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猫可愛がりしていたら、喰われました。  作者: 不知火螢


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  兄上からの連絡は、やっぱり早かった。普通に、会います宣言をした翌日の夜に「明日の夜に時間を作る」と連絡がきた。

 早い。早いです、兄上。いや、早ければ明後日、と言っていたので、予定通りと言えば予定通りなのですが。

 なお、今日は宿屋のご夫婦に改めて、一角兎の群れは討伐したのでもういない。ただ、草原は殆ど食べられ尽くしているので、元に戻るには少し時間がかかるだろう、という話をした。

 正直、元々私には関りのなかった話なので、これ以上のことはできることはない。

 ――まぁ、領主であるイルヴィッツ伯爵が頼りにならないのは事実なので、これからどうするんだろう、という心配は残るけど。

 ファルクが何か手を回すのかな。昨日、少し話した限りでは、ちょっと突拍子もないけれど、姉様とも話が通じるレベルで頭はいいようだったので、なにかしら手段を考えてくれると思いたい。


 元々、この宿ではゆっくりしようと一週間宿泊の予定であったが、もはやあれこれバレている今、実家やタウンハウスを避ける理由はない。今回の騒動で、兄上は絶対に母上と父上に連絡しているだろうから。もし、父上、あるいは母上からミハエル殿下と会うのはダメと言われていたら、兄上とてそう連絡してくるはずだ。

 家を出たのは私の意思だし、私が妊娠、出産したことを母上が父上にも内緒にしてくれてたのも、できれば内緒にしていてほしい、という私の意思を尊重してくれていたからだ。


 タウンハウスで殿下と会うなら、もう、そのまま明日はタウンハウスに泊まった方がいいかな。まだ三泊しかしてないけど。

 ……三泊しかしてないの!? あれ!? なんか、ここ数日が濃密すぎてだいぶ日が経過してる気がするけど、まだそんなものなの!?


 衝撃の事実に驚いていると、今日はなんだか一日中ご機嫌だったリートとリンデが、二人そろって私を見上げていた。ちょうど、自我が芽生え始めているらしく、手を伸ばせば小さい手でつかんできたり、音を鳴らしたらそちらを向いたりと、色々な反応を見せてきている。

 これから、もっと成長していくだろうから、そうなる前にミハエル殿下に子供たちを会わせるのは、いいことだったのかもしれない。


 どうせ明日タウンハウスに行くのだったら、もういっそこのこと、タウンハウスでゴロゴロダラダラ過ごすことにしようかな。宿泊代は前金で払ってしまっているけれど、別にそこまで痛い出費ではないし。

 うん、そうしよう。たまには貴族らしく過ごすのもいいだろう。貴族令嬢らしい過ごし方知らないけど。



 そして翌朝。そのまま宿を出て移動することを宿屋のご夫婦に伝えた。ものすごく感謝されて、返金までされそうだったけれど、そこはそのまま受け取ってもらった。ただでさえ、これから大変そうなので。


 そうしてタウンハウスに転移して門をくぐると、あっという間に使用人たちが出迎えに出てきた。ほとんど知らない使用人だけど、何人かは見知った顔もいるので、領地の本邸から何人か来ているのかもしれない。というか、本邸での私の専属侍女がいたので間違いない。

 兄上から話を聞いてたからか、ほとんど使ったことのなかった私の部屋も整えられているうえ、私のベッドの横にはベビーベッドまで用意されていた。

 挨拶にやってきたこの邸の家令に子供たちのことは口外禁止を言いつけると、「承知いたしました」とだけ返ってきたので、これも事前に兄上から言われていたのかもしれない。

 というか、このタウンハウスにいるわけのない乳母が二人用意されていたので、間違いなく、兄上が連れてきたのだろう。

 たった一日で、ここまで用意周到に準備する兄上に、驚くを通り越して感心してしまう。

 兄上、すごー。

 

 乳母にリートとリンデを任せると、私はあっと言う間に捕まって。


「お子様がいらっしゃって、ご自身の手入れを怠ってしまうのは致し方ありませんが! 今は私共がおりますので、怠慢は許しませんよ!!」

「はい……」

「殿下とお会いする前までに少しでもお嬢様の美しさを取り戻さなければ……!」


 なにかの使命にかられたらしい侍女たちに、全身をピッカピカに磨かれた。平民同然の生活をしていたので、当然ながら髪や肌の手入れなどはほとんどしていなかったので、本気に怒られたし、本気で嘆かれた。

 そんなに酷かったかなー、と思うが、私は知っている。今この状態で、何か反論でもしようものなら、それが数倍になって返ってくるのだ。おとなしくしているに限る。


 そうして全身を隈なく洗われ、全身を香油で磨き、傷み具合を誤魔化せない髪の毛はいい感じに結んで髪飾りでごまかされた。

 ドレスに関しては、さすがに胸元が以前と比べてサイズが変わっているため、急遽、既製品を買ってきて、私が磨かれている間に微調整を終わらせたらしい。私をちらっとだけ見て、調整できるうちの使用人、優秀すぎない?

 明日にでもデザイナーを呼んで新しく作るんだ、と意気込んでいる侍女たちの言葉は右から左に聞き流し、私はどんどん陽が沈んでいく窓の外を見て、緊張状態にあった。

 心臓はバクバクと激しく音を立てているし、意図的に深く息を吸わないと、うまく呼吸ができない。

 殿下に会ったら、まず、何を言えばいいんだろう。黙っていなくなってごめんなさい? 勝手に子供を産んでごめんなさい? 

 どれだけ頭の中で考えても、殿下の返事が想像できず、どんどん思考が悪い方向に流れていく。


 途中、家令から兄上と殿下はもう少し遅くなりそうだ、という連絡が入り、先に夕食を摂ることになったのだが、正直、緊張しすぎて何を食べたのかよく覚えていない。

 せっかく、私が一年ぶりに姿を見せたということで料理長が気合いを入れて準備してくれていたはずなのに。申し訳ない。いやでも、さすがに無理じゃない?


 そうして、どんどん頭の半ば真っ白になって、でも子供たちにはおっぱいをあげねばならぬ。

 自室でもはや無意識で授乳させていると、だんだん外が騒がしくなっているのに気が付いた。


「ラヴィ!」


 バン! とドアが開いて反射でそちらを見た次の瞬間には、


「ごめん!!」


 と扉が閉められた。

ようやっと(一瞬だけ)再会。

三連休に予定があるため、土曜日はお休みします。間に合えば日曜日、無理そうなら月曜日の更新になります。

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