第100話:レティ様の気持ち
「あははっ!」
セベル領主邸のサロン。
今回は家主が一緒にいるから、門前じゃなくて屋内直行だ。
空間移動した俺にお姫様抱っこされながら、ドレス姿の美女が楽しそうに笑う。
「彼等の間抜けな顔を見たかい? あははは! あ~スッキリした!」
レティ様は、まるで悪戯が大成功した子供みたいに笑っている。
いつもの凛々しい姿とは違って、無邪気で可愛く見えた。
「あとで怒られたりしませんか?」
俺は抱えていたレティ様を、そっとソファの上に降ろす。
王太子殿下の言葉に逆らってパーティを抜け出してきちゃったけど、大丈夫かな?
「殿下はそんな心の狭い人ではないよ。ふふっ、想定外の脱出方法に驚いてはいたようだけどね」
まだクスクス笑いながら、レティ様は言う。
退路を塞いだつもりが全然塞げてなかった殿下たちは、ポカーンと口を開けて驚いていた。
俺が空間移動能力を持ってるなんて彼等は知らなかったから、あの高さから飛び降りるとは思わないだろうね。
「こんなに爽快な気分は初めてだよ。ありがとうクルス!」
「?!」
テンションが上がりまくったレティ様が、また抱きついてくる。
スリスリされるのかと思ったら、頬にキス……?!
驚いて固まる俺をそのままに、レティ様はニコニコしながらほっぺチューを繰り返した。
◇◆◇◆◇
「殿下はね、私を結婚させたいんだよ」
やがて落ち着いたレティ様は、王太子殿下の意図について教えてくれた。
侍女たちが運んできてくれたお茶とお菓子を頂きつつ、話を聞く。
バルコニーでのやりとりから、なんとなくそんな感じはしたな。
「貴族の娘で成人しても婚約者がいないのは私だけだから、殿下は心配しているみたいだが正直面倒くさい」
そう言うと、レティ様は大きな溜息をついた。
貴族は成人前に婚約者が決まるらしい。
レティ様の美貌なら令息たちがほっとかないだろうけれど、本人にその気がなかったら婚約も結婚も無理だね。
「私は社交界でニコニコ愛想を振りまくよりも、剣を取って魔獣を狩っている方がいいんだ。跡継ぎの問題はあるが、それは騎士たちの中から資質のある者を指名して後継者にすればいいと思っている」
真剣に語るレティ様。
その気持ち、王太子殿下が理解してくれたらいいのに。
「俺は辺境を護るレティ様はカッコイイって思いますよ」
「そ、そうか? あ、ありがとう」
励ましの気持ちも込めて言ったら、レティ様は少し照れていた。
今日のレティ様は、感情が表に出やすくなっているみたいだ。
「でも、怪我には気を付けて下さいね。世界樹の実、先に食べておけば持続回復が1日続くので使って下さい」
「それは本来は勇者が邪神との決戦に使うような品なんだがねぇ。こんな籠盛りで渡されるものじゃない筈だよ」
俺は新たに採集しておいた世界樹の実を、サロンのテーブル上に置く。
籠に山盛りの赤い実を眺めて、レティ様が苦笑した。
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