銀色の約束
# another side
黒い濁流に飲まれ身体は、いや意識も漂っていた
うつろう視界の中には真っ暗な闇
そしてその闇の中に淡く浮かぶかつての光景
ほんのひと時、けれどあのひと時が
唯一の「幸せ」と呼べる時間
しかし、それは奪われた
奪われた奪われた奪われた
その幸せを与えてくれたその人に
胸に込み上げる激情にむせ返るように彼女は醒めた
身体は満身創痍、
だがそれでも、それでも立ち上がり
リーダ・バーンスタインは
再びミザリーの前に立ち塞がった
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# misery,s side
思いがけず立ちはだかったその人物
リーダ・バーンスタイン
「嘘だろ…こんな時に」
ベイカーが静かに焦りを浮かべる
おそらく、豪雨の森林帯での戦闘から
その身そのまま
衣服は所々破損しており、その白い肌にもいまだ土埃の汚れが見える
だがその銀色の長髪はいまだ美しく揺れ
こちらを静かに見つめる瞳にも妖しい光がいまだ灯る
理性的なもので行動してきたとは思えない
本能、衝動で彼女はここまで歩んできたのだろうと感じた
「…ぜかしら…」
霞んだ声が聞こえた
だが上手く声の輪郭が聞き取れない
久方ぶりの発声のようなおぼつかなさ
〈ゴホッ〉
軽く咳き込むと乱れた息を整えつつ
再び声を発した
「なぜかしら…私は…またあなたに会いに来た」
静かな声は以前と同じ
だが何かが混じっている感覚
それは迷いなのか疑問なのか
両者は計りかねた
『そう、私もまたアンタに会う気はしてたわ…なぜかは分かんないけどね』
〈キンッ〉
リーダが静かにこちらに歩む
引きずるように剣を打ち鳴らす金属音もどこか悲しげに響く
スっと
マッドローズを取り出すと柄を曲げ鱗状の剣を構成させる
そして同じようにリーダに向けて静かに歩き出した
ベイカーら3人は静かにそれを見守っている
避けては通れないその2人の戦いを
〈ギィィンッ!!!〉
突如の苛烈な金属音
0からの全力の剣戟
互いに反応していることが当然であるかのように
二合、三合と続けざまに打ち合う
〈ギンッ!!ギィン!〉
激しい金属音は以前と違わぬリーダの剣戟の力強さをベイカー達に感じさせた
が
ミザリーだけは別の感覚に思考を取られた
『(なに…この感覚……)』
〈ギャィンッ!!〉
一際大きい金属音を交え互いは後退、距離をとった
『アンタ…なんか違うわね…悲しいの…?』
ミザリーの言葉にベイカー達は疑問の目をミザリーに、そしてリーダに向けた
リーダはなぜか少し微笑んでいるように見える
「わからない…私にもわからない、なぜ此処に来たのかも…なぜあなたにもう一度会わなければと感じたのかも」
『ハイトエイドの命令じゃないの…?』
「もう定時連絡も、報告もしてないわ…ここに来たのは…あなたに会わなければいけないとなぜ感じたのか、その答えを知るため」
『戦わなきゃ…いけない?』
その発言に驚いたのはベイカー達だった
敵である、そして以前の小競り合いから
森林帯での戦闘
リーダに敵対心を抱いていたはずのミザリーが戦うのを躊躇している
「わからない…でも私はあなたに勝ちたい、選ばれなかった私が自分を感じるためにはあなたにきっと勝たなきゃいけないの!」
再び斬り掛かるリーダの一撃を
〈ギャンッ!!〉
再び受け止めるミザリー
『選ばれるってなによ!?』
「アリスによ!!」
不意に出た母の名前に
ミザリーは一瞬の隙を生んだ
それを見逃さない練磨の一撃
〈ギイイィンッッ!!〉
重い一撃がミザリーの腹部に直撃した
ザッと転がりはしたものの
すぐに体勢を立て直しリーダを見る
『どういう…ことよ』
「私は…幼い頃にアリスと出会った、身寄りのない私に、1人だった私に親のように接し優しくしてくれた」
スっと俯き静かに語り始める
「なんの光もなく惰性で生きてきた私に、何度も、何度も暖かい言葉をくれ撫でてくれた。明日もアリスに会えるのなら、って生きるのが楽しみにさえなったわ」
ポツリポツリと言葉を零す
こぼす度に当時を思い出しているのか
少し微笑んでいるように見える
「私が未だに、「幸せ」だったと呼べるのはアリスと過ごしたその僅かなひとときだけ!でもアリスは私の前から姿を消した!!」
俯いたまま
湧き上がる怒りからか、剣を握る手がかすかに震える
「約束を交わした!それなのに、それなのにアリスは何も言わずに私の前から姿を消した!アリスがくれた幸せはアリスが奪っていったのよ!」
周囲の空気がピリつく
『違う!母さんはそんな人じゃ…』
「じゃぁなぜ私に一言も告げずにいなくなったの!あなたという娘がいればそれで良くなったのよ!」
怒号はリーダに黒い気配を纏わせた
そして
〈ブワッ〉
と空気が揺れると
その一瞬の間にリーダは化していた
歪な黒い騎士
剣のような長い両腕が地に着く異様なシルエット
【四つ脚】へと変貌した
「だから…だからきっと!あなたが憎い!選ばれなかった己が憎いっ!」
以前と違い、前回の戦闘のダメージが癒えていないのか
リーダの状態に比例するのか
その両腕の剣が欠けていたり
鎧のような外殻にヒビが入っていたりと
既知の姿からはズレが生じるが
〈ザッ〉
とミザリー目掛け襲いかかる姿は
以前と変わらぬ
いや、その勢いは以前より苛烈に見える
〈ガシャッッ!!〉
【四つ脚】の一撃を受け止めようとするが
勢いを殺せない
ミザリーは数m宙を飛ぶが
〈キィンッ〉
指を鳴らすと
ミザリーも呼応するようにフェンリル化した
『っ!?』
だがフェンリル化したミザリーは
胸がザワつく感覚にとらわれた
そして
『グゥゥ…』
歯を食いしばる、かつての暴走のように脳裏を、思考を本能に奪われそうになる
「ミザッ!!落ち着け!」
その異常を感じ取ったベイカーが間なく叫ぶ
ミザリーはグッと堪えるように
『ハァ…』
と息を吐いた
『ああ、大丈夫…なんかザワついただけ』
一瞬の暴走とはいえ
再びの暴走
とは言えフェンリルを使役し始めて幾多の戦闘を経ているが暴走という状況になり得ることはなかった
その2度の暴走の要因としてベイカーが思い当たる唯一の共通点、それは
「リーダ・バーンスタイン…」
そう、二度ともリーダ・バーンスタインと対峙したときに起こったもの
明確な答えが出るほどのことではないが
ベイカーの思考はある一つの可能性を示し出そうとしていた
「…ラビ…イグダーツさん、もう少し下がろう。」
2人を促し、ミザリーとリーダから距離をとる
2人の戦闘による影響は計り知れない
それもあるがベイカーは
「多分…リーダを抑えれるのは力じゃない。ミザリーの…言葉だ」
「言葉…それって…?」
ルベリオの問に答えれるほどの確証はない
「わからない…でもアリス先生は突き放すような人じゃない。ミザリーなら…アリス先生と過ごした日々から、その誤解を紐解く言葉を拾い集めれるかもしれない」
〈ズシャァァ!!〉
地を削るような擦過音
突撃してきた【四つ脚】を光る三つ編みで食い止める音だ
掌のように変形した光る三つ編みは四つ脚に被さるようにその挙動を食い止めた
それでも
【四つ脚】と化したリーダはミザリーへと突き進もうとする
『アンタに会いに行かなかったわけじゃないでしょ!母さんはアンタに会いに王都に向かったはずよ!』
ピクリとリーダがたじろぐが
「…来たわよ…!……十何年ぶりに会った!その第一声が「娘が…」よ!私のことじゃない!貴方を失った喪失感から私の元を訪れただけ!だから突き放した…」
『それでもアンタに会いに行ったのよ!簡単に受け止められないのもわかるけど…そこで話をしておけば何か違ったはずよ!』
「違わないっ!!結局私は喪失感に拍車をかけるだけで、きっとアリスを許せないはず…」
『 甘ったれてんじゃないわよっ!!
確かに母さんは喪失からアンタに縋ったのかもしれない、弱さを見せようとしたのかもしれない!
でも!
1度は母さんに救われたって思ったんでしょ!幸せだって思えたんでしょ!
失った悲しみもわかるはずのあんたが
なぜその時母さんに手を差し伸べなかったの!
求めるだけで与えようともしないんなら
アンタはまだ誰かが何かくれるのを待つだけ!まだ惰性で生きてんのよ!』
ミザリーの言葉の一言一句が
まるで棘のように刺さりリーダの動きを鈍らせる
「それでも…それでも私はまだ…アリスに愛して欲しかった!あの日の温もりをもう一度確かめなければ、私はきっと幸せには…」
〈ドッ!〉
光る三つ編みを振り払い
リーダが一歩引いた
「私は…アリスの娘でいたかったっ!!」
そしてその一振、その一撃に
全てを乗せるようにミザリーへと再度剣を突き伸ばす
巡国遊撃隊 隊長としてではない
無論ハイトエイドの部下としてでも
【四つ脚】としてでもなく
1人の人間としての剥き出しの感情が
そこにはあった
冷静 冷酷 静観 そんな表情ではなく
かつての幸せを惜しむ 幼き頃のひと時を惜しむ
今にも泣き出しそうな顔でこちらへ向かうリーダを
ミザリーは真っ直ぐ見つめ返し、駆け出した
『お願い…っ!』
構えていたマッドローズを投げ出し、右腕を振るった
リーダに手を伸ばすように
それは敵愾心や闘争心からなる行動ではない
ミザリーはそうしなければいけないと感じたのだ
不意にこちらに手を伸ばしたミザリーに
リーダがほんの僅かに戸惑い静止しかける
そしてそのほんの僅かな一瞬の静止した
リーダの視界に
翠色の、綿のような、羽毛のような淡い光が
広がってきた
「ベイカー…あれって…」
遠巻きに見ていたルベリオがベイカーへ問う
「ベイガンのときに使った…翠色の光、でもなんだか…」
「包もうとしてるみたいですね…羽みたいだ」
そう、ルベリオの表現通り
ミザリーの伸ばした腕から広がった光は
羽毛のように広がりリーダを包もうとしているように左右から抱えこんでいく
「なに…この光…」
翠色の光に包まれたリーダが戸惑いから完全に勢いを失い、静止した
だがその戸惑いはすぐに消えた
翠色の光に包まれたその不思議な感覚を
リーダは知っていたからだ
脳裏に浮かんだのは
かつてアリスと横並びに座ったあの陽だまり
今もリーダの髪を束ねる髪飾りを貰ったあの日
幼き頃の憧憬に【四つ脚】化は解ける
だが、その温もりが今のリーダには
「苦しい……」
胸を締め付ける痛みになる
そんなリーダを少し見つめ
フェンリル化を解いたミザリーがゆっくりと口を開いた
『ねぇ、アンタ…「リディ」って人…知ってる?』
不意な問い
ベイカー達は疑問を感じながらも口を挟むべきではないと、見守ることにした
ピクリと
俯いているためリーダの表情は見えぬが
目で見えるほどにその肩はぴくりと動いた
スゥと息を吐きながら答えた
「知っていたら…なんだって言うの…」
ポツリと返したその言葉
声が微かに掠れている
腰に手をやり、宙に視線をやりながらミザリーが続けた
『小さいころから…母さんに良く聞かされてたわ。
「あなたにはお姉ちゃんがいるの」
って。その姉の名前が「リディ」、後は会ってからのお楽しみだって…亡くなる前は会いに行くための王都に行く計画を楽しそうにしてた』
ベイカーがふと思い出したように付け足した
「そうか…そういや王都に行かないかって婆ちゃんも一緒に誘われてたっけ。」
ミザリーが宙にやっていたら視線をリーダに戻した
つられるようにベイカーたちもリーダを向くと
俯いていた顔をあげ、壁の隙間から差し込む光に照らされたリーダの顔がよく見えた
瞳を開き、その瞳からは涙が溢れだし頬を伝い流れる
かつての表情と同一とは思えぬほどの
感情の露呈した泣き顔
『やっぱ…そういうことね』
1人納得したような顔のミザリー
ベイカーがリーダの様変わりに驚きつつもミザリーに訊ねる
「ど、どういうことだよ?」
『私でも…そう呼ぶわよねってことよ』
いまだハッキリしない答えに疑問符を浮かべていると
「リディは…アリスが私を呼ぶ時の…あだ名…」
〈ガクッ〉
と膝を突きそのまま俯いたリーダ
真下の地面に
ポツリ ポツリと涙が零れて滲んでいく
リーダは自身の霞む視界の中に
再びかつての光景を浮かべた
それは髪飾りを貰った日の約束
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# memory side
(ep.74より)
『それと…もうひとつお願いがあるの、聞いてくれる?』
「うん!いいよ!なぁに?」
ふっと微笑むとアリスはリーダの頭に手を乗せ、言葉を紡いだ
『私ね、お腹に赤ちゃんがいるの。男の子か女の子かまだ分かんないんだけどね』
「ええ!!すごい、アリスお母さんになるの?」
無邪気に手を叩きはしゃぐリーダ
『それでね、リディにね。その子のお姉ちゃんになってほしいの』
「うん、いいよ!私お姉ちゃんになる」
リーダの元気な返事に満足気に微笑むアリス
バッと手を広げリーダを抱き抱える
『ありがとうーっ、リディなら良いお姉ちゃんになってくれるわね』
「頑張っちゃう!その子と一緒にアリスのお手伝いするね」
張り切りが止まらないリーダを撫でながらアリスは続けた
『わかる?リディ、お姉ちゃんってことは…?』
不意な質問に首を傾げるリーダ
「ってことは?」
『あなたも私の娘ってことよ、リディ』
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優しく微笑みながら自身を見つめるその瞳を思い返したとき
リーダは初めて己を悔いた
なぜ
「アリスを…信じられなかったの…私は…」
堰を切ったように流れる涙は
ここまで堪えてきた反動の大きさを示すように地面を濡らし続け
それは同時にリーダの中の、ミザリーへの敵対心の消滅を意味した
「今更の補足ではありますが…」
距離を取っていたベイカー、ルベリオと共に近づいてきたイグダーツが口を開く
「おそらく頃合的に、アリスが王都を離れたのはハーディンが王に担ぎあげられた時期でしょう…
その辺りのタイミングでハーディンの周りに対して王族から執拗なほどの調査を受けたと聞いております。
それもアリスに対しては特に残酷と言えるほどの対応を行いかねない所だったと」
「え…なんでアリス先生にだけ?」
フゥとため息のように息を吐きイグダーツが続けた
「お恥ずかしい話です、体裁や見栄が第一のような古めかしい重臣達が当時は多くありました。
正当な王族であるハーディンが、王族でなく他国からの移民であるアリスと結ばれたことを酷く遺憾に思い、事もあろうにアリスを投獄しようするものもありました」
「じゃぁ…アリスさんがリーダから離れたのは…」
「ええ、そのタイミングで幼い子と共にあれば…その子をハーディンとアリスの子だと疑心暗鬼になる重臣が現れないとも限りません。リーダ・バーンスタインの髪色も金色とは違えど珍しい髪色ですから」
「リーダに、万が一にも被害が及ばないように…離れることにしたのか」
「まさか娘を置いてはいくまいと、リーダに対してノーマークになったことは事実です」
『…なんでハイトエイドに仕えたの?』
静かに話を聞いていたミザリーが
同じく静かに泣いていたリーダに問う
「…アリスに捨てられたと思っていた私は自暴自棄になり…
国王が悪いのだと剣を引き摺り王城に乗り込もうとした。
それをハイトエイドに見咎められ「王を討ちたいならば私の元で牙を研げ」と……そこから自分でも怖いくらいの悪意に満たされた、自分の意思が憎悪の中にしか感じられなくなって…」
「暗示…かもしれません。ハイトエイドは人の心中に入り込むのが上手い、アリスを失った喪失からなる憎悪に取り入って自らの手駒にしようと育てあげたということも有り得ます。それも…そんな幼いころなら容易いことでしょう」
ハイトエイドを知るからこその手口を想像し、眉間に皺がよるイグダーツ
「あの…悪魔の力も…ハイトエイドから?」
尋ねたのはベイカー
先日のアーサーの件とどこか被る、そんな空気を感じたことによる確信めいた質問
「ええ…「極界の黒箱」というらしいわ。」
「人を…悪魔にする力が?」
「あるわ、ハイトエイドは自身の思想に沿う者を遊撃隊として迎え入れ、その黒箱を与えた。その黒箱を生み出すのが【魔女の檻】の力の片鱗だと言っていた」
イグダーツ、ルベリオ、ベイカーが顔を見合わせる
「じゃぁ…すでにハイトエイドは【魔女の檻】の力を持ってるってことなの?」
「あくまで片鱗、真の力を…その本懐を果たすために【魔女の檻】を解放するつもり」
『…なんのために…?』
静かに聞いていたミザリーがポツリ訊ねた
「均衡のために…と言ってたけど本当の腹の内は誰にも教えてない可能性もあるわ。」
『まぁそこは本人に直接聞きましょ…アンタはどうする?』
リーダに問う
「私は…処刑されて然るべき立場よ……もう何を選べる立場でもない。多くを破壊し、多くを傷つけ…国王さえ殺めた」
国王という言葉が出た瞬間
ルベリオに苦悶の表情が浮かぶ
リーダのつらつらと静かに言葉を並べるその姿は自らの今後を悟り覚悟しているよう
だが
イグダーツがそんなリーダに訊ねた
「お尋ねしますが…ハーディンに何度剣を突き立てましたか?」
「一度…」
イグダーツはその答えにふぅと長く息を吐いた
「ハーディンの遺体を私は直後に見て調べました。彼の身体には2つの刺傷があった、そしてあなたが先程告げた通りです「多くを傷つけた」と」
「どういうことですか?」
ルベリオがはかりかねる様に問う
「四つ脚による被害は重要拠点となる砦などの損壊、そして多数の兵士に重傷を与えたというこであり
【四つ脚】はただの1人も殺めてはおりません
それを踏まえて考えると恐らくハーディンの直接の死因も彼女による一撃ではないでしょう」
ハッとしてミザリーがリーダを振り返る
『…ホントなの?』
「兵士たちを殺める必要はなかった…ただ防衛拠点として用を為さないダメージを与えれば良かった。
殺したと言えるのはハイトエイドによって悪魔と化した1人と
国王は……わからない
憎んでいたはずなのに…迷ったのかも知れない
アリスの…愛する人だから」
恐らく、嘘はない
保身の為ではない発言だと3人は感じた
「けれど…罪は償って貰います。リーダ・バーンスタイン」
一瞬の沈黙を破ったのはルベリオだった
「ラビ…」
聡明なルベリオのことだ、リーダ・バーンスタインの置かれた状況も分かった
だがそれでも軽視できない罪
皆がそれを分かっている
当のリーダが誰より
それも理解した上でルベリオは告げた
「罪を…償う機会があるということです。リーダ・バーンスタイン、その後あなたがどうあるかはあなた次第です」
〈パンっ〉
「なんだいなんだい、すっかり王様になる準備が出来てるなぁラビ」
とルベリオの肩を叩きベイカーが茶化す
「こ、こういうのは僕の役目かと…ち、違いましたか?」
恐る恐るミザリーとイグダーツを見る
「いえ、大層賢明な判断であると」
『王様がそういうならそういうことよ、ラビ様』
ミザリーも次いで茶化すと
ルベリオはほんの少し顔を赤くした
そして
『さて、一段落ってことであの扉が礼拝堂?』
ミザリーにつられて皆がリーダの更に向こう側に視線を移す
そこには、どこか厳かな雰囲気を持つ重々しい扉があった
「その通りです、そしてその礼拝堂こそが【魔女の檻】へと続く唯一の道」
〈ドゴォンッッ!!〉
突然、その視線の先
礼拝堂の中から石を砕くような轟音が響いた




