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猫神様のペット可物件【完結・猫画像あり】  作者: BIRD


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第99話:異世界貴族の社交界

 9月(セプタンブラ)第二(ドゥジエム)土曜日(サムディ)

 レティ様の依頼で、俺は初めてエスト国の王宮を訪れた。


「ではレティ様、移動先を思い浮かべて下さい」

「うむ……こうか?」

「ては異空間トンネルを開きます」


 1人を運ぶのは簡単だ。

 その人に行き先を思い浮かべてもらえばいい。

 レティ様が思い浮かべたのは、王城の正門前だった。

 門の前に立つ2人の兵士たちは、異空間トンネルが開いて先に出てきた俺を珍しそうに眺める。

 続いて、俺が差し伸べた手をとり優雅な仕草で出てくる美女に見惚れたように顔を赤らめた。

 しかし、数秒後に誰か気付いたようにハッとした。


「「お久しぶりです、ロティエル様」」


 サッと一礼して、兵士たちは声を揃えて言う。

 兵士たちの反応を見て、俺はレティ様が以前に言っていたことを思い出した。


 ――私のドレス姿なんて滅多に見られないぞ――


 つまり、この兵士たちはドレスを着たレティ様を見慣れておらず、誰なのか一瞬分からなかったんだろう。

 ついでに、レティ様の凛々しさを備えた美貌にノックアウトされたのかもしれない。

 パートナー役の俺の腕に手を添えて歩くレティ様を、また惚けた顔になる兵士たちが見送った。


「いらっしゃいませ。招待状を確認させて頂きます」


 城内に入ると、侍女たちが来客たちの招待状を確認して広間へと誘導していた。

 彼女らもレティ様を見て一瞬惚けていたけど、ハッと我に返ってすぐ仕事を再開していた。

 レティ様は華やかに整った顔立ちやスタイルの良さに加えて、姿勢が良いから人を惹きつけるんだろうね。


 そうそう、抱きつかれるようになって気付いたんだけど、レティ様のお胸は控えめではなかったよ。

 怒られそうだから、本人には絶対言わないけど。

 軍服姿のときは、胸に布を巻きつけて膨らみを隠してるんだ。

 ドレス姿のときはそれをはずしているので、ふっくら膨らんだ女性らしい胸元になっている。


「……なんてお美しい方……」

「どちらの御令嬢かしら?」


 パーティ会場に入ると、そんな囁きがあちこちから漏れる。

 招待客たちはみんな、レティ様を知らないみたいだった。


「クルス、私の恋人っぽくふるまってくれ。虫よけになるから」

「虫よけ……?」


 レティ様に耳元で囁かれて、俺はキョトンとする。

 虫よけって一体何だろう?

 その意味を理解する前に、主催者の王太子殿下が会場に入ってきて来客が静まり返った。


「みんなよく来てくれたね。顔見知り同士もそうでない者同士も、この場で交流を深めてほしい。では、パーティを始めよう」


 王太子殿下が開始を宣言すると、脇に控えていた楽師たちが音楽を奏で始める。

 セベル領主邸で練習した曲だ。


「クルス、リードを頼む。踊り終えたらすぐ帰るよ」

「はい」


 レティ様は、既に帰ることしか考えてないみたいだ。

 俺は練習した通りにレティ様の手を引いて進み、音楽に合わせて踊り始める。

 そこでようやく「虫よけ」の意味が分かった。

 音楽の開始と同時に近付いて来ていた貴族の令息たちが、悔しそうにこちらを見る。

 多分レティ様を誘おうとしていたんだろうね。

 レティ様はそれが面倒くさいから、俺とダンスを踊れるようにしたんだ。


 男性も女性も、周囲の視線がレティ様に集まる。

 レティ様はその視線を無視して、俺だけを見つめて微笑む。

 自然と、男どものジェラシーが俺に向かうけど、俺もそれをスルーしてレティ様だけを見つめて微笑み返す。

 恋人に見えたかどうかは分からないけど、親しそうには見えたかな?


 1曲踊り終えると、レティ様は俺の手を引っ張って足早にお城のバルコニーへ向かう。

 次のダンス相手になろうと近付きかける令息たちを華麗に回避して、レティ様はバルコニー手前のテーブルからシャンパングラスを取り、1つを俺に差し出した。


「お疲れ様。これを飲んだら帰ろう」

「おいおい、もう帰る気かい?」


 2人しかいない筈のバルコニーで、帰る宣言するレティ様を引き留める声がする。

 レティ様と俺がハッと振り向いた先に、シャンパングラスを手にした王太子殿下がいた。


「せっかく着飾って来たのに、1曲踊ってサヨナラなんて勿体ないじゃないか。君と踊りたがっている令息たちのお相手してあげなよ」


 そう言ってウインクする王太子殿下の後ろで、ソワソワしながらレティ様を見ているのは令息たち。

 レティ様が帰れないようにするつもりか、令息たちはバルコニーから室内への出入り口を塞ぐように横並びになった。


「お断りします。殿下の招待だから仕方なく来ましたが、知らない令息たちの相手をする義理はありません」


 心底嫌そうな顔で言った後、レティ様は俺だけに聞こえる小声で指示を出す。

 俺はその内容に一瞬驚いたけど、状況的に仕方ないなと頷くことで同意した。


「そちらの彼は何者だい? 親しそうに見えるけれど、婚約者ではないのだろう?」

「彼は私の命の恩人です。最も頼りになる殿方ですよ」


 殿下の問いに微笑んで答えるレティ様。

 俺はレティ様をヒョイッと抱き上げると、お姫様抱っこ状態で高く跳躍してバルコニーの手すりを飛び越えた。


「なっ?!」

「では、ごきげんよう」


 ギョッとする殿下と令息たちに、レティ様が勝ち誇ったような笑みを浮かべて言う。

 俺は空中で異空間トンネルを開き、レティ様を抱いて王城から離脱した。


挿絵(By みてみん)

挿絵代わりの画像は作者の保護猫たちです。

閲覧やイイネで入る収益は、保護猫たちのために使います。

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