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My Nightmare  作者: 燕尾あんす
王都炎上~墜ちる太陽~
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46/98

ルベリオ・ウェイヤード ⑵

# another side


「君、それよりその井戸どこに通じてるの?」


襲いくる謎の兵士を倒した直後


ベイカーは井戸間際で

小さくなっていた少年に歩み寄り尋ねた


「これは…王城の…王室へと続く隠し通路です」


少年は先程までのやりとりを経て

信頼するに足ると感じてくれたのか

素直に答えた


「お、王室!?またとんでもないとこに通じてるなぁ…どうする?ミザ」


『急ぎの用件ってやつよ、行くしかないでしょ?王様に伝えればまた、反応も違うんじゃない?』


「言うと思ったけど、下手すりゃ僕らが侵入者と思われてお縄だよ?」


『それでも…ん?』


「ん?ってなんだよ…うん?」


二人に浮かんだ共通の疑問

この隠し通路から通じているのは王城の王室


ではその隠し通路からでてきたこの少年はなんだ?ということである


「君、何者だい?王城の関係者だとは思うけど…」


ベイカーが再び尋ねると

少年はハッとしたように立ち上がった


「ごめんなさいっ!今は詳しく話しができる状況じゃないんです…また先程のような兵士が来てしまう…」


焦りながら懐から

何やら折り畳まれた紙片を取り出すと

中を改めて、また懐に戻す


『…狙われてるの?』


静かにミザリーが問いかける


「はい…恐らく、王都にいる兵士は大多数が僕のことを狙っているはずです…」


「そんなに?悪い子には見えないんだけど」


『どんだけ悪い子なら命狙われんのよ…どうするビー?』


先程とは代わり今度はミザリーがベイカーに問う


「子どもを放っとく訳にいかないよ、ましてや狙われてるなんてことになりゃあね。…とりあえず安全な所まで避難させよう」


『って訳よ、あなたにとって安全なのはどこ?』


「あ、ありがとうございます…第二区に同じような隠し通路がある井戸があります。

そこから王都の外に出られるはずなので…」


『随分隠し通路が多いとこね…まぁ、行きましょ。』


「まだ悪魔やら残ってるかもだから用心しないと…」


『慎重に、走るわよ!』


言い出すや否やミザリーは走り出した

慌ててその少年とベイカーも後を追う


「そういや君、名前はなんていうんだい?」


ふと思い出したように並走する少年に訊ねる


「僕は…ルベリオです、ルベリオ・ウェイヤード。」


『ルベリオ…ルビ…だったらラビね!』


「なんでそうなったんだよ」


『あだ名なんてそんなもんでしょ?』


「だってさ、ミザが変なあだ名付けちゃって申し訳ない」


ベイカーがなぜか代わりに謝ったが

ルベリオ自身は悪い気はしていないようだ


むしろその顔はほころんで見える


「あだ名なんてはじめて付けて貰いました。ラビか…」


先程までのどこか大人びた

落ち着きあれと定めているかのような立ち振る舞いとは違い


不意に現れた年相応の少年のような表情に

ベイカーは少し、ホッとした


「僕はベイカー、ベイカー・アドマイル。よろしくねっ」


走りながら手を差し伸べると

ルベリオはおずおずとその手を握り

またベイカーもその手を握り返した


「は、はい!よろしくお願いします」


「そんで、前をまっしぐらに走ってんのが」


『ミザリー、ミザリー・リードウェイ。握手は後でね』


ヒラヒラと手を振りながら

相変わらず突っ走っているが


そこそこにペースを落として

ベイカーとルベリオに合わせている


それでも全然早いのだがこれは先導というよりは

先んじて、危険の有無をチェックし後の二人を安全についてこさせる為のものだ


その視線は目まぐるしく

周りに張り巡らされている


と言ってるそばから前方の家屋の屋根からミザリーへと飛びかかる悪魔の姿が見えた


が


ミザリーがジャンプしたかと思えば

その悪魔に飛び乗り

そのまま地面へと踏みつけた


おまけに


〈ドォン〉


お馴染みの発砲音


その頭へとマリーゴールドの銃弾を放った


断末魔をあげる暇もなく弾けた

その悪魔を一瞥すると


またも駆け出すミザリー


第一区から第二区へは

さほど距離はない


程なく


第二区へと切り替わる門が見えてきた


『それで!二区のどこに行けばいいの?』


振り返りながら問いかけるミザリー


「二区に入ってすぐ赤い屋根の宿屋があります、その裏路地の井戸です!」


「あっ、赤い屋根ってあれじゃないの?」


『あれは橙よ!あっちでしょ?』


ミザリーの促すほうに視線を向けると

なるほど、ベイカーの見てた方向とは逆の方向にまさしく赤い屋根の宿屋が見えた


「あれは…朱色だろ?」


『バカ言ってないで行くわよ!』


ベイカーが無駄に張り合おうとしているが

やはりそんな時間はないし、ミザリーのほうが正解であることに間違いはない


赤い屋根の宿屋を角に曲がり裏路地に当たる方へと走ると

人気のない道の端にぽつんと井戸が見えた


悪魔がまだちらほらと見えるせいか

街の人の姿はさっぱりと捉えられない


兵士も多くが未だ

悪魔の多く蔓延る四区に出向いている為

時折、視界に入る程度でしかなかった



徐々に目当ての井戸に近づくと

遠目からでも何やら物々しい南京錠が見える


井戸にかかる鉄の蓋とその井戸のへりが

その南京錠で繋がれているようだった


「ミザ!緊急事態だ!そんなの壊しちゃえ!」


「えっ、かぎ…」


ルベリオが言葉を放つより先に


〈ドゥォンッ!〉


もといその言葉をかき消すように

ミザリーのマリーゴールドの銃声が鳴る


〈ギィャンッ!〉


見事に南京錠に当たり、その形を大きく歪めた


『もう一声っ!!』


と井戸の蓋の金具へと

ノルニルを振りかぶる


〈ゴシャッッ!……ガラ…〉


金具は弾け飛び

ノルニルがぶつかった衝撃でその鉄の蓋も井戸のヘリから滑るように飛んでいった


『楽勝だっての…』


とミザリーがルベリオとベイカーを振り返る


『ん?』


ミザリーの表情が固まるのを見て

次いでベイカーもルベリオを振り返る


すると


ルベリオがなんとも言えない顔で

手に持った鍵を差し出していた


「鍵なら…あるんです」


どうやら手に持ったその鍵は

井戸にかかった南京錠の鍵である

ということらしい


バツの悪い二人は揃ってポツリと言葉を発した


『「…ごめん」』


「いえ…行きましょう」


三人はゆっくりと井戸を降り始めた


その最中梯子を下りながら

ベイカーが思い出したように発した


「そういや、王様は大丈夫かな?あの四つ脚も、もう王城に着いてておかしくないだろうし」


「っ…」


ベイカーの言葉にルベリオがハッとした

そしてその様子にミザリーが気づいた


『…どうかした?』


「…父は…もう」


『もう?』


「恐らく…亡くなりました」


徐々にか細く、震え出すその声に

ベイカーも、ミザリーも

何も言えなくなった


だが


「…父?」


ベイカーがいち早く気づいた


『ん?』


「王様が君の父なの?」


『え?』


「はい…そうです」


「えっ!!…皇太子…なの?」


ルベリオが静かにコクリと頷く


状況が今ひとつ飲み込めない

ミザリーは先に梯子を降りきり

抜け穴の先を気にしている


『私、あんまり賢くないから分かんないんだけど…なんで皇太子が兵士に狙われてるの?』


「そうだ!…それに、国王は…やっぱり悪魔に?」


ようやく三人揃って井戸を降り切ると

抜け道を歩き始める


走らなければいけない事態なのだが

それよりも話を、状況を飲み込まなければいけない気がして


二人はルベリオの言葉を待った


僅かな沈黙の後


静かにその言葉が響き始めた


「いえ…父を殺めたのは…リーダ…リーダ・バーンスタインです」

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