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猫可愛がりしていたら、喰われました。  作者: 不知火螢


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 兄上と姉様にひとまず後始末を全部任せて、私は一足先に町へと戻ってきた。宿屋の奥さんに二人を預かってもらっていたお礼を言いつつ、一角兎は片付いたと軽く報告する。

 え!? って顔されたけど、詳しく説明する前に、ちょうどお腹を空かせた二人が泣き始めたので、私がリンデを、奥さんがリートを抱っこして部屋に戻る。

 リートをベッドに寝かせた奥さんは、こちらを気にしつつも戻っていく。

 すみません、あとでちゃんと話します! まぁ、もう群れはいないよ! しか言えることないんだけど。


 ベッドボードに寄りかかって二人におっぱいを上げながら、ぼんやりと今後のことを考える。

 本当に、急激に状況が変化した。姉様に会いに行き、兄上に子供のことがすでにバレていて、二人にリートとリンデのことがバレ。

 ミハエル殿下にもおそらく子供のことはバレているだろうから、このまま子供を連れたまま姿をくらまし続ける意味は……おそらくない。


 んくっ、んくっ、と懸命に母乳を飲んで、生きようとしているかわいい子供たち。飲むのに合わせて白銀の髪は揺れ、閉じられた瞼の奥には紫水晶。触れると柔らかな髪の毛は、やっぱり殿下にそっくりで。今はまだしも、これから成長するにつれて、誰が見ても王族の血を引いているのがよくわかるようになるだろう。

 ふと、リンデが飲むのをやめて、私を見上げた。その色が毎日見ていた愛おしい色と同じで、愛おしさと共に懐かしさがこみあげてくる。

 私と同じ色だったならばまだしも、この色ならばこのまま隠しておく方がよくないだろう。


「問題は、私の覚悟ができてないことなんだよなぁ」


 いろんなことを抜きにして、会いたいか会いたくないか、だけならば、もちろん会いたい。会いたいし、話がしたいし、一緒にいたい。

 一年前までは、毎日一緒にいたのだ。それも、十年も。

 婚約していたといっても男女の仲ではなかったが、それでも、仲が良かったのは間違いない。

 殿下にとって私は姉みたいなものだろうし、気安い幼馴染。

 うっかり酒精に負けて暴走してしまった私が全て悪いのだが、あの暴走があったから、リートとリンデを授かったのは間違いなくて。もはやこの子たちがいないことなんて考えられないので、なかったことにはしたくないし、できない。


 でも、話はそれほど単純ではない。ミハエル殿下の未来どころか安全にも関わってくるし、更に言えば王位継承権にも関わってくる。


 こうして殿下への感情を自覚したうえで殿下に会って、拒否されたらどうしようとか。

 正式に婚約解消されたらどうしようとか。

 子供を取り上げられたらどうしようとか。

 殿下の性格上、そんなことはしないだろうと、分かっていても、ついつい悪いことまで考えてしまう。


「……二人も、お父さんとは会いたいよね」


 今のうちに父親に会うのと、成長してから会うのでは、リートとリンデへの影響も変わってくる。

 もはや、会うのが怖いから、会いたくない、なんて我儘は言えない。


「うん、二人の為にも、殿下と会おう」


 今の私から連絡するのは難しいけれど、兄上に話をすれば時間と場所を作ってくれるだろう。兄上は殿下の最側近という立場にいる。そもそも、兄上の方から一度話をしろ、と言ってきたのだから、私が覚悟を決めたのなら、積極的に時間を作ってくれるだろう。

 兄上はずっと王都のタウンハウスで生活しているから、そこでなら多分、あまり周囲を気にせずに会うことができるとは思う。


「あ、どうしよう、もうちょっとドキドキしてきた」


 はやい、さすがに緊張するのが早いよ、私の心臓。


 早速、兄上に連絡しようかな、と思ったけれど、そもそも通信具を持っているのは姉様だった。それに、後始末の全てを押し付けてきてしまった。二人のことだから、完璧な後始末をつけてから、説明をしに来てくれると思うけど。


 兄上が今回の話をどう決着をつけるのか分からない。けれど、兄上のことだから、間違いなく殿下にとって有利になるように動くと思う。

 ファルクの話的に、どう考えてもハイヒラー侯爵が隠蔽するように圧力をかけていたようだし、今回、本当に何事もなかったのは、たまたま首を突っ込んだのが私だったからだ。

 これに関しては、客観的に考えても純然たる事実である。

 たまたま私が首を突っ込んだから、オルトマン家が動いた。

 オルトマンが動いたから、イルヴィッツ伯爵も門前払いにすることができなかった。

 兄上の強固な結界があったから、町への被害をゼロに抑えることができた。

 あとよくわからないけど、私がいたからファルクがやたらと協力的だったのは間違いない。まぁ、ファルクに関してはあの群れを殲滅するだけならあまり関係ないけど。


 姉様の推測ならば、本当にあと数ヶ月で万単位の群れになっていただろうし、すでに食糧が無くてこの町にまで被害が出始めていた。あの群れが一斉に町に来ていたかもしれないことを考えると、隠蔽していたイルヴィッツ伯爵と、その指示をしていたと思われるハイヒラー侯爵は、責任を追及されるのは間違いないだろう。

 何せ、群れの証拠、もとい群れそのもの、あそこに凍らせてきたからね。あれを兄上たちがどう処理するのかは分からないけれど。


 兄上たちに早く来てほしいような、まだ来てほしくないような。そんなソワソワした気持ちを落ち着けつつ、二人からの連絡を待つことにした。

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