↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
My Nightmare  作者: 燕尾あんす
Dead Dreamer
PR
70/98

悪夢の行方

# another side


これはミザリーら三人の現在から

少し遡る


とあるのどかな町

人口こそ、都市部や王都にこそ及ばないが

人口密度とその賑わいを考えれば栄えてるといっても申し分ない


日が昇りきり、町の人々も活気よく

通りを行き交いながらその賑やかさを楽しんでいるようだ


町の至る所、家屋や路地など

ひと騒動あったように破損していたり、修理に勤しんでいる人の姿も見られる


数十日前に悪魔に町を襲われたのだ


とは言っても死人が出たり、重傷者が大勢出たりなどといったことはない


だが命はあれど

家屋や路地の損害は激しく、ひとつの宿屋などは二階がほぼ半壊状態という有様であった


そんな宿屋のすぐ傍ら

どうやらその半壊した二階の修理を手伝っているであろう少年がいた


10歳ほどだろうか、

自身の持てる限界の大きさのような壊れた柱を半分引きずりながら放棄場所へと運んでいた



そして20mほど離れた放棄場所へと運び終わるとふぅと一つ息を吐き、額に浮かんだ汗を拭いながら戻ろうとする


そこに


「おーい、バッツ!手伝いか?偉いなぁ」


と少年へと声をかける中年男性


名前を呼ばれた少年は

クルッと振り返ると


「当たり前だよ!僕は強くなるんだから…修行だ」


と決意をここぞとばかりに胸を張り身体全体でアピールする


「そりゃ頼もしい…ほら、手紙が届いてたよ。父さんかリヅに渡しといてくれ」


とどうやら郵便を取り扱う人だったらしい


一枚の封筒をバッツへと手渡すと、

汗を拭いながらまた他の家へと向かっていった


「うちに手紙なんて珍しいなぁ…誰からだろ?」


表には 〈レイノルド一家へ〉と記されており


くるっとひっくり返すとそこには送り主の名前が書かれていた


そして


「あっっ!!」


送り主の文字をらその名前を見た途端、

バッツは勢い良く


宿屋へ、つまり自宅へとまさしく飛んでいくという表現が似合う勢いで走っていった




そんな騒がしいバッツの家


宿屋の一階では


宿屋の主人 レイノルドとその娘のリヅが二階部分の改装の準備をしていた


「あの柱捨てちゃって良かったの?まだ使えなくはなさそうだったけど」


リヅが作業の手を止めずに、父 レイノルドへと尋ねる


「ああ、ヒビも入っているし他の柱を新しくするだからどうせなら一緒にね。」


「バッツはちゃんと運べるかしら?」


「大丈夫だよ、運べるぐらいのサイズに切ったし。バッツも男の子だからな」


「助けてーって手伝いを求めにくるような気もするけど」


クスクスと笑っていると

外から


「お姉ちゃーん!お父さーんっ!!」


と噂したばかりのバッツの声が聞こえてくる


「ほら、きた」


「にしてもそんなに慌てなくても」


微笑みながら扉に目をやると


バンッと勢い良くバッツが飛び込んできた


ハァハァと息も荒く

だが何故か目が爛々と輝いているという不思議な状態だった


レイノルドとリヅもその思いがけない様子に気づき、ついキョトンとなってしまう


そんな二人に呼吸を整えたバッツが

持っていた手紙を掲げる


「て、手紙が…届いたよ」


荒くなる呼吸を抑えるように振り絞った声だ


「そんな、慌てて運んで来なくていいのよバッツ」


クスクス笑いながらリヅがコップに水を注ぐ


「でも珍しいね、バッツ、誰からだい?」


作業の手を止めレイノルドもバッツへと問いかける


「ミ…」


まだ呼吸が乱れているのか

かろうじて一言だけ発したバッツ


「ミ?」


「水でしょ?はい、飲んで」


リヅからコップを渡されると

それを一気にあおって飲み干す


そして


「ミザリーからだよ、手紙」


もう一度、その手紙を宝物のように掲げた


「ええっ!!」


バッツの口から飛び出した名前に

思わず声が出るリヅ


レイノルドも驚きを浮かべながらもバッツの元へと歩み寄る


そして、送り主に〈ミザリー・リードウェイ〉と書かれているのを見ると


三人は顔を見合わせ

揃ってテーブルに着くと顔を付き合わせながらその封を丁寧に開けた


数ヶ月前、この町を悪魔の危機から救った

金色の髪を揺らすあの姿を思い出しながら



__________


# misery,s side



ふわっっ



と金色の三つ編みが揺れていた


と言うよりかは飛び回っていた


正確に言えばミザリーが目まぐるしく動きながら悪魔と戦闘している


それを少し引いた位置からベイカーとルベリオが見ているのだ


もはやお馴染みの光景となったと言ってしまえば

女の子に任せる他ないベイカーとルベリオの尊厳が危ういが

もはや二人もそんなことは気にしてはいない


ミザリーが一番強いのだ


プライド云々、くしくもこれが最善だということだ



「はぁ…やっぱすごいですね、ミザリー」


洗練されたように悪魔の攻撃をいなし、躱し

的確に反撃する


引いた位置から見ればこそ分かるものもある


「……」


声をかけられたベイカーはそんなミザリーの挙動を何やら不思議そうな顔で見ていた


お馴染みの光景のはずだが

ベイカーにはどうやら気になることがあるらしい


と、そんなこんな思索している内に

戦闘は終了し


手をプラプラさせながらミザリーが二人の元へと歩いてきた


『日課みたいにアイツら出てくんのどうにかなんないのかしらね、全く』


ヤレヤレといったように口をとんがらせているミザリーにベイカーが尋ねた


「ミザ、君もしかしたら以前より動き易くなったんじゃない?」


「どういう?」


傍らのルベリオが質問の意味に疑問を浮かべる


だがミザリーは少し驚いたように目を見開くと


『まぁ確かに、そうなのよ…なんか前より生身に感覚が近いっていうか』


的を得ていたようではあるが当のミザリーもそれに関して上手く説明できなさそうである


「ベイカー、そんなのも分かるんですか?」


「うん…なんていうかしなやかさみたいなものが出てきたっていうか〈ウルベイル鋼〉の事は分かるだろ?」


「最硬の金属ですよね!ミザリーの身体の多くに使われている」


「そう、なんだか最近のミザの挙動を見てると〈ウルベイル鋼〉の持つとされている剛性、つまり硬さだけじゃなく、しなやかさ…軟性を感じ取れる気がしたんだ」


『硬いのに…柔らかいの?』


ちんぷんかんぷんな発言に

まさしくちんぷんかんぷんな表情が浮かぶ


「硬いだけじゃダメなんだよ、例えば動作的にひねったり曲げたり、そういう部分があってこそ発揮できる挙動があるわけで」


『はいはい…分かったわよ』


「分かったんですか?」


『…変わったんでしょ?なんか』


「…多分」


分かってはいないが理解しきるのも面倒らしい


まぁいつも通りかとベイカーはため息をついた


「でも変化が起こったということは原因がある…そしてその原因として最も可能性があるのが、【フェンリル化】だ」


「どういうことですか?」


「まだはっきりとは言えないけど、というか確証がないんだけど、もしかしたら…」


スーッと考え事に沈んでいくベイカーを

ミザリーとルベリオは不思議そうに眺めていた


「フェンリル化しなくとも、ミザリーのそもそもの挙動が精度を増したってことですか?」


「そういうことでもある…けど、なんかこう…上手く言えないけど引っかかるんだ」


しかめっ面で頭を抱えるベイカー

だがその苦悩を図り知ることは二人には出来ぬらしい


ミザリーは花香パイプを取り出し

ルベリオは靴紐をゆるめ、休息を取り始めた


その後夜が更けていくまでの時間

ベイカーはひたすらに思考に時間を費やしていくだけだった



___________


ミザリーら三人が休息をとるのとほぼ同時刻



# another side



「…っっはっ…」


とある森林の中

仮眠を取っていた一人の男性が目を覚ました


と言うより悪夢にうなされ目を覚ました


「なんだ…この夢は…」


悪夢、形容するとなればその他ない

そんな夢


周りに景色も何もない

見えない 感じない真っ黒な平坦な世界で


声だけが聞こえてきた


〈感情を…増幅させろ…負を捨てず…飲み込め…〉


と


誰の声かは分からない

人の言葉を使えど人の声かも分からない


ただ、在りし人としての道を違わんと誘う


不穏な響きだった



鼓膜に染み入る声を振り払えず彼は額に熱を感じ

その汗を拭った


アーサー・ビークマン


王都の護警団でありつつ

皇太子の行方を追わんとバイトエイド卿からの名を受けた青年である


傍には馬が一頭

大木に綱を括られたまま

脚を休めているようだ


本人はいまだ確信を持ててはいまいが

早くも彼はベリーズを超え、ミザリーらへと差し迫らんとする場所まで辿り着いていた


何せミザリーら三人は徒歩にての移動

それも皇太子ルベリオを引き連れての行脚


その歩みは、決して順調な道のりとはいかず


対するアーサーは単独行動で体力もあり

王都から屈強な早馬に跨っての追走である


日にちが経つ事にその差は

縮まる一方だということだ


目的に関しては順調ではある

しかし、先ほどのような悪夢が

近ごろになって良く顔を出す


孤独な旅を続ける中での不安によるものか

皇太子奪還という責務からなる焦りか


それとも何か他の外因によるものか


「…お守り効かないんじゃないか…」


と懐から小さく黒い箱を取り出す


任を受け王都を出る際

ハイトエイド卿から渡されたものだ


その小ささにそぐわない存在感を何となく感じ

何よりも異質な不気味さが漂う


「…まさかな…」


マイナスな想像を断ち切り、黒い箱を懐に戻すとまた少しの仮眠を取ろうと身体を横にした

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。