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My Nightmare  作者: 燕尾あんす
Dead Dreamer
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75/98

アーサー・ビークマン

# another side


「あっ!見えてきましたよ!」


突如の大蜘蛛の襲撃から随分と時間をかけ

ミザリー、ベイカー、ルベリオの3人は

ついにルグリッド公国の最西

セントーンという町にたどり着こうとしていた


ようやくの建築物の群生に

思わず足取りが軽くなる3人


それも無理もない


ルグリッド公国の王都から

西へ西へと歩み続け、このセントーンがルグリッド公国最後の町


つまり、次に辿り着くのは

目的地としたハイゼン武国である


「よーし…ここで英気を養えば、後は…まぁ野となれ山となれなんだけど」


ベイカーの歯切れがイマイチ悪いのは

ハイゼン武国へ入っても結局、武国国王への直接の謁見が最終目標であり


そのための足掛かりがないという問題点からであった



『なんにせよ、宿をとりましょ?休息は取んないとハイゼン武国に入ったらまた何かしら揉めるわよ』


「揉める前提でいくのはやめようよミザ…まぁでもそうだね。流石にお腹空いたや」



思い思いの感情を抱きつつも3人は

町へと踏み入る


町人達の喧騒がなんだか心地よく

殺伐とした野道を歩いてきた3人には何気ない町の風景でさえ癒しに思える


手近な人に宿を訊ねると町の中心に幾つかあるという事らしいので


町を見回しながら中心地へと歩み出す


とは言え目立つのははばかられるために

人混みを避けながら路地へ路地へと歩くと


気づけばやけに人通りのない路地にさしかかった


それもそのはず

どうやらこの先は袋小路だと悟り


踵を返しながらも会話は止まらない


「この辺とかだとハイゼン武国の人とかもいたりすんのかな?」


「いてもおかしくはないと思いますよ?四大国同士は、悪魔の襲撃への対処を第一にするために停戦協定が張られていますし、そもそもルグリッド公国とハイゼン武国は友好関係にありますから」


「そっか、そう言えばハーディン国王とハイゼン武国のダラム王は仲いいんだっけ?」


「はい、信頼できる人物だと常々言っていました。だからこそ父上はダラム王を頼れと言ったんだと思います」


『とにかく問題はそこ…』



「やっと!会えましたね!金髪の淑女よ!」



ミザリーの台詞を途切れさせたのは

前方から聞こえてきたやけに滑舌のよい気取った台詞だった



『なっ…』


「おっ?」


「あれは…」


驚いた3人が見つめる先に立っていたのは



「やはり運命が引き合せると、そういうこともあるのかな?」


いつか会った青年


ルグリッド公国 護警団

アーサー・ビークマンだった



『…なんでアンタがここに?』



スっとさりげなくルベリオを自らの姿で隠すように動く


ベイカーもルベリオに近づき万一に備えている



「君に会いに来た、と言いたいが。無論、皇太子をお迎えにあがったのさ」



「ミザリー、アーサーとは面識があります。悪い人ではないはずです」


ルベリオの声がけに

緊張状態をやや緩和させるミザリー


そんな中ベイカーは考えていた


(リーダや遊撃隊はハイトエイドの懐刀みたいなもんだ、でも護警団は?ハイトエイドの息がかかってないって言えるのか?)


その疑問に答えを出そうと

ベイカーがアーサーに声をかけた


「なぁ、護警団がここまで出張ってくるってことはお偉いさんの命令があったんだろ?誰からの命令なんだ?」


「ん?」


不意に問いを投げかけるベイカーに

訝しげな視線を向けたが


ルベリオからも答えを促すような視線を感じ、アーサーは答える



「私はハイトエイド卿の使命を受け、一時的に遊撃隊の一員として皇太子をお迎えに馳せ参じた」



ハイトエイド卿という名前に再び3人に緊張が走る



『アンタも…そっち側って訳ね?』


「なんだ?どういうことだ?」



「アーサー…貴方がハイトエイド卿の命で来たと言うのなら、僕は貴方とは行けません…」


「何故ですか!今ルグリッド公国には王が、国王亡き今、ルベリオ皇太子が必要なのです!」


『…どっちなのよ?こいつ』


ミザリーがベイカーに問う


どっちとはつまり


ハイトエイド卿の真実を

この未曾有の悲劇の発端を


知っているのか知らないのか

という点に尽きる


「多分…知らないんだ」


この青年の性格を推測し、発言から考察したベイカーの答えは間違っていない


それを同じく察したルベリオが口を開く



「アーサー…国王を、父上を殺したのはハイトエイド卿の命を受けたリーダです…」


絞り出すように投げた言葉


「…は…?」


声にならぬような疑問符が

投げられた言葉を受け止めきれなかったことを示す


「今回の国王逝去と王都の炎上は全て、ハイトエイド卿が引き起こした謀反による惨劇です」


しっかりと、強い言葉でルベリオは続けた



「…そんな?…馬鹿なことが…」


理解できないように頭に手をあてがい

苦悩している様子のアーサー



「イグダーツには!イグダーツには話を聞けなかったんですか?」


ルベリオがさらに言葉をかける


「それは…イグダーツ卿は、ご多忙なようでお目通りが叶わず、それに軍事はハイトエイド卿の管轄でありますし」


と言いながらも王都炎上の日

ハイトエイド卿の指示に違和感を覚えたことをアーサーは覚えていた


本来王城を警護する役目の護警団が

国民の居住区へ配置され、遊撃隊が王城を固めた


ルベリオの言う通りならばその配置は

まさしくハイトエイド卿の息のかかった者達によってハーディン国王を取り囲んだということであった



「…だからといって、そんなはずが!」


葛藤なのか、怒気なのか


〈ジャッ〉


という金属音を滑らせ


突然腰の剣を抜くアーサー


つられるように

ミザリーも腰に下げていた柄を取り出し


持ち手を蛇の模様が繋がるように曲げ

引き金を引く


すると


〈ジャララッ〉


素早く幾つもの節が飛び出し、引き金を離すとそれが剣のように形を成した



「貴方が…皇太子になにか良からぬことを吹き込んだのかっ!」


思いがけず剣を抜き飛びかかってくるアーサー


その剣を鞭剣で受け止めると


〈ギィィッンッ〉


硬く鋭い衝突音が響く



『ラビは!見てきたのよ…』


アーサーの剣を受け止め押し返しながら

ミザリーが投げかける


『まだ子供なのに…父親をなくして!…父親を置いて逃げなきゃいけなかった…』


その言葉はルベリオの耳にも届く


「ミザリー…」


『あの子は泣きながら走ってた、悔しくても悲しくてもちゃんと目を開いて前に進もうとしてる!憧れた背中を追って、忘れられなくて時々悲しそうな顔をしてそれでもずっと前を見てる!』


「っ…」


ミザリー越しに見えたルベリオの目の光が

アーサーに一瞬の綻びをつくった


〈ギィンッッ〉


その綻びに乗じ再び激しい金属音を鳴らし

ミザリーがアーサーごと剣を弾き飛ばす


勢いに押され尻餅を尽かされたアーサーは



『アンタはどうよ…?何を見てるの?』


ミザリーの問に返せる答えを持っていなかった


「…俺は……」


『ハーディン国王のこと、私はあんま知らないけど…ラビを見てたらわかるわ、きっと立派な人ね…』


「もちろんだ!あの方ほど国民を思いやる王はいまい!」


『ならハイトエイドはどうなの?アンタが信じられるような人間なの?』


「…」


本来ならば、国王に次ぐ右大臣と左大臣

それに位置するハイトエイドを信じるに値するかなどは愚問でさえある


ハイトエイドが純に国を思っていればの話ではあるが


アーサーは答えられなかった

国王に抱く尊敬の念や忠誠の気持ちに嘘はない


しかし、ハイトエイドは違った

影を感じる 深い 鋭い影を


だからといっておいそれと

ミザリー達の言うことを受け入れられない



「アーサー…もう一度いいます、貴方がハイトエイドの命令で動いているのなら貴方とは行けない。それに」


チラリとミザリーを見やるとルベリオは続けた


「きっと、父上は僕とミザリーが会うことを予感していたんです。だから、おとぎ話の中のものでしかなかった金色の狼が導く、と…それなら今選ぶべき道はミザリーと行きます」


「皇太子…」


「あっ、それとベイカーもですね。」


「ついでかよ、まぁ良いけどさ」


「迷惑をおかけしますけど、もう少し…力を貸してください。ミザリー、ベイカー」


二人を向くと

改まってルベリオは頭を下げた


『別に放り出す気はないわよ、そうでしょ?ビー』


鞭剣を腰にしまいながら、ミザリーはベイカーを見た


「全くだね、僕らは…ラビが王様になるまで見届けるよ」



二人の言葉にルベリオが顔をあげる

こころなしか綻んでいるような顔で


アーサーは、感じた

ルベリオが国王に抱いてた信頼


それをこの二人の若者にも感じているのだと


それでも火急の件だ、引き返す訳にはいかない


「…わかりました、皇太子がそう言うのであれば私は止めません」


「アーサー…ありがとうございます」


「ですが、私もハイトエイド卿の命令ということを差し置いても国の為に動いている身…ですので」


三人がアーサーの次の言葉に気を向ける


「俺も、共に行きます」


凛と、アーサーは言い放った

その語気たるや、意地でも曲げぬ

そんな空気を感じさせる



『は?』


「えっ?」


「げ…」




真っ直ぐ三人を見据えるアーサーに

三人は思い思いの言葉が、思わず漏れた

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