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My Nightmare  作者: 燕尾あんす
狼の覚醒
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61/98

手紙

# misery,s side


三人は子供ら八人を連れて再びベリーズへと戻り着いていた


着いた途端

子供らを見つけたベリーズの人らは

声を掛け合い


ミザリーらの元へと足早に駆け寄ってきた


そして攫われていた子らの親達も

再会できた喜びを露に向かってきた


子供も、親も涙を流し

力の限り抱きしめあっている


それを一歩引いている所でみたミザリーらも

思わず目尻が熱くなる感覚を覚えた


だが、それで解決とは言えない


ミザリーとベイカーは

未だ喜びの渦中にある大人達に事の顛末を告げた


このベリーズを管轄とする軍人による子供らの誘拐


にわかには信じ難い話だが

攫われた子供らの証言もある


「まだ森林帯のキャンプツリーに犯人らを縛り上げてるから、確保して確かめて」


とベイカーの進言で


ベリーズの大人らの有志が

現地に向かい事を確かめることになった


屈強そうな男ばかりが集まり

馬車に乗り込み、森林帯へも急ぎ向かう


『私らも今日のところは休みましょ、ちゃんと悪党どもが確保されるの見届けたいでしょうしね』


とミザリーがルベリオに視線をやる


「そうですね、野放しにしておけるものではありませんから。それに…ちょっと疲れましたし」


気丈に笑顔を見せるが

ルベリオも他の子供らとそう歳が離れているわけでもない


表に出さないだけで疲労は溜まっているだろう


幸運なことに、ベリーズの人らが恩人だと

空き部屋を貸してくれることとなった


食事も振舞ってもらい


三人は、慌ただしい一日の幕を

ゆっくりと下ろした



そして、朝


三人は森林帯に向かった人らが戻るまで

思い思いの時間を過ごした


ミザリーはぼんやりと花香パイプをくゆらし

ベイカーは拳銃の修理に勤しむ


ルベリオは攫われていた子供らの家を巡り

その様子を見て回った



そして昼をすぎていくばくかの時間が過ぎた時


馬車がベリーズへと戻ってきた


ミザリーらも腰をあげ

様子を伺いに行くと


例の髭面の男と軍人の男

そして、森林帯でミザリーがのした三人の計5人の男たちが縄で縛られたまま馬車から降ろされていた


有志の大人らの一人がミザリーらに気づくと

物々しい表情で近寄ってきて声をかけた


「君らの言う通りだった、キャンプツリーでこいつらを見つけてそのまま連れて来たんだが…まさか軍人が絡んでるなんて由々しき事態だ」


「なにか情報はないんですか、目的とか?」


ベイカーが恐る恐る訊ねる


「それが、何を聞いてもダンマリでな。だが君らの話と子供らの証言でこいつらが下手人なのは間違いない…それなりの裁きは受けてもらうよ。こんなヤツらばかりじゃない、頼りになる軍人もいるしな」


「そうですか…ありがとうございますっ」


ベイカーがぺこりと頭を下げた


釣られてミザリーとルベリオも頭を下げた


「おいおい、辞めてくれ。そりゃこっちのセリフなんだ」


と慌てて声をかけられる


『なんにしても、これで一安心ってことね』


「はい!これでベリーズにも元の生活が戻ってくれればいいですけど」


「きっとこれからは大人らが子供をより守ってくれるさ、さ!じゃぁ行こう」


とベイカーの言葉を合図に

ベリーズを後にしようとする三人


門を抜け、再び西へ進路を取ろうとすると


「おーい!」


と子供らの声が聞こえてきた


振り返ると大人らに連れ添われた子供らが八人、みなが人攫いの被害にあった子供たち


揃ってこちらに手を振っている


そして


「ありがとー、王様みたいなおにーちゃん!」


「ありがとー!またねーっ!」


と小さい子供なりに声を張り上げてきた



「ラビ、王様みたいなおにーちゃんだってさ?」


ベイカーがルベリオを向くと


ルベリオが目を見開き

じんわりと頬を赤くしていた


嬉しいのか照れくさいのか

なんにしてもそれはルベリオにとっての小さくも大きい変化の兆しだった


「子供なりに、ラビに何かを感じたのかもしんないね。期待されてんだよ」


ぽんぽんっとルベリオの肩を叩くベイカー

なぜだか自分のことであるかのように誇らしそうにしていた



「それとー!狼のお姉ちゃんもありがとーっ!」



次いで聞こえてきた言葉に

ミザリーがぽかんとする


『…私?』


不意に名指しされポカンとするミザリーに

思わずルベリオとベイカーが吹き出しそうになる


「ははは、狼のお姉ちゃんだってさ」


なにせ子供の言うことだから

ミザリーも怒るに怒れないと察っして

ついベイカーが調子に乗る


『ラビ…なにか吹き込んだわね?』


目を細めルベリオに視線をやるが

ルベリオは慌てて視線を逸らす


そして

子供らに向かって大きく手を振ると

三度、西に体を向けた


「行きましょう!彼らの期待に応えないと!」


その目には強い光が宿っていた


ついミザリーは何も言えなくなり

ため息をついて、その後に続くことにした


だが


「ミザも狼が板についてきたんだねぇ、結構結構っ!」


と茶化すベイカーには


【ゴンッ】


と


「いっ、痛ーっ!」


不意におでこを人差し指で弾かれ

悶絶するベイカー


なにせ鋼の指だ

それはそれは痛かったことだろう


『冗談はさておき、ちゃんと届くかしら?』


とミザリーが気にしているのは

ベリーズの配達人に預けた封筒


つまり手紙の配達を頼んだことについてだった


「丁度東へ出るところだって話ですからもう出たころじゃないでしょうか?」


悶絶しているベイカーの代わりにルベリオが答える


『あれに今後の命運がかかってる…大袈裟な気もするけど』


「大袈裟ではありませんよ。あの文が目当ての人にたどり着き、事が上手く運んでくれればかなり有利に立ち回れるはずですから」


『そうね、私らはとにかく進みましょう』


差し当たりの結論としては進むしかない


額を抑えていたベイカーも


「…軽口は叩くもんじゃないや」


と零しながら足を動かし始めた



〈ポツリ〉



と三人はが気づくか気づかぬか程度の

雨粒が地面を密やかに濡らし始めた


何かの始まりを暗示するかのように

地面に滲みを、ぬかるみに更なる淀みを広げながら


その雨音は少しずつ少しずつ

大きくなっていった

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