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My Nightmare  作者: 燕尾あんす
王都炎上~墜ちる太陽~
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47/98

ルベリオ・ウェイヤード ⑶

# another side


王が墜ちるそのほんのわずか前


王室からの抜け穴をルベリオが降り始めたとき

〈ガチャリ〉


と王室の扉が開いた



そして、〈カツカツ〉と靴を鳴らし

部屋に入ってきた者の正体は

その声ですぐにわかった


『随分とめかしこんできたじゃないか?』


といつもと変わらず厳かな父の声

それに対して侵入者が応えたその声


「ええ…こういう状況ですので…ねぇ?」



かすか届いたその声に

ルベリオは愕然とした


リーダ・バーンスタイン


このルグリッド公国に属する

巡国遊撃隊 隊長

そして、この公国最強と目される剣士


ルベリオの耳にも覚えがある

間違いなくその人だった


「そんな…」


とは言ったものの

リーダ・バーンスタインはこの謀反を企んだとされるハイトエイド卿の指揮下にある


関わっているのも当然と言えば

当然だとも思えた


だがこうなると

隊長であるリーダ・バーンスタインがハイトエイド卿に次ぎ謀反を助長しているとする


そうすると、その指揮下にある

遊撃隊ももれなくその謀反の為の手駒だと推測せざるを得なくなってしまった


「…皇太子はどちらに?」


リーダの声が、やはり自分のことを探していると気づかせる


『さぁな…もう独り立ちできる子だ。私は送り出しただけだよ』



聞こえる父の声

ルベリオがまだ聞いていると知ってかしるまいか


優しさが、感じられた


子を送る父の優しさ

ルベリオの目に涙を滲ませた


「この地獄に子を放りましたか…千尋の谷も今の国よりマシでしょうに」


〈キィンッ〉


と静かに剣が滑る音が響いた


剣を抜いた音だと潜むルベリオは気づき

梯子を握る手が震え出す


『そうか…君も銀色の獅子だと呼ばれていたな…あの子は獅子と呼ばれるような力はない』


「ならばあなたが地獄に送り出したことは酷であると言わざるを得ない」


『だがな、あの子は大きな翼を持っている…羽ばたける翼を、民を、人を包める翼を。そして…』



〈ドンッ〉



なにかが、何かにぶつかるような音が聞こえた


あるいは何かが、何かに突き刺さる音


『ぐぅぅ…』


堪えるような父の声

恐らく、恐らく必死に声を出すまいと堪える声


ルベリオは察した

涙が、溢れ出した


『…あの子は飛び立てる。私が何処にいてもその姿を見つけられるほどに大きく羽ばたける、そうだろう…?』


〈ピッ…ピッ…〉


水滴が落ちるような音


そして、ハーディンの声は


聞こえなくなった



「だったら…その翼も叩きおる迄のお話よ…」


静寂の中


リーダの声だけが微かに聞こえてきた


「さようなら…太陽の王、あなたの光はもう…絶えた」



そして、時が経ち


今に至る


__________________



# another side


「それが…僕が聞いた事の顛末です…」


第二区の井戸の底

そこから続く抜け穴を歩きつつ、ルベリオが語り終えた



「そんな…遊撃隊長が国王を…?」


『あの女…でもなんで?』


ミザリーもベイカーも

知った名前が出てきたことに驚きは隠せない


「謀反です…リーダ・バーンスタインはハイトエイド卿の直属の兵士ですから…」


『謀反…』


「父は、国王は…国と国の争いを良しとせず。協定条約を結び、それを保つことに尽力していました」


「知ってるよ、温厚派の国王で人望も厚かった賢王だって。」


「はい…悪魔が横行する時代ですから、人と人同士が争わず、手を取り立ち向かうべきだと…」


「それを良しとしない存在がいたってこと?」


「はい、それがハイトエイド卿です。国王の片腕でもある彼は、むしろそれを好機と捉え攻め込むべきだと」


「それが今回は自国が悪魔に襲われたのを好機に謀反を起こしたってことか。」


「国と国の武力は均等であるべきだと、その為に動くべきだと」


『…』


難しい話が苦手なミザリーが

なんとか理解しようと必死に頭を巡らしている


その結果、眉間に皺が寄る


「でも、ルグリッド公国と同規模のハイゼン武国とはほぼ互角の兵力だって話じゃなかったっけ?」


「…実質の規模や兵数で言えば、確かに五分ではあるんですが」


「じゃぁ、向こうはやる気だってこと?」


「いえ、ハイゼン武国のダラム王とは友好関係にあります。父も…彼を友だと良く言っていました」


「それなら、なんでそのハイトエイドってのはわざわざ争おうとするんだよ?」


「それが…ハイゼン武国が所有するものが問題なんだと…」


『……』


やはり会話に入れぬミザリーが退屈そうに

頭を揺らしている


「それってなに?…爆弾でも持ってるっての?」


「僕もよくは知りません。父はおとぎ話の類のものだってはぐらかすばかりでした」


「おとぎ話?」


「ええ、古来より伝わるものだって。それが名前も良くわかんなくて」


「なんて名前?」


「それが【魔女の檻】というものらしいんです」



『……ん?』


「……ん?」


ミザリーとベイカーが揃って首を傾げる


『ビー…なんだっけ?』


「えーっと…あれは…」


「知ってるんですか?」


『聞いた事あるのよ…ちょっと前に』


「そうだ!あの蛇だ!魔女の檻をどうにかしろって!」


『ああ…そうだった、結局…どうゆうこと?』



「蛇って…なんのことです?」


さっぱり理解できないミザリーと

純粋な疑問を持ったルベリオに見つめられ


ベイカーは少し困った顔を浮かべた



_______________



そして、少しの時間をベイカーはルベリオへの説明に費やした


無論その間、足は絶え間なく抜け穴を出口へと向かっている



「そんなことが…あるんですね」


ベイカーから語られた内容に驚きは隠せないが、その内容はルベリオの脳裏にも疑問を重ねさせた



「あの蛇が言ってた【魔女の檻】がハイゼン武国が所有するものだったなんて…」


「ミザリーさんは、金色の狼なんですか?」


『…なんじゃない?ピンとこないけど』


「よく走るし、狼っぽいしね」


『一体どこがそう見えんのよ』


じろりとベイカーを不機嫌そうに睨むミザリーは

ルベリオにとっても


「…見えますね…」



『…腑に落ちないわ…』


ミザリーは不機嫌なまま、暗い抜け穴を進んでいった

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