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異界の旅~無職の私と降臨した神様の異世界冒険—この世界の神々に虔なる祈りを!  作者: V-CO
第一章 名実ともに異世界の旅

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第一章 21 『謎の人物』

「あと二つかあ……」


 翌日。この世界に来て七日目。一週間。よくここまで生き延びたもんだ。


 昨日のオーク討伐が終わって、里と亜々子も一つ目の任務を終えた。


 ただ、残ってる任務は、簡単すぎて里が相手にしないか、難しすぎてこっちが受けられないか。つまり、今は何をすればいいのかまるでわかんない状態だった。


 でもレアはあんまり影響受けてない。彼には巻物を書くって仕事があるから。で、亜々子はっていうと――


「見て見て~これ、無限に光り続ける『聖光の導き棒』だよ!暗闇でも道を照らせるし、心の進むべき道も教えてくれるんだから!これはこの女神様が自ら作った魔法アイテム!友達価格ってことで、十ゴールドでいいよ。この私の手にある、眩しくて可愛いアイテムをゲットしたい人、いませんか~?」


 亜々子が商品を売り込んでる。でも一目でわかる。自分の能力でチカラを込めただけだって。


「十ゴールドは高すぎるよ……もうちょっと安くならない?」


「ふふん、負けないよ!」


 まさか本当に買う人がいるなんて――。


 亜々子と里が来てから、周りの冒険者はやけに亜々子に興味津々だ。こいつら全員ロリコンか何かか?


 それに、昨夜ギルドに戻ってからいろいろ話したんだけど、亜々子の職業は治療師。俗に言うヒーラーってやつ。彼女が持ってるあの魔法アイテムも、自分のスキルで適当に作ったハッタリにすぎない。


 里の方は戦士。よくある職業だけど、自分の体と同じくらいのサイズの剣を使ってる戦士は初めて見た。あれ、本当にちゃんと使えるのか?


「このパーティー、大丈夫かね……」


 思わず不安になる。


 こっちの様子を眺めて、あっちも見てみる。


「うーん――――」


「……」


 里がじっとレアを睨みつけてる。レアはうつむいて無言で、真剣に魔法の巻物を書いてる。


 正直、レアのストレス耐性には頭が下がる。現代にだって、こんな奴は二人といないだろう。


 これからのことを考えてため息をついてたら――


「こんにちは、美しいお嬢さん。少しだけお時間をいただいてもいいですか?」


 後ろから突然、男の声がした。柔らかくて優しい声。


 慌てて距離を取ってから振り返ると、背の高い男が立ってた。めちゃくちゃ整った顔。青と白のグラデーションの髪は、海みたいに透き通ってる。服装はまるで神官みたい。その男はにこにこしながらこっちを見てる。


「あ、あなたは……?」


「ああ、心配しないで。ただの通りすがりだよ。人を探しててね。」


 嘘くさすぎるだろ――。


 こんなに大勢いるのに、なんでよりによって俺に声かけるんだ?俺が弱そうに見えたから?それとも最初から俺を狙ってた?その可能性もある。


 しかもずっとにこにこしてるだけで、絶対何か企んでる。


「……人を探してる?誰を?」


「ここに『無職の謎の強者』って人がいるって聞いてね。その人に会いたくて。」


 そう聞いて、ようやく合点がいった。


 どうやら俺の噂は、こんな通りすがりの人間にまで届くほどになってしまったらしい。ここ数日、あの男がこの町にいたことは一度もない。つまり他所から来たってことだ。


 でも、その呼び名にちょっと浮かれて、頭に血が上った俺は、うっかり口を滑らせかけた。


「ああ、実は――」


 ――違う。


 こいつは他所から来た奴だ。身分も目的もわからない。もしかしたら悪い奴かもしれない。


 思い直して、俺は出かけた言葉を慌てて飲み込んだ。


「どうしました?もしかして、あなたがその強者ですか?」


「い、いやいや――んなわけないでしょ。どう見たって俺、強者には見えないって。」


 俺の話し方が急にどもり始めたのを見て、男がそう尋ねてきた。


 バレるわけにはいかない。捕まってどっかに連れて行かれて、実験台にされたり、体を調べられたりしたらたまらない。


 そう思うと、冷や汗が出てきたけど、必死に笑顔を作って気づかれないようにした。


「……そうですか。」


 男の目がわずかに開かれ、その視線が俺の全身をゆっくりと這う。何かを品定めするように。


 その時、亜々子の方で何かあったらしく、なぜか俺を見つけてこっちに向かって叫んだ。


「ねえねえ、夏奈!あんたの強者っぽい言葉で宣伝を手伝ってよ!またとないチャンスだよ!」


「があ――――!?」


 その瞬間、マジで亜々子の口を縫い付けたい気分になった。金を稼ぎたいならこっちの状況を見ろっての。それに周りの冒険者に商品を売り込むこと自体、大丈夫なのか?


 亜々子の言葉を聞いて、男は一瞬眉をひそめたけど、すぐに元の笑顔に戻った。


「どうやらあなたが噂の強者ではないようですね。それならこれ以上お邪魔しません。時間を取らせてすみませんでした。」


 そう言って、男はギルドの出口へと歩いていった。


 ただ、去り際に一度だけ振り返って、ギルドの中を見回し、レアに視線を止めて、ほんの少しだけ口元を緩ませた。それからその場を離れた。


 その後ろ姿を見送りながら、震えてた心もようやく落ち着いてきた。


「どうしたの?夏奈。」


 亜々子が俺のそばに来て、心配そうに尋ねた。


 あの男が何者かはわからないけど、なんとなく嫌な予感がする。この先、面倒なことになりそうだ。


「……」


「ねえねえ、夏奈、どうしたの?」


 亜々子が俺の肩にかけた革鎧を引っ張りながら、しつこく聞いてくる。


「なんでもない。さっき誰かにちょっと話しかけられただけ。」


「話しかけられた?さっきの人、知り合いなの?」


「知らない……」


 ここ数日のことを思い出しても、あの男に会った覚えはない。それに、さっきの奴はまるで突然そこに現れたみたいだった。足音もなく。


「まあいいか~それならさ、ちょっと商品の宣伝を手伝ってくれない?」


 そう言って、亜々子は彼女が『聖光の導き棒』と呼んでるものを何本か取り出した。よく見ると、魔法の木でできた簡易的な道具だとわかる。


「もしかして、一個も売れてないの?」


「いや、売れることは売れるんだけどね。ただ、今こそ売るって決心がついたってだけ。」


 つまり、結局誰も買わなかったってことか――。


 亜々子のこんなに明るい態度を見てると、この間仲間を募集した時のことを思い出す。亜々子のメンタルの強さには感心する。こんな状況でも平気なんだから。


 でも、レアに言わせれば「ただの能天気」ってところだろう。


「これ、もう一ゴールドでいいよ。その値段なら魔法のランプが買えるんだからね…」


 十ゴールドで火花棒一本――正直、高すぎる。台灯が買える値段でマッチ棒を買うようなもんだ。


「ノーノーノー。これはね、女神の恵みをたっぷり込めたんだから。無制限に使える超魔法アイテムだよ。十ゴールドでも安いくらい。他の人が売るならもっと高いよ。」


 亜々子は拒否しながら、人差し指を左右に振ってる。


 どこでこんな手法を覚えたのかは知らないけど、「無制限に使える」って言葉に、俺は少し興味を引かれた。


「無制限に……?」


「そうだよ。このアイテムは一度使えばずっとその明るさを保って、永遠に消えないんだ!」


 そう言って、亜々子は一本を取り出した。


 すると、パッと光が灯った。ただ、昼間だから、明るさはあまり目立たない。


「こんな感じ。」


 亜々子の手にあるものを見て、俺はふとあることを思いついた。


 光る。しかも無制限に使える。ってことは、これにちょっと手を加えれば、無限バッテリーの懐中電灯じゃないか?


 直接消すことはできないけど、光源を覆ってしまえば消したのと同じ効果が出せる。


「亜々子、これ、本当に無制限なの?」


「もちろん!この世界に私の信者がいる限り、このアイテムの光は決して消えないんだから!」


 その瞬間、亜々子の手にあるアイテムの光がパッと消えた。


「……」


 突然消えた光を見て、亜々子は言葉を失った。


 これ、本当に頼りになるのかな…多分、材料がもたなかったんだろう。


「え?なんで?」


 亜々子が導き棒を叩くと、返ってくるのは明るくなったり暗くなったりするだけの光だった。


 周りの冒険者たちは顔を見合わせ、そっと離れていった。


 まあいい、好きにやらせとこう。


 俺はため息をついて、レアと里のところへ歩いていった。亜々子は別の方法で商品の売り込みを続けてる。


 そっちに行ってみると、里は机に顎を乗せて、レアを睨んでた。


「……見てると、いつも睨み合ってる気がするなあ。」


 俺はレアの隣に座り、肘をついて顎を支え、深くため息をついた。


「どうした?お前がそんなに悩んでるのは珍しいな。」


「別に。」


 レアの口調はからかうような感じだった。でもさっきのことで頭が混乱してた俺は、適当に返事をした。


「ちっ、どうせあんたの冷たい態度のせいで姉さんが不機嫌になったんだろ。さっさと謝れよ!」


「……はあ。」


 里は何か口実を見つけたように、すぐにレアを責め始めた。


 レアはため息をつき、巻物をきれいにまとめて脇に置いた。どうやら書き終えたらしい。


「よし、試してみるか?」


 レアが机の上の巻物を指さした。


 巻物は、神界でレアがくれたものとはちょっと違ってた。一番わかりやすい違いは見た目だ。


 この巻物は全体が青白色で、サイズも少し違う。前にレアがくれた巻物と比べると、こっちは半腕くらいの長さがある。


 ただ、レアの話によれば、材料が違えば威力も変わるらしい。おそらくそういうことだろう。


 でも、その巻物の色を見てると、さっきのあの男のことを思い出した。


「おい、おい――――」


 レアが一枚の巻物を俺の目の前で振った。俺は慌てて後ろに下がった。


「わあああ、なになに?」


「こっちのセリフだ。またぼーっとしてたぞ。」


 我に返ると、なんだか恥ずかしくなった。深呼吸を一つしてから立ち上がった。


「よし、じゃあ威力を試してみよう。」


 そう言って、俺はレアと一緒に広場で巻物の威力を試すことにした。


「待って、俺も行く!」


「お前はここでおとなしくしてろ。」


 一緒に行こうとした里を、レアは一言で拒否した。


「姉さん~」


「ダメ。」


 諦めきれない里が俺の方を見た。正直、悪いとは思うけど、こう返事するしかなかった。


 そう言われて、里は悔しそうにレアを睨んだ。でもレアは気にしてない様子だった。


 亜々子の方は、まだ自分の商品を売り込んでる。人に囲まれてたから、最初はようやく商品が売れるかと思ったけど、すぐに様子がおかしいと気づいた。


「わああああ――――夏奈――――!戻ってきて助けて————!」


「……」


 たぶん、商品の品質の問題で周りから文句が出てるんだろう。面倒を避けたい俺は、聞こえないふりをすることにした。


「……行くぞ。」


 そう言って、レアは先に行くように手で合図した。


「それと、今回の巻物は前のとはちょっと違う。特に威力がな。今回は戦闘用だから、応急の保身用じゃない。」


「ちょっと違う……?」


 レアの言葉に、俺は興味を持って尋ねた。


 まさか、俺をその場で吹き飛ばす威力だったりしないよな…?


 レアの手に握られた青白色の巻物を見ながら、俺はふと思った。いつか、あの男とまた会う気がする。

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