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異界の旅~無職の私と降臨した神様の異世界冒険—この世界の神々に虔なる祈りを!  作者: V-CO
第一章 名実ともに異世界の旅

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第一章 19『走れ、レア!』

「……」


私たちは顔を見合わせた。その場に奇妙な沈黙が漂った。


そして――


「里ィィィ――——!」


最初に動いたのはレアだった。まるでバネが弾けたように、彼は里の方へ猛然と駆け出した。その速度はあまりに速く、残像が背後に引きずられるほどだった。


里のいる場所に駆け寄ったレアは、無駄な動作を一切省き、腰をかがめて里の足首を掴み、まるで荷物のように引きずりながら、反対方向へ全力で走り出した。里の頭は地面に何度かぶつかり跳ねたが、本人はまったく気づいていなかった。


背後では、数十匹のメスオークが怒涛の勢いで追いかけてきていた。地面が轟音とともに揺れ、彼女たちの速度は驚異的で、一歩ごとに通常の人間の倍の距離を蹴進める。土煙と草の切れ端が舞い上がった。


レアと里と、オークたちの群れとの距離は急速に縮まっていく――


十メートル……五メートル……二メートル……


先頭のメスオークが腕を伸ばし、その荒い指先が里の髪に触れようとしていた。その指先が届くか届かないかの瞬間、レアの脚に一瞬の爆発的な力が宿り、彼の体はまるで矢のように前方へと飛び出した。


一メートル……二メートル……


辛うじて距離は開いたが、それでもわずか二、三メートルの差だ。オークたちがもう少し力を込めれば、レアと里はすぐにその肉色の奔流に飲み込まれてしまうだろう。


「くそくそくそ! この鈍足め、走れえええ――!」


レアの顔にはめったに見せない焦りの表情が浮かんでいた。顔中が必死の形相で、走る姿は異様に大げさで、腕を激しく振り回し、体を地面に這うほど前傾させ、まさに命の限りを尽くして走っていた。


そのあまりの振動で、里がようやく意識を取り戻した。


「……?」


そして、彼は間近に迫ったメスオークの顔と目が合った。その距離は腕一本分もない。ざらついた肌、牙の間から垂れる唾液、赤い目が背筋も凍るような目つきで彼をじっと見つめていた。そして、伸びてきた手が彼の頭を掴もうとしている。


里の脳は一瞬で覚醒し、全身の毛が逆立った。


「うわああああああ――!」


里はこれまでにないほどの悲鳴を上げた。その声はガラスを割らんばかりに鋭かった。


「レアさん! レアさん――! 逃げて! 逃げてえええ――!」

「叫ぶな! 走ってるんだ!」


ついさっきまで対立していた二人は、今や同じ運命を共にする哀れな仲間として、必死に追跡の波から逃げ惑っていた。


その間、私とアヤコは安全な場所からその光景を見守っていた。


そんなに落ち着いていられたのは、アヤコの気づきがあったからだ。


「……なるほどね、そういうことか。」

「でしょでしょ? 私とあなたには全然向かってこないし、完全にあの二人だけが狙われてるよね。」


レアが里を救出に向かった時、アヤコは数秒その場で観察し、結論を出した。メスオークたちの視線は完全にレアと里に釘付けで、私たち女性には一瞥もくれなかった。どうやら彼女たちの標的は雄だけのようだ。


「でも、あの二人、本当に助けなくていいの?」

「何言ってるの? あの二人が捕まったら、汚れた服の下の白くて引き締まった筋肉ボディが見られるかもよ?」


アヤコがそう言うと、口元から怪しげな液体が垂れ、その目はさらに輝きを増した。


一瞬、神界は本当に問題児ばかりなのかと思った……


私はアヤコの様子を見て、心の中で密かに愚痴った。彼女は落ち着いてレアたちの逃げる方向を見つめ、時折変な息遣いを漏らしていた。


時間が経つにつれ、メスオークたちと難兄難弟コンビの距離は再び縮まり始めた。先頭のメスオークの指先が、もう里の髪に届きそうだった。


間近に迫るオークを見て、里の表情は苦悶に満ちていた。


「レアさん――! 異世界サバイバルの知恵を絞ってくれよ――!」

「考えてる!」


里が後ろのレアに向かって叫ぶと、その声には絶望的な切迫感が込められていた。


まさにその瞬間、レアは何かひらめいたようだった。彼は考え込むような表情を浮かべると、里に声をかけた。


「里! これからは動くな! もし動いたら、俺はお前を守れなくなるかもしれない!」

「何でもいい! とにかくやってくれ――!」


レアはそれ以上言葉を発さず、方向を変えてあのクレーター地帯へと向かった。


彼はクレーターの縁を飛び跳ねながら進み、まるで森の中を駆け抜けるリスのように機敏に動いた。その足取りは常に正確で、崩れやすい縁を避けながら、クレーターとクレーターの間の狭い土手を正確に踏みしめていった。


いくつかのメスオークは足場を失い、深い穴に落ちて鈍い音を立てた。また、クレーターの縁に足を取られた者もいて、その巨体が地面に叩きつけられ、土煙が立ち上った。中には巧みに罠をかいくぐって追跡を続ける者もいたが、その数は大幅に減っていた。


長時間にわたる激しい走行で、レアの体力も徐々に消耗し始めていた。ましてや彼は一人の成人男性と大剣を抱えている。呼吸は荒くなり、足取りもさっきほど安定していなかった。


「アヤコ、早く何か考えてよ! このままじゃ本当にやばいよ!」


目の前の光景を見て、私の心臓も喉元まで上がってきた。


「大丈夫だって~ただ見てるだけでいいんだよ~」


しかしアヤコは相変わらず楽観的で、彼女の期待する光景が訪れるのを待ち続けていた。


「もうふざけてる場合じゃないよ、アヤコ! 本当に大変なことになるんだからね!」

「あーもう、わかったわかった。でも、ちゃんとレア先輩に言っといてよ。私にご飯をおごるってね。」


私の心配を察したのか、アヤコは私を連れて森の中へと走り込んだ。


森の中に入ると、アヤコは木から一本の蔦を引きちぎり、両端を木に結びつけた。そして、レアと里の様子が見える場所まで下がり、手の中で魔法を練り始めた。


すぐに彼女の手に眩い光の玉が現れた。アヤコはその光の玉を高く掲げ、手のひらを開いたり閉じたりして、一定のリズムで点滅させ始めた。


「ところで……これ、本当に効くの?」

「もちろん、心配しないで。あの人がここを通る瞬間に、蔦を張ればいいんだから。」


アヤコの口調には自信が満ちていた。


その時、レアが残りのオークたちを引き連れて、猛スピードでこちらの森へと突っ込んできた。


レアが森に足を踏み入れた瞬間、私は力を込めて蔦をピンと張った。それは残った数匹のオークの足首にちょうど引っかかった。巨体の彼女たちは反応する間もなく、次々とつまずき、轟音とともに地面に倒れ込み、土煙と落ち葉が舞い上がった。


「はあ……助かった……」


レアは里を地面に下ろし、自分もその場に崩れ落ちるように座り込んだ。荒い息遣いで、胸が大きく上下していた。


彼がこんなに疲れ果てているのを見るのは初めてだった。前髪は汗で肌に張り付き、首筋には血管が浮き出ていた。


「本来なら見物したかったんだけど、先輩のためだから特別に助けてあげたんだからね! 感謝しなくていいからね!」


アヤコは自分の平らな胸を叩きながら、得意げな表情で言った。


「ああ、じゃあ礼は言わないでおくよ。」


レアは白目を向きながら「やっぱりそう言うと思った」というような口調で答えた。


「間に合ってよかった……大丈夫? レアさん。」


汗で額が光るレアの顔を、私は心配そうに見つめた。顔色が少し青白く、彼が体力の限界を迎えているのを初めて見た。


「大丈夫……少し休めば回復する。」

「そう。」


レアに大きな怪我がないことを確認して、私は里の様子を見ようとした。


「里、お前――」


言いかけて、私は里の様子に視線を奪われた。


里は全身を丸めて、胸を幹にぴったりとくっつけて、まるで壁に貼り付けられた剥製のように、微動だにしなかった。


また気を失っていた。


しかし今回は様子が違った。里の頭の下に、かすかに暗赤色の血が広がっていた。まだ新しいようで、端が完全に乾いていない。


異変に気づいた私は、急いで里のそばに駆け寄り、しゃがみ込んだ。


「里? 大丈夫?」


私はしゃがんで彼の体調を詳しく調べると、後頭部にはっきりとした打撲傷が見つかった――傷は大きくないが、出血量は少なくなかった。さっきレアが急に方向転換した時に、里の頭が木の幹にぶつかったのだろう。


「レアさん、里が……」

「ああ、大丈夫だ。アヤコ、治療してくれ。」


私が焦ってレアに声をかけると、レアは手を振ってアヤコを呼んだ。


「了解! 任せて!」


アヤコはすぐに駆け寄り、里のそばにしゃがむと、彼の頭にそっと手を置いた。掌からは柔らかな緑色の光が溢れ、まるで春の新芽が日差しに透けるかのようだった。


その間、彼女は何やらぶつぶつと呟いていた。


「『癒しの光よ、この者の痛みを和らげたまえ』……って言わなくても、適当に治せるけどね。」


よく聞くと、それらはどうやら中二病っぽい言葉だった。


まもなく、里の頭部の傷は目に見えて治っていった。傷口は塞がり、かさぶたになり、剥がれ落ち、血痕まできれいに消え去った。まるで最初から何もなかったかのようだった。


しかし……里は依然として目を閉じたまま、微動だにしなかった。


「ちょっと待って、ちゃんと治ってるのに……どうして里は目を覚まさないの?」


私は里の体に触れてみると、心拍も呼吸も正常で、体温も問題なかった。ただ、まったく目を覚ます気配がなかった。


アヤコは何か気づいたようで、狡猾な笑みを浮かべた。


「大丈夫だよ、夏奈。任せて。」


そう言ってアヤコはしゃがみ込み、里の耳元に口を近づけて、何か小声でささやいた。


次の瞬間、里は目を覚まし、まるでバネのように跳ね起きると、周囲を見回し、その視線を正確にレアに定めた。


「……何だ?」


レアはその熱い視線に気づいて顔を上げた。疲れの色がまだ完全に消えていない顔で、面倒そうな口調で言った。


「お前、やっぱり姉ちゃんと何かあるんだろ――?!」

「……」


レアの表情が凍りついた。彼は一瞬沈黙し、鋭い視線でアヤコを見た。


しかしアヤコは既に背を向け、口笛を吹きながら、木の葉を観察しているふりをしていた。


レアは里の問いには答えず、無言でため息をつくと、ゆっくりと立ち上がり、さっき倒れたオークたちの方へ歩いていった。任務の後片付けをするためだ。


「おい! 話を聞けよ!」


里はしつこく追いかけるように問い詰めたが、レアはもうそんなことを気にする余裕もなく、振り返りもしなかった。


私は無言でレアの後ろに付き添い、一緒にオークの耳を処理するためにしゃがみ込んだ。手際はまだぎこちないが、数日前よりは確実に慣れてきた。


「ちょっと――姉ちゃんまでそんな風に!」


里は信じられないといった表情で私を見た。まるで二重の裏切りにあったかのように。


アヤコは里のそばに歩み寄り、意味ありげに彼の肩を軽く叩いた。


「はあ……やっぱり考えすぎた男は冷たくされる運命だね。哀れだよ、本当に。」


そう言ってアヤコも前に進んだが、彼女は私とレアが作業しているのをただ見ているだけで、手伝おうとはしなかった。


里は一人、その場に取り残されて、ただ立ち尽くしていた。


——————


町へ戻る道すがら、里の視線は何度もレアと私の間を行き来していた。その目は探偵のように鋭く、私たちを観察していた。


あまりに明らかなので、彼の前にいてもその視線を感じるほどだった。


「うーん……」


里はレアを見、私を見て、どうしても引っかかるものを感じていた。


「姉ちゃん、正直に言って――」

「ない。」


里の問いを遮るように、私は振り返らずに即答した。


「――まだ言ってないだろ!」


「何を聞かれても、答えはないよ。」


私の断固たる返答に、里は悔しそうに視線をレアに向けた。しかしレアは彼を一瞥もせず、ただ無表情で前を向いて歩き続けていた。


「……おい。」

「……」

「おい――!」

「……うるさい。」


里のしつこい呼びかけに、レアはついに眉をひそめ、苛立たしげな口調で言った。


そのやりとりを見て、アヤコはこっそりと手で口を覆って笑っていた。里に睨まれると、すぐに無垢な表情を装い、大きな目をパチパチさせた。


「私は何も言ってませんよ~」


そんな無垢な表情を見せられて、里の心はますます混乱し、眉間に深い皺が刻まれた。


「諦めなよ、少年。君の姉ちゃんはもう先輩のものなんだ。もう邪魔しちゃダメだよ~」

「――!」


アヤコが里の肩を叩きながら、意味深に言った。


その言葉を聞いて、里は突然立ち止まり、顔を真っ赤にして、まるで興奮したかのように首に青筋を浮かべた。


「な、な、何だって――!」

「だから、もう邪魔しちゃ――」

「その前だ!」


アヤコは顔をそらして、大きな口笛を吹きながら、何も聞こえないふりをした。


レアは依然として目を閉じ、両手をポケットに入れたまま無表情で歩き続けていた。どうやらもう説明する気を完全に失ったようだった。


こうして、私たちは町へと向かって歩き続けた。


異世界での生活六日目は、混乱と大騒ぎの中で幕を閉じた。

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