言い放った条件を聞いて、レアはしばらく沈黙し、表情が次第に穏やかになった。
しかし、彼は結局何も言わずに、ただ軽くため息をつくだけだった。
※ ※ ※
翌日、冒険者ギルド――
「……」
空気が張り詰めるほどに気まずい。
「なあ……昨日のことは置いておくとしても、朝からもう三時間も経ってるんだぞ。本当に来るのか?」
レアがついに我慢の限界を迎え、指で机をイライラと叩きながら尋ねた。
「絶対に来るよ! だって小説ではそうなってるんだから! もしかしたらすごい強い人が来るかもしれないよ!」
「お前は一体どの小説からそんな変な常識を仕入れてるんだ? どう見ても来る気配がないだろ。」
昨日チラシを貼ってから十数時間が経った。冒険者はおろか、立ち止まって見る人影すらなかった。仲間募集というより、二人で掲示板を眺めているだけのような状態だった。
さらに、周囲の冒険者たちはほとんどが各自のチームを組んで、今日のクエストに出かけ始めている。残っている者の数はどんどん減っていった。
それでも私は、まだ待つ時間が足りないだけだと思っていた。
「本当に条件を下げた方がいいと思うぞ。上級職業なんて非現実的すぎる。ここは辺境の町だ。王都じゃないんだ。こんな場所で上級職業なんてほとんど見かけないだろ?」
「うーん……でも、あんた自分で言ったじゃん。仲間には一定の実力が必要だって。だから条件は高く設定しなきゃダメでしょ!」
それを聞いて、レアは口を開きかけて、深くため息をついた。
「……大魔法使いは魔法使いの上位職であり、魔法使い系統の最高位だ。千人に一人いるかどうかだ。そもそも、一般人が魔法使いという職業を得ること自体が難しい。だからこの世界の魔法使いは限られている。さらに言えば、俺は現役の神であり、理論上は大魔法使いのレベルをはるかに超えている。」
レアは丁寧に説明した。
その言葉を聞いて、私は少し考え込んだ。
レアが大魔法使いをはるかに超える存在であるのと比べて、職業すら持たない私は、明らかに……余計な存在だった。でも、もうそんなことには慣れていた。
誰が見ても、私はレアに寄生して生きているだけだと思われているだろう。
……そう考えると、確かにその通りかもしれない。
「このままじゃ、募集どころか誰も来ないぞ。それに俺は上級職で、お前は職業すらない。お前は恥ずかしくないのか? 正直言って、こんなところで待ってるより、さっさと借金を返した方がいい。」
「もうちょっと待ってよ! もうちょっとだけ! まだ時間が足りないだけかもしれないよ!」
立ち上がろうとするレアの袖を、私は慌てて掴んだ。
「あ、あの……」
その時、一人の少女がおずおずと声をかけてきた。
年は若く、ゴーグルをかけ、灰色の短い髪が肩に届く程度。標準的な革鎧を身にまとい、迷いのある表情を浮かべていた。
誰かが来たのを見て、私は立ち上がり、目を輝かせて、少女の両手を熱心に握った。
「まさか、応募に来てくれたの――!?」
「ち、違います! 違います!」
なぜか少女は驚いたように慌てて手を振り、否定した。
そして、ポケットからくしゃくしゃに丸まった紙を取り出し、差し出してきた。
「これ……地面に落ちてたんです。誰かが捨てたんだと思います。絵を見たら……もしかしたらあなたたちが落としたのかなって思って、それで、それで届けに来たんです……」
そう言って少女は紙を私の手に押し込み、まるで変な人に絡まれるのを怖がるように、そのまま走り去ってしまった。
私はその紙くずのようなものを持ったまま、その場に立ち尽くし、呆然とした。
「どうした? 何をもらったんだ?」
「わかんない……なんか――」
私は言いながら、手にした紙を広げた。
その内容を見た瞬間、私の声は止まった。
レアは異変に気づき、鋭く指摘した。
「……何だ?」
レアの声には不安が混じっており、何かを察したようだった。
「うん……なんでもない……」
私は硬直したまま背を向けた。私の青ざめた表情を見て、レアは沈黙した。
私はその紙を机の上に置いた。そこに書かれていたのは、まさに昨夜私が丹精込めて描いた募集チラシだった。しかし今はくしゃくしゃに皺だらけで、埃まみれで、端には踏みつけられた跡が付いていた。
明らかに、誰かが剥がして丸めて地面に捨てたものだった。
「……どうやら他の連中の不満を買ってたみたいだな。」
レアの口調には、微妙に楽しそうなニュアンスが混じっていた。
「ああ……ただの紙くずか……誰かに捨てられたものだな……なんだか私のチラシにすごく似てる気がするな……」
机の上の紙を見つめながら、私は異常に平坦な口調でつぶやいた。その声はぞっとするほど冷たかった。
「まあ、でも確かに誰かが来たじゃないか?」
レアは横で余計な一言を添え、口元を歪めて笑いをこらえていた。その口調には明らかなからかいの色が含まれていた。
何なんだよ――これは一体何なんだよ――!
私は心の中で叫びながら、机の上の無惨なチラシをじっと見つめていた。
「だから言っただろ、クエストを受ける方が現実的だって。」
レアはようやく真面目な口調で諭した。
そして私は机の上の紙を一気に掴み、その目には燃え上がるような怒りが宿っていた。
「ふざけるなよ――!?」
私はそのチラシを力いっぱい引き裂いた。紙片がひらひらと舞い散り、まるで嘲笑のようだった。
レアはただ黙って舞い散る紙片を見つめていた。
周囲に残っていた数人の冒険者は一瞬こちらを見たが、すぐに何事もなかったかのように視線を戻した。どうやらこの光景にはもう慣れてしまったようだった。




