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My Nightmare  作者: 燕尾あんす
Dead Dreamer
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微かな光

# another side


ルグリッド公国 王都ソーデラル

いまだ王都炎上の名残と言うべきか

忌むべき傷痕と言うべきか


復興には程遠く痛ましい様子が

街並みをどこか寂しく感じさせる


王城の中の王室

ルグリッド公国 国王 ハーディン・ウェイヤードがその生涯を閉じたこの部屋の


窓際に潜むようにハイトエイド・ベルラインはいた


そして、もう一人

黒い装束の人物が傍らに控えるように立っていた


「揃ったか?ジャルセム…」


ゆっくりと深い声でハイトエイドが問う


「はっ…遊撃隊総員、既に準備もろもろ出来ております。号令さえ頂ければ、今にでも」


「よし…明朝だ。王都、王城は護警団の配置を既に終えている」


「護警団は放っておいてよろしいので?」


「構わん、悪魔が跋扈する現状では王都が焼けたと言っても侵攻する他国はおるまい。言ってしまえば案山子も同然だ、護警団は…力もない人間だ」


「そして我ら力あるものが…」


「そうだ。ルグリッド公国は勿論…ハイゼン武国の〈魔女の檻〉を手に入れ、


私は真の悪魔となる 」


瞳の中の揺らぎが不気味に光る



「イグダーツ・バルシュはいかが致します?」


「王族の血は、ルベリオ・ウェイヤードの一人のみ。そのルベリオも手駒に追わせている。問題なくルベリオを始末できれば、結局イグダーツには何もできまい。いや…金色の…?」


「なにか?」


「…報告ではルベリオには同行者がいたな?」


「仰る通りです。赤毛の少年と金色の髪の少女と行動しているのを目撃されています…ですが両名とも年端もいかぬ者たち。気にすることもないでしょう」


「リーダが…音沙汰なくこの惨事の中で、金色の髪、偶然か?」


「気になる点でも?」


「ジャルセム…三年前のことを覚えているか?」


ふっと向き直りジャルセムを見やるハイトエイド


「なんのことでしょうか?」


「三年前、東部の村を襲撃させたときのことだ」


「ああ、覚えております…そう言えばあの時賜った命令が」


「そうだ、金色の髪の少女を殺せと。しくじってはいないんだな?」


「報告の通りです。間違いなく少女に風穴を空けました…今でも覚えていますよ、あの感触を…」


軽く空を仰ぎ、恍惚な表情を浮かべる


「ああ、もういい。確かならよい…」


「リーダ隊長からの連絡がないことが気がかりで?」


「微かにな…精神に多少のブレがあるがゆえに同調こそ完璧ではないが、極界の黒箱〈ブラックボックス〉に適応する逸材…誰に遅れを取るなどはまず考えれん」


「極界の黒箱…強大な悪魔の力を得るというメリットと引き換えに己を喰われる代物でしたか…悪魔になることは望めど自我を失えば力を得たとは言い難いですな。さておき…まさかその金色の髪の少女が何か関わっていると?」


「…予感だ。リーダ・バーンスタインを欠くことは計画の白紙を意味するものではないが、【何】がリーダを欠かせたのかを把握せねばいかん」


「それもあの手駒が期待通りの動きをしてくれれば問題ないのでは?」


「そうだな、リーダには劣るがあれも極界の黒箱を持たせている…すぐに人である事など忘れるだろう…さて、私は少し文献に目を通しておく。ジャルセム」


「はっ!」


「明朝までに全ての準備を終わらせるようにしておけ、前衛の指揮はお前に任せることになる」


スっと一礼すると

ジャルセムは音もなく扉を開け、静かに出ていった


次いでわずかな沈黙ののち

ハイトエイドは王室の隅の文献庫となっている一室へと歩んでいった




時間を少し遡り

未だに傷跡こそ残る王都の一角


右大臣 イグダーツ・バルシュは

王都の様子を視察するために数人の護衛と共に王城から出てきていた


行き交う人々からは賑わいを

その生活の営みを感じこそすれ


至る所にある炎上の跡が

人々の笑顔で取り繕った内の顔が


かつての賑わいからはやはり

随分と程遠く感じさせた


歩く度に耳に入る王の逝去からなる不安

次の王はどうなるのかという疑問


問題は山積みである


「こんな時こそ王の声が…光が必要だ」


誰にともなく、しかし

亡き友の子息 ルベリオ・ウェイヤードの

顔を浮かべながら零した


そんな時歩きながらふと

遊撃隊の面々と多くすれ違うことに気づいた


「そうか…王都の復興のために招集しているのだったな」


東から西から

軍事都合で汽車を動かし多くの遊撃隊を王都に集め、復興への人事とする


今も公国各地から汽車を用い、多くの遊撃隊が王都へと向かって来ている


しかし、イグダーツは何故か

遊撃隊の面々にどこか影を感じていた


「ふぅ…いや、状況が状況なだけに少し参っているな。」


未だに皇太子の安否を把握しきれず

摩耗し始めた心をなだめるように息を吹いた


そこに


「イグダーツ様、よろしいでしょうか?」


進行方向からこちらに駆けてきた兵士に声をかけられ、すっと大臣の顔に戻る


「ああ、なにか問題があったか?」


「いえ、それがある親子がイグダーツ様に面会を求めたいと」


「私にか?」


「はっ、イグダーツ・バルシュ様をと名指しでお話させて頂きたいと。」


「親子か…何か相談事だろうか、どこに?」


「三区の宿屋にて待たせております。イグダーツ様がおいでになるまで待つ、と」


「もう少し一区と二区を廻ってから向かうと伝えてくれ、少し待たせてしまうが」


「了解致しました。あっ…伝え遅れました。それと【狼の庭】について、と言っておりました、言ってくれれば分かる。も」


ピクリとイグダーツの顔が揺れる


「その、親子がそういったのか?」


「はい、なんの事かは分かりかねますがそれで分かってくれると」


「分かった…すぐ向かう。視察は任せる」


イグダーツは微かな、ほんの微かな光の兆しが見えた気がした


狼の庭、それは亡き友が大切にしていた御伽噺

そして、亡き友が息子へと最期に話聞かせた御伽噺


手近に居た兵士に馬を借りイグダーツは

その親子が居るという三区へと急ぎ駆けていった





# misery,s side


最西の町 セントーン


ルグリッド公国の端の町

四人が休息をとる夜中


アーサー・ビークマンは

宿屋の外でぼんやり空を眺めていた


皇太子を連れ戻すためにここまで来た

しかし、ルベリオ達から聞いた話は


反逆の左大臣 ハイトエイドの暗躍についてだった


アーサーは自分なりに信念を持ち、正義感を持ち国の為にと身を削ってきた


研鑽してきたつもりの正義

その目で見たルベリオ達の瞳は嘘をいっているようにはまるで見えない


「参ったな…」


そう独りごちた時

ジャリと砂を踏む音が聞こえた


「…なんだ、君か。なにか用か?」


それはベイカーだった

真っ直ぐにアーサーの元へと向かって歩いてくると


アーサーの横に立ち、言った


「1個だけ…確認したい」


真剣な声だ


「なんだ?」


ふぅと息を吸う音

ベイカーは真っ直ぐにアーサーを捉えながら問うた


「三年前の、ハンドベルが悪魔に襲撃されたこと。ミザと僕の故郷が焼かれたこと…あんたは無関係なんだな?関わってないんだな?」


「…ああ、俺は護警団だ。軍に入り護警団に配属されてからはずっと王都に居る、王都から外へ出たのは今回が生まれて初めてだ」


「…信じていいんだな?」


「ああ、別に君に信じて貰う必要はないが事実だ。俺には…俺の正義がある」


「そっか…関わってないならいいんだ。」


「なぁ?」


「うん?なに?」


「俺も1つ聞かせてくれ」


「だから何だよ?」


「君はミザリーとはどういう仲だ?」


「へ?」


唐突な内容に変な声が出る


「ただの幼なじみ、つまりただの友人って事でいいのか?」


「な、なんだよそれ?どういう質問だよ?」


「全てにかたをつける。皇太子に無事に国王の座に座って頂き、王都が元の賑わいを取り戻す…そして」


「そ、そして?」


急に力強く喋り出すアーサーに少し気圧されるベイカー


「俺はミザリーに交際を申し出る!」


「は……はぁっっ!?」


静けさに浸ろうとしていたセントーン


その中でベイカーの声が帳を割くように広がっていった



それを宿屋の一室に居たミザリーとルベリオも聞いていた


『今の…ビーじゃない?何騒いでんのアイツ』


椅子にもたれたミザリーが訝しげに窓を眺める


「アーサーと一緒にいるんじゃないんでしょうか?さっき探してましたし」


『ビーが?アイツになんか用かしら』


「いやぁ…ベイカーもうかうかしていられなくなりましたからねぇ」


何を察してかルベリオが微かにニヤニヤしている


『なにそれ?ま、どうせしょうもない事でしょ』


椅子からベッドに移り伸び始めたミザリーを横目にルベリオは


「ミザリーも罪な人だ」


と声に出さずに休息の前のひと時を過ごした

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