ルベリオ・ウェイヤード (4)
# anotherside
事が静まった王室の中に
足を踏み入れたものがいた
それは国王の片腕であり、また良き友でも…あった
イグダーツ・バルシュであった
悪魔の襲撃に対処すべく
その対応に追われていたイグダーツだったが
胸騒ぎに追われ、その王室に戻ったとき
既にその友は、事切れていた
膝をつき、その手を震わせ
友の手に自らの手を重ねた
「国王よ…友よ、なんと安らかな…顔よ」
堪える感情を抑えきれない
それを誤魔化すように遺体の様子を伺う
右胸に血が滲んでいる
出血は凄まじいが致命傷は恐らくこれではなく
もう一つ
心臓辺りに滲む血、その傷だ
いまだその辺りの血は新しいようで悲しいほど艶やかに潤って見えた
声は震え、その視界も滲みが広がっていく
これほどの傷、苦痛を堪えていたはずの友が
安らかな顔をしている理由
「……そうか…友よ、託したのだな。その魂を、心を…」
一人、その心と魂の行く末を案じ
そして、その心の行く末の一つ
皇太子を探すべく、イグダーツは再び立ち上がった
「無事でいてくれ…皇太子よ…」
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# another side
ミザリー、ベイカー、ルベリオの三人は
話に一先ずのおりを付け
抜け穴を出口に向けて走っていた
「なんかでこぼこして走りづらいなぁ…」
先頭はベイカーだった
暗い中、おまけにその底面はもちろん手入れなどされていない剥き出しの砂利
走るのにも、多少の不自由を感じずにはいられない状況であった
『やっぱ、私が先頭のがいいんじゃない?』
ルベリオを間におき
最後尾のミザリーが声をかけるが
「ミザじゃ足が早すぎるんだよっ」
とベイカーが返すと
ミザリーはやや不満そうに表情を浮かべた
どうも思い切り走れないことに対しての不満も少なからずあるらしい
『それで!ラビはこれからどうすんの?』
すっかりラビというあだ名で定着させる気なのか
ミザリーがサラリと問う
「父が…残してくれた手紙の内容に沿って動きます。王都を出て…なんとかハイゼン武国へと行かなければ…」
『もうこの国に味方はいないの?』
「はい…国王亡き今、実質的な権力は右大臣と左大臣の二人にあります。でもその片腕であるハイトエイド卿を敵とする今…」
「そのもう一人の大臣は?味方なんだろ?」
「はい、イグダーツは僕の教育係でもあったし父の友でもありましたから、僕も信頼しています、でも…」
『でも?』
「僕が頼れる人がイグダーツだけだということに、勿論ハイトエイド卿も察しがついています。だとすると…」
「なるほど、そのイグダーツさんもハイトエイド卿にマークされているってことか」
『要するに?』
「危ないってことだよ、それで?」
「だから僕がイグダーツに、お互いに無事に会うためにはハイゼン武国による保護を申し出てからでないと。ということです」
「ハイゼン武国は信用できるの?」
「勿論です、面識はありますし。父とも良き友でもあります。ハイトエイド卿の支配も流石にハイゼン武国には届いてないはずです」
『にしても…遠いわよね』
「すごく…遠いよね」
「そうなんです…遠いんです」
『この国を抜けるのだって簡単じゃないでしょ?』
「はい…恐らく検問なども張り巡らされているでしょうし先程のような刺客も送り込まれるかも知れません」
「うわぁ、若いのにヘビーな道程だね…」
ベイカーが想像し、苦い顔をしているような雰囲気を出す
何せ先頭を走っているのでその表情がどんなものかは定かではないが
「…あのっ!」
突然ルベリオは立ち止まり
ミザリーを振りかえった
ベイカーもそれに気付き立ち止まり
同じく振り返った
「不躾なお願いなんですが…僕をハイゼン武国へと連れて行ってもらえないでしょうか?」
「えっ?」
『唐突ね…なんで私をそのお役目に?』
「先程の悪魔との戦いを見ました…あなたならこの国の兵士達にも引けをとらない。いえ…その追随も許さないでしょう」
『まぁ…悪い気はしないわね』
「おっ…」
(ミザをその気にさせるつもりか)
ベイカーは特に口出しをするつもりはなかった
事があまりにも事な為
勿論危険はつきものだと承知している
だがそれでも
ミザリーには
自身が、選んで、歩む
ということが必要だとベイカーは感じていた
だからミザリーの選択がどうであれ
ベイカーにはそれを見守る覚悟ができていた
例えそれがどんな茨の道でも
「恐らく…僕に向けられる刺客は…遊撃隊です。それも、もしかしたらリーダ・バーンスタインがその刺客かもしれません」
ぴくり、とミザリーの指がかすかに動いた
「あっ…」
ベイカーがその微かな挙動に気づく
『…どう思う?ビー?』
「どうもこうも、話が大きすぎると思うよ?それもちょっとやそっとの危険じゃない…この国の兵士全員が敵だ」
『はっ…』
ミザリーが一つ息をつく
そしてその一つの息がベイカーに答えを予測させた
(まぁ…リーダ・バーンスタインの名前が出ちゃったらな)
『いいわ…お供して差し上げるわ皇太子…』
「ほ、本当ですか!?…助かります」
一人での孤独な旅は免れることからの安心感からか
ルベリオはホッと安堵の表情を浮かべた
「ほんとに良いの?ミザ?」
『ええ、借りを返す相手が自分から来てくれるってんなら手間がなくていいわ』
(その代わりに結構な距離を歩くっていう手間にはなるんだけど気づいてないのかな?)
ベイカーは頭に浮かんだ意見は言うだけ無駄だろうとそっと空へと消した
とはいっても抜け穴の天井だが
「おっと…」
今度はベイカーが足を止めた
目の前に抜け穴を塞ぐ鉄の扉が立ちはだかっていた
「こんなところに扉が…」
『…壊す?』
ちらりと揃ってルベリオを振り返ると
その手元には先程の鍵があった
「それはさっきの蓋の鍵じゃないの?」
「いえ、なんでもこの王都に存在する抜け穴は多くありますが。その中の重要な箇所は全てこのように施錠されているということらしいです。」
「ということは?」
「その重要な箇所にある施錠された錠は全て共通されているんです。その全てがこの鍵で…開きます」
ルベリオが持っていた鍵を
扉の錠に差し込み、捻ると
〈ガチャリ〉
と僅かな錆を感じさせる音をたて、その役目を果たした




