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My Nightmare  作者: 燕尾あんす
Dead Dreamer
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夜の言葉

# misery side


ベイカーとの見張りを交代したミザリーはぼんやりと空を見上げていた


と言ってもベイカーのように思慮に耽るというわけではなく


ただ、単純に空を見上げていた


小さく瞬く星と星を繋げるとイメージの中の母がそこに居る


『…ふん』


おもむろに右手を空に伸ばすと

鋼の腕が月明かりに照らされ鈍く光る


手の甲には王冠と、そこから流れるような三本の流線が刻まれていた


ふと、その意味合いについて考えてみた


この身体はベイカー曰く

母 アリス・リードウェイが長い年月をかけて造ったものだとされている


しかし、その意図は不明


義手や義足を製作し、生活費としていたことは知っているが

それでもそのような用途で身体全体を作ることなどまず有り得ない


そして、華美な装飾こそないものの

この手の甲に刻まれた模様


このような模様はこの手の甲のものと

両前腕に刻まれたフレアカラーのみ


『…母さんの趣味っぽいといえばそうだけど』


ふと独りごちるのを辞めた

小屋の扉が開く音が聞こえたからだ


そして砂を踏む音の後

梯子をゆっくりのぼってくる音


顔を覗かせたのはアーサーだった


『交代にはいくらなんでも早いんじゃない?』


顔だけ向けて言葉をかけると

アーサーは頭をかきながら近寄り、少し離れた所に腰掛けた


「いや、こんな時でもないと話せないと思ってな」


『っていうと?』


尋ね返すとアーサーは一瞬の逡巡ののち静かに言葉を発した


「君は、自分の中に何かいるって感じたことはないか?」


ピクリ、とアーサーに勘づかれはしていないだろうが微かに反応してしまう


ミザリーに内在する魔力の源

フェンリルの存在に気づいているのだろうか?と頭を巡らすが


アーサーと合流して以降、悪魔との戦闘はあれどフェンリルの力を使ってはおらず


ベイカーとルベリオが口を滑らすなどということもないだろう


とすると


『別にないけど…葛藤とか自問自答?そういうのは誰にでもあるもんじゃない?』


当たり障りのない返答だがそう言うしかない


「まぁ…そうだよな、確かにそういうものなら誰にでもあるし俺だって気にはしないんだけど…違うんだ、なんていうか」


言葉を選ぶ、というものではなく

その言葉を言うか言わまいかで悩んでいるような素振りを見せるアーサー


やがて意を決したように、だが小さく


「俺の中に、他の…他人の意思があるような気がしてしまうんだ」


『どうゆうこと?』


「近頃妙な夢にうなされることが多くなった。そしてその夢から覚めたとき、俺は自分でも知らない内に【何かをしてしまった】ような感覚に囚われるんだ」


『…それが、自分の中に他の意思があるってこと?』


「あぁ、だがそんなことの真偽さえ自分には分からない。ただの思い込みなのか、自分を信じきれない弱さ故なのか」


『厄介だってことはわかるけど…なんで私にそんなこと聞くのよ?そんなに人生経験豊富じゃないんだけど』


述べた通り、ミザリーにその疑問を明らかにする答えは見いだせない


そんなことは当のアーサーにも分かっていると思った


「…いや、そうだな。ごめん、分からないよな…でもなんでだろうな、君なら答えをくれるような気がしてしまったんだ」


アーサーの言葉が耳に入る度

ミザリーは思ったよりもアーサー・ビークマンという人間は繊細なのかも知れないと感じた


自信ありげに見える態度は己を鼓舞していたようで、迷いない行動力は迷うまいともがいているようで


『アンタも…悪夢なんて見るタチなのね。』


「アンタもって…君もなのか?」


『ずっとよ、ハンドベルが燃えたあの日から…私はずっと覚めない悪夢の中にいる。今こうしている瞬間も、視界が変わって昔みたいな平凡な日々に戻れればなんて思ってる』


静かに言葉を並べるミザリーの言葉を

ただ見つめているアーサーは


どこか泣き出しそうにさえ見えた


『…なんてね』


「君にこんな話をしてしまった理由が分かった気がしたよ、君が…そんなにも美しい理由もね」


唐突な歯の浮くセリフに

眉間にシワがよる


だがそんなことはお構い無しと

アーサーは腰を上げると


「邪魔をしたな…少し仮眠をとって、後で交代しに来るよ」


『ヤー、ごゆっくり』


プラプラと手を振るミザリーをチラとみるとアーサーは屋根から梯子を伝って降りた


そして小屋の扉の前で、ふと屋根を見上げる


「こんなに辛い悪夢のような世界においても…もがくように、枯れまいと、手折られまいと生きようとするから花は美しいんだな」


ふと小さく口角をあげると

静かに扉を開けて小屋の中に入っていった




数時間後


何事もなく夜は過ぎ、朝が訪れる


目を覚ました4人が出支度をする小屋は少し騒がしかった


「ラビこれも食べなっ、今日の道はすこし険しそうだから」


焚き火で焙った干し肉を差し出しながらベイカーが言うと


「いただきます!」


とこの旅で少しずつ逞しくなってきたルベリオがこたえる


「おい、殿下に少しは敬語使えないのか?」


アーサーもそこに混じると

もはや賑やかという言葉で表すにたりず


『やかましいわね…朝くらいスマートにいけないのかしら』


壁にもたれたミザリーが

花香パイプをくゆらしながら眺める


「そういうなってミザ、なんたって今日はとうとうハイゼン武国に入るんだ。力を蓄えなきゃだろ?」


パンで口をモゴモゴさせながらベイカーがミザリーに振り向く


『静かに蓄えろっつってんのよ』


と言うや否や思い出したかのように

ミザリーがマリーゴールドを取り出すと


懐から取り出した革袋から弾丸を取り出し込めようとする


戦う準備は必要だ


それを見て、気持ち静かにパンを食べ終えたベイカーが自分の鞄を手繰り寄せる


「ミザ、これも使ってみてよ」


取り出したのはまた別の革袋


『またホットな新作?』


「いーや、これはどっちかってとクールな代物さ」


毎度のことながら得意げに手渡された

革袋を覗き込む


そこには


『なんか…尖ってるわね』


ミザリーが取りだしたその弾丸は

従来の弾丸と比べるとやけに先が尖ってみえた


「どういう弾なんですか?ベイカー」


こういう物に興味津々なルベリオが好奇の目をベイカーに向ける


「それは【スコーピオン】って言ってね!マリーゴールドの馬鹿げた威力とその鋭い先端を利用して、どんなに硬い悪魔の殼だってぶち破る予定の弾丸さっ!」


「予定なのか」


「予定なんですね」


『なんで予定なのよ』


3人の視線に面食らいながらも


「実戦で試してないんだから仕方ないだろ!でも気をつけてねミザ」


『なにに?』


「貫通するってことは射線を意識して使わなきゃってことだよ。例えば悪魔の向こうに人が居たりする時に使ったら、貫通して人に怪我をさせる危険があるんだ」


『どすればいいのよ?』


「基本的に撃ち下ろすような感じで射線の着地点を地面とか、後は空に向かって撃つように意識してくれてたらいいよ」



「しかし撃ち下ろすようにか、なかなか使い所が難しそうだな」


実戦経験のあるアーサーが首を傾げる


「それはあんまり気にしてないよ」


ん?とアーサーがベイカーに視線を向けると


「だって基本的にミザ…飛び回ってるだろ」


ああ、とルベリオが納得したように頷いた


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