第一章 22 『再会……で、結局あなたは誰なの?』
私とレアはある草地にやって来た。レアの脇には、書き終えた四枚の巻物が挟まっている。
周りは木々。頭上は、枝葉に切り刻まれた青空。風が吹くと、草の波が地面を這うように広がっていく——まるで、この場所が呼吸しているみたいに。
その青白い巻物の色を見ていると、青白い……青白い。
「はあ……」
どうもこの七日間は、多くもなく、少なくもない気がする。
まず神様を連れ降ろした。それで自分が役立たずの体質だと知った。それから一日働いて、仲間を募集してみたら……見事に失敗。
その後、いくつかの誤解を解いた。強いて言うなら、三回はあった。
それからあれこれ雑事があって、足虫討伐が二回、ゴブリン退治が一回、オーク討伐が一回。その途中で、あの怪しい男にも出会った。
そうそう、足虫に追いかけられて山の中を逃げ回り、最後は全身ベトベトで町に戻って、風呂の湯が生臭かったこともあった。
どうなってんだよ。もしかして異世界転移したら、自動的にめちゃくちゃな任務を引き受けることになってるのか?
「おい、さっきからずっとため息ばかりついてるじゃねえか。どうしたんだ?」
俺の疲れ切った顔を見て、レアが不思議そうに尋ねた。
「どうしたもこうしたも、もう一週間だよ。最近のことが多すぎて、頭が追いつかない。むしろ毎日働いてた方がマシだ。少なくとも、一度にこんなにたくさんのことを処理しなくて済むから。」
疲れた。本当に疲れた。
この異世界、どうなってるんだ?こういうのって全部、勇者と魔王の話か、人間と神様の話なのか?他のタイプの異世界モノもいくつか読んだけど、これってどう見てもどれかにすごく似てる気がする。
それに、考えてみれば、神界からもう二人も神様が降りてきてるのに、向こうは全然何も反応しないのか?
でも、レアの顔を見る限り、彼はもう戻れなくても構わないと思ってるみたいだ。
「よし、ここでいいや。」
そう言って、俺たちは草地のど真ん中に来た。
オーク討伐の時や、最初に転送された場所とは違う。ここの草地はわりと狭い。つまり、木々に囲まれた小さな空き地ってところだ。
場所を決めて、レアは巻物を地面に置き、その中から一枚を選んで俺に渡した。
「ほら、これで試してみろ。」
巻物を受け取って、まず感じたのは軽さだ。神界のあの巻物よりずっと軽い。
あの巻物をあんなに気軽に使ってしまったことを思うと、なんだか胸が空っぽになる気がした。道理で言えば、あの巻物は俺の命よりも価値があるはずなのに。
「わかった。でも、どこに向けて使えばいいんだ?適当に使ったら危ないだろ?」
「うん……まあな。」
俺の言葉を聞いて、レアはあたりを見回した。
「あそこにしよう。あの山の頂上だ。」
レアが近くの山の頂上を指さした。
そう言われて、俺は巻物を掲げ、あの時の使い方を思い出そうとした。
まず掲げて、開いて、それで……
「《どうでもいいから魔法で、とっととこいつらを消し去って》――――!」
……
予想していた魔法は現れず、周りには俺が唱えた呪文の声だけが響いていた。俺はその場に立ち尽くし、手にはまだ巻物を掲げたまま。
一瞬、気まずい空気が広がった。
レアはその光景を見て、ゆっくりと顔をこっちに向けた。
「……お前、その呪文でやったのか?」
「そうだよ……」
よく覚えている。あの時唱えた呪文はこれだ。あの巻物は感情で動くから、何を唱えても発動するんだろうけど……。
この巻物は何の反応も示さない。魔法の痕跡すら見えない。
「もしかして、ごまかすために俺に偽物をよこしたんじゃないだろうな?」
「そんなわけあるか。俺はこれまで何百枚も巻物を書いてきた。一度も失敗したことはない。」
――そういえば、転送する時もあんたはそんなに自信満々だったよな……。
そう言って、レアは俺から巻物を受け取り、それを遠くの山の頂上に向けた。
「《放て》――!」
レアが二文字の呪文を唱えると、巻物が光り始めた。
二つの魔法陣が巻物の前に現れ、瞬間、風が巻き起こった。数秒後、魔法陣は跡形もなく消え去った。
「……」
これ、本当に偽物なんじゃないか?信じたくはないけど、確かに効果は何も出なかった。ただ、俺より魔法陣が二つ多くて、風が吹いただけじゃないか。
「焦るな。ちょっと待て。」
レアがあごで別の山の頂上を指した。
俺はそっちを向いて五秒……十秒見つめた。やっぱり何も起こらない。
「……もしかして、間違って――」
やっと皮肉を言おうとしたその時、山の頂上の上空に巨大な魔法陣が現れた。山の頂上をすっぽり覆ってしまうほどの大きさだった。
続いて、一条の光が猛然と降り注ぎ、耳をつんざく爆発音が響いた。
もう一度見ると、あの山の頂上は跡形もなく削り取られていた。
「え……?」
その驚くべき威力に、俺は思わず目を見開いた。
そして、レアの手にあった巻物は次第に灰になり、風に吹かれて指の間から散っていった。
「巻物はいい巻物だが、使う人次第だな。」
ああ、すごいな。その嫌味ったらしい言い方はなんなんだよ!
でも、レアの実力は確かに疑いようがないし、俺の役立たず体質も確かに否定できないな……。
「なんだ、不服か?」
「俺?そんなこと―――」
「ならいい。不服でも無理だ。」
くそっ、このクソ神様。いつか絶対に仕返ししてやる!
「ううううう――――!くそっ、もう一枚試させろ!」
そう言って、俺は地面からもう一枚巻物を拾い上げ、掲げた。
「威力は使い手の実力次第かもしれない。それに、使い方はお前の感情にも左右されるかもしれない。」
感情次第か。なんだかありきたりな仕様だな。
俺は巻物をもう一度山の頂上に向け、呪文を唱え始めた。同時に、心の中には負けまいという気持ちを込めて。
「《どうでもいいから魔法で――――!」
正直、ここまで唱えた時点で、自分でもあまり期待してなかった。
「とっととこいつらを消し去って》――――――!!」
呪文を唱え終えても、やっぱり何の魔法も現れなかった。周りにはまた俺の声だけが響く。
なんなんだよ、こんなに熱血に叫んだのに、全然反応しやがらない。まさか巻物に所有者認証機能がついてて、あのクソ神様しか使えないのか?
「……説明してくれよ?」
俺はレアの方を向いた。
「説明することは何もない。お前の実力が足りないか、感情が足りないかのどっちかだ。」
説明した意味ねえな。そんなの自分でもわかってるわ。
まだ疑問に思っていると、巻物が突然眩しい光を放ち始めた。
「おおおおお――――!やっと――――!」
すると、パチパチと火花が出た。
そう、よくある、花火みたいなやつだ。
最初は魔法が発動する前兆かと思った。でも数秒待っても何も起こらなくて、ようやく現実を受け入れた。
「……これだけか?」
その後、花火は……いや、巻物は灰になって風に散った。
風に舞う灰を見ていると、なぜか妙にすっきりした気分になった。
少なくとも、花火は綺麗だった。
「どういうことだ?俺が作った巻物は、魔法使いが使える最高峰の爆裂魔法なはずなのに、なんで花火になったんだ?」
「うるせえ!知るかよ!」
大方俺のせいだろうけど、面子の問題で絶対に認めるわけにはいかない。
レアは地面からもう一枚巻物を拾い上げ、手の中で半回転させてから俺に差し出した。
「どうした?諦めたのか?」
「誰が諦めるかよ!」
正直、諦めたい気持ちはあった。でも、このクソ神様の言葉だけは絶対に否定してやる。
「あと二枚だ。もしそれでも効果が出なかったら、かかった金はお前の食費から引くからな。」
なるほど。五ゴールドの巻物を二枚も使ってしまった。手にした巻物を見ると、心が痛む。
金だ、これみんな金なんだよ―――。
毎日の出費も考えたら、あっという間になくなってしまう。元々貧乏なのに、これでさらに火の車だ。
どうやら異世界に来ても、金を稼ぐことからは逃れられないらしい。
「文句あるか?」
「い、いいえ……」
俺がなかなか返事しないのを見て、レアがゆっくりと尋ねた。
「それならいい。どうせ一食くらい抜いてもお前は死なないからな。」
不満だ。その態度にはすごく不満だ!
でも、仕方なく承知するしかなかった。二枚も効かなかったのは、主に俺のせいでもあるし……。
「よし、一気にいくぞ!」
俺はレアから巻物を受け取り、両手で拳を握って下に振り下ろした。自分に気合を入れるように。
もう一度巻物を掲げて遠くの山の頂上に向け、深呼吸を一つしてから呪文を唱え始めた。
「《この世の万象の光よ――――!」
レアの視線がこちらにチラッと向いた。
「混沌を浄化せし力を宿し、生ある者を癒す能を宿せ――――!我が敵をことごとく滅ぼしたまえ――――!」
自分で考えた呪文を唱えて、さあこれから大暴れしようと思ったその時、横から突然別の声が聞こえてきた。
「おや、ミスター謎の強者。」
「放て――――わああああっ!?!?」
突然の呼びかけに驚いて、巻物の向きが声のした方に向いてしまった。
運のいいことに、この巻物はなんとか魔法陣を召喚することに成功した。一つだけだったし、大きさも小さい。とても魔法使いの最高峰とは言えない。でも、とにかく進歩はあった。
そして、その魔法陣から放たれた光は、まっすぐにその男に向かって飛んでいった。




