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My Nightmare  作者: 燕尾あんす
奪還行進曲
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52/98

休息

# misery,s side


昼下がり、三人はひたすらに歩を進めていた


刺客や悪魔に注意を払いながらであるため

単純に進むほどの距離を稼げてはいないが


想定ほど、遊撃隊や刺客の影が見えて来ないため


王都を出て三日になる今現在も

さして危機たる状況には巡りあっていなかった


「おっ…あんな所に村があるよ」


やや小高い丘に立ち、進行方向を眺めみたベイカーが気づく


次いでミザリーとルベリオも

そちらに目をやると


確かに、小さい規模ではあるものの

村らしきものが見えている


「あれは、確かシューダットと呼ばれる村です。小さい規模ではあるものの独自の流通を持っているので物資などの面での不自由はさほどないっていう村のはずです」


「たーすかった…やっと満足に何か食べれそうだ」


と零すのもそのはず


王都ソーデラルを出てから

ミザリーはともかく育ち盛りの少年二人は


野草や果物でなんとかお腹を満たすという日々に消耗しきっており


流れている川で水こそ得たものの

やはり食べ物がなければ活力も湧かぬ


ベイカーとルベリオの顔には

わずかばかりの覇気しか残っていないような状態だった


『私はそろそろ布団で寝たかった…宿屋はあるわよね?』


「もちろん、あるはずです」


『良かった、一泊ぐらいしても良さそう?』


「恐らくここまで特に追っ手なども来ていなそうなので、多少は時間にゆとりもあると思います。一泊ぐらいはきっと」


「うん、見張りも今日ぐらいはいいんじゃないかな」


心なしか

村が見えたことで活力が湧いてでたようで

足取りにも力が感じられるようになった




そしてしばしの歩行を経て

三人は丘から見えていた村にとうとう辿り着いた


「ここがシューダットか…王都から近いけど悪魔の被害は、なさそうだね」


とベイカーが言った通り


村に一歩踏み入って見た感じでは

ついぞ被害にあっていない、とでも言わんばかりののどかさを漂わせていた


『結構じゃない、ねぇ、宿屋がある』


ミザリーが指差した方向を見ると

確かに宿屋らしき建物が立っている


一足先にと、ミザリーが建物の中に入っていった


その後ろ姿を思わしげに

ルベリオが眺めていることに気づきベイカーが声をかける


「ラビ?どうかした?」


はっとしたように

ルベリオが顔を小刻みに横に振る


「いえっ、大したことじゃありません」


なぜか慌てた様子で

ミザリーの後を追い宿屋の中に駆けていく



「んー?」


と疑問を持ったはいいが

そもそも財布は自分が持っているんだと

疑問をさて置いて、ベイカーも二人の後を追って宿屋の中に入っていった



そして、わずかばかりの時間が経った



三人は一室に揃ってくつろいでいた


ベッドは一つにソファが二つ、少し大きめのテーブルが一つあるだけの簡易な部屋


ベッドの上ではミザリーが

花香パイプをくゆらし、花の香りを楽しんでいた


それをぼんやりとまたもルベリオが眺めている



「ラビ、ミザが気になるの?」



不意に声をかけられ

またも慌て始めるルベリオ


『まぁ…気になんのも無理はないでしょうね』


金色の三つ編みを鋼の手でぶんぶんと振り回しおどけているようだ


なにやらご機嫌に見えるのは久しぶりのベッドでくつろげているからだろうか


「いえ、ここ数日のわずかな間にも数体の悪魔に襲われました」


『そーね』


「でもミザリーは全てこともなげに撃退している…どうしたら、そんなに強くなれるんだろうかと思って」


『だからって…おすすめしないわよ?こんな身体』


「わかってます。軽はずみに羨ましがるようなことは許されない、そういうものだということは」


「ラビ…」


やはり、ルベリオは11歳らしからぬ聡明さを持っている、人を慮る心も備えている


そして自分の無力を知っている


羨ましがることを許されないとは思いつつ

それでも何処かで強さを求めてしまう性は


立場ゆえのものなのかと


ベイカーはルベリオの身の上を思うと

胸に息苦しさを感じた



「そんな、大それたものじゃないんです!ただ、僕も武器が使えるようになれば悪魔を倒せるのかなって思っただけなんです」



『ラビも男の子なのね…ビーなら気持ち分かるんじゃない?』


「んー?僕は武器を扱うより、作る方がよっぽど性に合ってるよ」


『機械オタクね…ラビ、持ってみる?』


ミザリーが手元にあったマリーゴールドを

ルベリオに差し出す


「良いんですか?」


勢いよく立ち上がると

いそいそとミザリーからマリーゴールドを受け取る


「うわぁ…」


その小さな手には不釣り合いな大きさの大型拳銃、その重さが嬉しいとでも言うように眺め回している


「マリーゴールドはミザリーの使用を大前提としてるから…僕らじゃ射撃の反動に耐えることは勿論、引き金を引くことさえできないんだ」


なぜかベイカーが誇らしげなのは

やはり修復・改造をした本人だからだろう


「すごい…専用の武器って良いですよね!ミザリー、剣も持ってみていいですか?」


すこしテンションが上がっている様に

ようやく年頃の顔を見た気がして


ミザリーとベイカーは思わず少し綻んだ


『重いわよ、気をつけてね』


相も変わらずベッドの上でくつろぎつつ

はしゃぐルベリオを眺めている


「それにノルニルは剣じゃなくて…」


ベイカーが補助をしようと立ち上がり近づく


「刃がついてないんですよね!昨日悪魔にぶつけたときに気が付きました」


『そう、鈍器よ鈍器。危なっかしいだけのね』


「そんな危なっかしいもん振り回すのもどうかと思うけど」


『剣は銃弾いらないから、節約できるでしょ?』



「まぁそれはそうなんだけど」


「うわぁ、だめだ。持ち上げられない」


先程から持ち上げようと格闘していたルベリオが笑いながら床にへたりこんでいる


「自慢じゃないけど、僕も引きずるのがやっとだよ!」


ベイカーがなぜか誇らしげに言い放つ



『ほんとに自慢じゃないわね…』


と吐き捨てながらもミザリーは

久しぶりののどかな雰囲気に

少し心が落ち着けていると感じていた


しかし

明日からはまた過酷な旅になるやもしれない危うさも秘めている


わずかなまどろみを感じ

ミザリーはベッドに身を沈めた


それでも、自分のためにも行くしかないと

決意を薄れる意識の中に浮かべ


ミザリーはふっと眠りに落ちた

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