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猫神様のペット可物件【完結・猫画像あり】  作者: BIRD


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第98話:レティ様の頼み

 夜行性の獣人たちが、普段なら微睡んでいる昼下がり。

 感謝祭のため、王都サントルは昼間も賑わっている。

 渡し屋の仕事を終え、屋台で買った焼き団子を頬張っていた俺は、上着の内ポケットに入れている通信用魔導具の振動に気付いた。


(ん? レティ様?)


 懐中時計の形に似た魔導具を内ポケットから取り出し、パカッと蓋を開けて裏面を見ると、メッセージが表示された。


 送信者:レティシア・ロティエル・ドゥ・セベル

 メッセージ:祭りの途中すまない、手が空いていたら私の執務室まで来てほしい


 レティ様には、渡し屋契約時に連絡先を伝えてある。

 定期的な幌馬車隊の搬送以外に、臨時の依頼もするという話は聞いていた。


(こんな時間にどうしたんだろう? 何か臨時の買い物依頼かな?)


 この世界の人々は、夕方から起き出して日没前くらいから仕事を始めることが多い。

 今は太陽がまだ高い位置にあるから、普段は多くの人々がまだ眠っているような時間帯だ。

 レティ様が普段からこの時間起きているのかどうかは知らないけど、随分早起きだな。

 セベル鮮魚店の依頼を終えて手が空いている俺は、セベル領主邸の前に空間移動した。



 ◇◆◇◆◇



 セベル領主邸の門前。

 門番たちは俺の顔を見ただけで、恭しく一礼して門を開けてくれる。

 前庭を通り抜けて邸内に続く扉をノックすると、すぐに侍女が出てきて執務室まで案内してくれた。


「クルス様がいらっしゃいました」

「入ってくれ」


 侍女は執務室の扉を開けた後、俺が中に入ると去っていった。

 執務室に入ると、軍服姿のレティ様が椅子から立ち上がり、笑顔で歩み寄ってくる。


「クルス、すぐに来てくれて嬉しいよ」


 レティ様は俺の近くまでくると、微笑んで抱きついてくる。

 前回と同じく、抱擁からの頬スリスリが始まった。


(……え~と……これ毎回恒例になるのか?)


 2回目なので少し慣れた俺は、苦笑しつつそんなことを思う。

 帰ったらまたルカに上書きされそうだ。


「レティ様、随分早起きですね」

「寝てないんだよ。少々悩ましいことがあってね。……はぁ……クルスに触れていると気持ちが落ち着くよ」


 抱きついたまま、俺の肩に顎を乗せてレティ様が溜息をつく。

 どうやら、俺はレティ様の精神安定剤代わりになっているようだ。


「眠れないくらいの悩みって何ですか? 俺で良ければ、話くらいは聞きますよ」

「王太子殿下が主催する交流パーティーに呼び出されたんだ……あぁ面倒くさい……」


 貴族同士の付き合いを面倒がるレティ様が、断れない相手から招待されたらしい。

 本気で嫌がるレティ様は、また大きな溜息をついた。


「クルス、頼みがある。王宮までの送迎と、私のパートナー役をしてくれないか?」

「王宮ってサントルの貴族街の向こうに建っている大きなお城ですよね? 平民の俺が中に入れるんですか?」

「君は私の契約渡し屋だから、同行が許されるよ。ついでに私をエスコートしていても、誰も不審には思わない」

「それなら、引き受けますよ」

「ありがとう。1秒でも早く帰りたいから、ササッと行ってササッと退散しよう」


 レティ様、どんだけ嫌なんだ……。

 ちょっと顔出してすぐ帰るのなら、パートナーが俺でも問題無いだろう。


「それで、いつ行くんですか?」

9月(セプタンブラ)第二(ドゥジエム)土曜日(サムディ)、10日後の日没頃だよ。クルスの服はこちらで用意してここで着替えてもらうから、今と同じくらいの時間にここへ来てくれ」

「分かりました」

「じゃあ、今日は採寸を済ませよう」


 レティ様が執務机に置いてあるベルを手に取り、チリンと鳴らす。

 既に扉の向こうで待機していたのか、2人の侍女が採寸用メジャーを手に入ってきた。


「失礼します」


 そう言ってすぐ採寸を始める侍女たちは、てきぱきと手際が良くてアッという間に作業を終えた。

 あまりにも早いので、俺は目が点状態でされるがままになっていたよ。


「それと、1曲くらいは踊ることになるから、レッスンもしておこう」

「足、踏んだらスイマセン」

「大丈夫、私は避けるのが得意だ」


 続いて、ダンスレッスン。

 言葉通り、レティ様は足を踏まれそうになるとさり気なく避けている。

 この世界のダンスはそれほど複雑ではなかった。

 音楽に合わせて数種類の動作を繰り返すだけなので、割と覚えやすい。


「クルスは筋がいいな。何か身体を動かすスポーツでもしているのかい?」

「はい、拳法を少し習っています」

「おぉ、今度見せてくれ」


 ダンスの話から、何故か拳法を披露することになったり。

 その後1時間ほどダンスレッスンを受けたら、足を踏まない程度には踊れるようになった。




 ◇◆◇◆◇



 神の島、自宅の居間。

 俺は今日も猫たちに嗅がれまくる。

 仔猫たちは、服や髪に残る祭りの屋台の匂いを嗅いでいる。


 スンスン、フンフン……


 ルカは、違う匂いチェック中。


「みっ、みみっ」

「うん、同じ人。ダンスレッスンを受けたから匂いが付いているんだよ」


 説明する俺に、グイッと擦り寄るルカ。

 今回も念入りに匂いの上書きをしている。

 ルカがレティ様の匂いに慣れる日はくるのだろうか?


挿絵(By みてみん)

挿絵代わりの画像は作者の保護猫たちです。

閲覧やイイネで入る収益は、保護猫たちのために使います。

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