朝
# misery,s side
昨夜の出来事が夢であったかのように
ベイカーとルベリオの寝息が
ときおり聞こえるだけの静かな小屋の中
気づけば降り続いていた雨も
収まっているようで屋根を打つ雨音は聞こえなくなっていた
まだほの暗い小屋の中ではあるが
外は日が昇り始め、空はその青色をゆっくりと広げ始めている
そんな中
ギシ と僅かな軋みを響かせ
小屋の中に忍び足で入ってくる人影
しかし、敵性のものではなくむしろ逆の存在
結局、夜の間中ずっと外にで思慮にふけっていたミザリーだった
そっと扉を締め
寝ている二人に視線をやり、自らも
壁にもたれ座り込み目を閉じた
わずかでも仮眠を取ろうというのだろう
腕を組み、そのままスっと眠りに落ちた
そして、夢を見た
まだミザリーが幼く母も健在だった日々を
なぞるような夢
…日々の中、母から自身に向けられた
あの笑顔に嘘はない
贈られ続けていた愛情に偽りはない
母が身を賭してまで、私を蘇らせたこと
そもそもの原因となった悪魔の襲撃が
ミザリーを狙ったとされる事
そこに繋がりがあるのか
今の段階ではわからないことが多すぎる
迷いも戸惑いも内包する思考の中
それでも進むと決めた
答えを見つけるために進むと決めた
悪魔の魂 機械の身体
構わない、根幹に
根底に私の魂があるのだから
私は、進む
そう頭に浮かべながら
ミザリーは微睡みの中に意識を投げた
その数時間後
「でも雨が止んで良かったですね」
すっかり青空となった大空を仰ぎながら
キャンプツリーの下
ルベリオが深呼吸しながらベイカーに目をやる
「ホントだよ、やっとまともに歩を進めれる」
座り込み、機械部品に手を加えながら
つられてベイカーも空に視線を向ける
雲は何処に行ったのか
木々の葉をすり抜けてくる日差しに目を細めながら辺りを見回す
「追っ手は来てなさそうだね、リーダーが単独行動で先行して来てただけなのかな」
ついに現れた追っ手
ミザリーとの戦闘の末、リーダは激流にのまれ
その消息は不明となった
数々の謎を残すだけでなく
むしろその謎に拍車をかけたリーダ
それだけではない
ミザリーにも心的変化をもたらした昨夜の邂逅
未だ、考え事が尽きないなと
ベイカーがため息をつこうとしたその時
軋む扉が開き、そして閉まる音が聞こえた
次いで、風を切るような音が聞こえた
〈ドシャッ〉
鈍い着地音を鳴らし梯子も使わず飛び降りてきたのは
ベイカーとルベリオが先程から待っていたミザリーだった
先日買った新たな衣服を身にまとい
その目にいつものような光を灯し
『なに機械遊びしてんのよ、行くわよビー』
軽口と、金色の髪を揺らすその様は
ベイカーが良く知る幼なじみの姿そのものだった
「もうちょい女の子らしく、しおらしく飛び降りたりできないもんかねミザ」
『どうやんのよ、それ。ラビも準備はいい?』
「もちろん、後は足を動かすだけです」
ベイカーの皮肉とルベリオの良い返事に
ミザリーは
満足そうに微笑んだ
『ヤー、それじゃぁ行くわよ』
ミザリーの不意な微笑みに
虚を疲れた二人は少し顔を見合わせ
そして揃って笑うと
先行するミザリーを足早に追い始めた
それぞれがそれぞれの理由を抱き
一歩、また一歩へと




