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My Nightmare  作者: 燕尾あんす
王都炎上~墜ちる太陽~
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45/98

ルベリオ・ウェイヤード (1)

# another side


思いがけず出会った少年

そして、その少年を連れていこうとする兵士


その間にミザリーが立ちはだかった


「ミザ?…その子は兵士さんに保護してもらったほうがいいんじゃない?」


ベイカーが声をかけるも

ミザリーは引く気はなさそうだ


「その通りだ、あの少年は私に任せて。君たちも避難しなさい、王都はまだ危険に包まれている」


身振りを混じえつつ兵士が言う

しかし、そう言いつつも

その視線はミザリーを通り越し


井戸から出てきた少年から

離れることはなかった


「だ、ダメです…僕は」


ミザリーが間に入ったことで

多少、緊張が緩和されたのか

少年がか細くはあるが声をあげる


ミザリーは少年を振り返ると尋ねた


『君…あいつが気に入らないのね?』


少年と目が合うと

少年は何かに気づいたように


目を少し開き、そしてかすかに潤ませた


「はい…連れていかれる訳にはいきません」


ふっと笑うとミザリーは

再び兵士に向き直る


『気が合うわね…私もなんとなく、気に入らないと思ってた』



〈ビュンッ〉


ミザリーの言葉に被さるような風を切る音


こともあろうか

その兵士はミザリーへと剣を躊躇いも見せずに振るってきた


が


〈ギィンッッ!〉


その一閃は鋼の腕に阻まれ

鋭い衝突音を響かせた


『ほらね、勘は当たるのよっ!と』


反撃一閃


担いでいたノルニルを弾いた兵士の剣へと

振りつける


〈ギィン〉


再び衝突音を響かせ


兵士の剣はその手元から離れ、飛んでいってしまった


「ミザぁ、いいのかよ?」


色々心配そうにベイカーが声をかけるも

ミザリーはまるで気にしてないようだ



『見たでしょ?やむ無しよ。やむ無し』


「やむ無しって…そもそもやる気だったじゃんか」


と何処か緊張感のないやり取りを

離れて見ていた少年は



事も無げに兵士をあしらうミザリーに驚きを隠せないでいた


「女の人なのに…」


ところがそれで事態が収まるはずもなく


「なぜ…なぜ邪魔をするか!小娘っ!!」


ああも容易く剣を弾かれたことに

自尊心を傷つけられたのか、兵士の矜恃を踏みにじられたと感じたか


当たり前に兵士は激昂している


自らが先に仕掛けたことなど

その兵士もとうに忘れていた



「偉大なる事の前に、小娘如きがどうこうできるか…」


『その小娘にいいようにあしらわれてるみたいだけど?』


「貴様ぁっ!」


激昂に次ぐ激昂


「なんでミザはそうなのかなぁ…」


傍らで見ているベイカーはハラハラしっぱなしである



「もう構わん……」



『諦めてくれた?だったら急いでるから失礼するわね…行くわよビー』


とベイカーを促し、当初の目的である井戸の方へと向かおうとする


「なりふり構わんという…意味だ、小娘。後悔するなよ?」


『後悔ってなんの……』


振り向いたミザリーとベイカーは固まった


〈ギャチィ〉


耳に不快な音を微かに立てながら

徐々に、徐々にその兵士の姿は


先程まで散々と王都内で見た


骸骨の悪魔へと変貌していた


二人は初見ではないが、それでも見慣れたというものでもなく

見慣れるなんてことが叶うものでもない


その背後

初見であり、尚且ついまだ幼いルベリオには

尚壮絶な出来事としてその身に刻まれようとしていた



『は…なにそれ…流行ってんの?』


「…いまだ未完ではあるがこの力…到底及ぶものではないぞ…?」


『なにそれ?って聞いてるんだけど…おつむは退化してんの?』


「ほざけ!!」


もはや完全な悪魔の姿と遜色ない

その元兵士は


掴みかかろうとミザリーへと迫ってきた



〈ドォンッ〉


響く発砲音


悪魔相手なら銃の使用も躊躇わない


だがさすがに人から成ったことに抵抗を感じ

狙いは肩辺りへと絞られていた


「グゥゥッ!!」


その衝撃に打ち倒され

肩を抑え悶絶している様にとれる


先程まで戦ってきた悪魔とは違い

どこか人らしい反応と思えることに

かすかな罪悪感を感じるものの


これもやむ無し である



『もう一回だけ聞くわよ…それは、何なの?』



再び、マリーゴールドを悪魔に向けつつ

問いかけるミザリー


ベイカーとルベリオはその様子を

ただ見守っているしかできない状態だった



「何かだと…?これは…力だ…」


やはり人同様に言葉を使う

悪魔となったことで損なうものでもないのか


その異形な姿から人の言葉が発せられることに不気味な違和感が拭えない


『悪魔になることが力…?』


悪魔を恐れるこの世界において

恐れず、むしろ自らが求めることなどがあるのか

あっていいのか


しかし


(私も…もしかしたら同じなのかも知れない)


微かな疑問が頭に紛れ込む



「ミザ、ミザは…違うよ」


ベイカーが察し、その疑問を振り払うように声をかける


『ビー…わかってるって』



「望み手に入れた!人を超える力がこの姿だっ!」


手負いとなったことが

逆に奮い立たせたのか


再び猛然と襲いかかってくる


『そんなもんが…欲しかったのならっ!』


襲いかかってくる両手を躱し

軽やかなステップで背後に回ると


その悪魔を抱え込むように両手を回す


『ご愁傷さまねっ!!』


そしてそのまま、のけぞるように背後に

持ち上げ叩きつけた


〈ゴギャァッ!!〉


と異様な鈍い音が耳に届く


「…バックドロップ…ってやつ?」


唖然としながらベイカーが呟いた


「…すごいっ…」


その背後でルベリオも思わず言葉が零れる


「……」


叩きつけられた当の本人はというと

なんの言葉も出ずにただ横たわっている


『ああ、上手くいったのかしら…』


叩きつけた当の本人はというと

涼しげな顔で立ち上がり

衣服の砂埃を手で払い始めた


「あれだけ良いアーチ描いたんだからそりゃそうだろ」


『違うわよ…あっ』


ミザリーの視線の方向に目をやると

なんの動きも見せず横たわっていた悪魔が


そっと固まり弾けて消えた


『…』


苦虫を噛み潰したような顔をしているミザリーをちらと見てベイカーは察した


悪魔になったとはいえ、人

以前、四つ脚と初めて出会った夜にも

同じく悪魔になった人と対峙した


その時にもミザリーには躊躇いが生じていたことを思うと


恐らくミザリーは殺めず

事を収めたかったのかもしれない


だが今回それが上手くいかなかった


心の奥底に罪悪感のようなものが微か芽生えてしまったのかもとベイカーは推測した


「ミザ…あっ、ねぇ君それより」


とベイカーが少年の元へ歩むのを見て

ミザリーもそれに続いた


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