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My Nightmare  作者: 燕尾あんす
炎上前夜
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30/98

重なる謎

# another side



しばしの時間を経て

ミザリーとベイカーの二人は第四区の宿屋に戻ってきた


まだ夜明け前の静かな町は

二人の先程までの心情などつゆ知らず

眠りについたままだ



謎の来訪者のおかげで少し

物が散乱していたが幸いにも破損したものなどはないようで

僅かな時間で元通りのレイアウトに戻せた


「さて…じゃぁミザ、脱いで」


ベイカーの唐突な発言に

思いっきり顔をしかめたミザリー


それを察してか慌てて言い直す


「違うよ?!‥‥足に不具合があるんでしょ?」


『たく‥デリカシーというものがないのかしらね…』


文句を言いながらもベッドに腰掛けブーツを脱ぎ

ズボンを捲り上げ脚部を出す


普段はズボンに隠れて

見えはしないが両腕同様に鋼の脚部が姿を現す


「流石に外傷まではないみたいだからやっぱり内部か…」


自分の鞄から皮の道具入れやら

修復用の部品やらを取り出す


「ちょっと開けてみるね」


と言うと膝の関節部、脛の外殻に当たる部分の部品を留めてあるネジを緩め


外殻を外すとその中には大小様々なパーツやそれを連結させるケーブルなどが様式美さえ感じさせるような配置で佇んでいた


「あっ…なんだこれ?熱で摩耗してる…」


ベイカーが目をつけたのは膝の辺りの一部品


『ん?』


見ればどうやら熱による摩耗やら衝撃

で部品が歪んでいるようだった


「おかしいな…部品が歪むほどなんて、そんな熱量を…」


何やら難しい顔をしているベイカーだが

機械のことは良く分からないミザリーからすれば


『どうでもいいけど直るの?』


「うん、替えの部品があるよ。でも原因が分からないから気になるなぁって話」


『あの四つ脚に散々転がされたからじゃないの?』


つい先程の苦い記憶を思い出したのか少し苛つきを見せるミザリー


「うーん、外部からの衝撃によるものとは考えにくいけど…とりあえず交換しよう」


ひとまずは処置することにしたのか

慣れた手つきで部品を取り替え


ついでにと他の部分も点検などしていたらどうやら朝が来たようで


少しずつ明るくなり

外から生活音も聞こえ始めてきた


「よしっと…どう?」


一通りの点検を終えると

ミザリーは身体の動作を確かめるように指を開いたり握ったり、腕を伸ばしたり


『うん…問題なさそ。ありがとう』


「いーえー、でも無茶はしないでね」


『そりゃぁこっちの台詞よ…あんな無茶して』


先程、ミザリーを逃がそうと四つ脚の足にしがみついたことを言っているのだろう


「あれは…身体が動いちゃってって、あっ!!」


『なによ?』


「四つ脚のこと!兵士さん達に教えとかなきゃ…こんな王都のど真ん中にあんな奴が来たら…」


『大惨事ね…夜明け前でも誰かしら見つかるでしょ。行きましょ』


二人はもう何度目か分からないが

慌ただしく宿屋から飛び出した



静かな街は夜明けが近づくにつれ

活動する人々がまだらに姿を現し始めている


兵士を探していると

向こうのほうに朝の見回りだろうか

二人の兵士が歩いているのが見え

二人は駆け出した



__________________


そのしばらく後


ルグリッド公国

~王都内 王城 ~



その男は王城内の通路を

険しい顔で歩いていた


白くなった髪

静かに灯ったような緑の瞳の男


公国の王 ハーディン・ウェイヤード


考え事だろうか

一国の王ともなると思案、思索や思うところが多いのだろう


眉間の皺が緩むことなく歩き続けていると


どこからか会話が聞こえてきた

なにかあったのだろうか、慌てたような気配を感じる


声の元へ歩いていくと数人の兵士が

集まっていた


『ご苦労さま、なにかあったのかね?』


突然現れた王に驚き

四人いた兵士はさらに慌てて敬礼をした


『構えなくていい、それでなにが?』


四人は顔を見合わせると

その内の一人が口を開けた


「はっ、つい先程四区の方から報告が入りまして。その内容と言うのが…」


その間に少し躊躇いが見える


『内容は?』


「王都からごくわずか離れた場所に森林帯という程でもありませんが木々が生い茂った地帯がございます」


そこで唾を飲むような、一呼吸置くような間を一度取った


「そこで数刻前に〈四つ脚〉を見たとの報告が四区から入りました」


『それは本当か…』


思わず声に力が入る

王国内を荒らし回っていた脅威が

遂に王都にまで迫ってきたのだ


「四区駐屯の兵士に一般の方から報告があったと聞いています」


『その者達に被害は?』


「負傷などは特に聞いておりませんので恐らく遠巻きに目撃しただけかと」


『そうか…兵士を回し周囲を警戒させるよう手配しよう』



思わぬ報告に緊張がまとわりつく

だが、冷静でなくてはならない

一つ息をつき頭を落ち着かせる


『その目撃した我が国の民に被害がなかったことをせめての救いとしよう』


「あっいえ…」


『ん?』


「恐らくですが、我が国の者ではなく国外からの旅人かと」


『そうなのか?』


「はっ、報告を受けた者からの話だと金色の髪をした若い女性とのことです。この国に金色の髪はいないので恐らくそうかと」


『金色の……髪?』


ハーディンの顔には

明らかな驚きが見て取れた


そしてその兵士の両肩を掴んだ


『その者は四区だと言ったか?』


突然の王の様子の変わりように面食らいながらも


「はっ、四区で見回り中に報告を受けたとのことなので四区内の宿屋に宿泊しているのではないかと」



兵士たる堂々たる素振りで答えた

その男とは反対に


王はどこか動揺を隠せないようだった


「そうか……ありがとう、四区か…」


なにか思わしげな表情を浮かべ

王は自室へと歩き始めた


____________________


さらに数刻後



移り変わり ミザリーとベイカーの休む四区の宿



『なにか対策を取ってくれてるのかしらね…』


ソファに腰掛けほほ杖を突いたミザリーが零す


「うーん、信じてはくれたみたいだけど具体的にどう動くかまでは分かんないかなぁ…」


二人の忠告を受け取った兵士は

【四つ脚】の容姿を克明に告げたことで信憑性ありと取ってくれたように感じた


だがそれがどの程度の対策を講じる事になったか二人には知る術がなかった為やきもきしている


「兵士さんが外壁の方へ集まってるみたいだ、調査の為かも」


『…ねぇ、悪いけど兵士にどうこうできるようなモノとは思えないんだけど』


「確かに、ミザでさえ吹っ飛ばしちゃうんだもんな…大丈夫なのかな」


『やなこと思い出させるわね…』


ミザリーの口元が苦みばしったように歪む


『あいつ…あの感覚…』


「ん?どうかした?」


『ん…なんでもないわ。それよりこっからどうするかよ』


「一度、整理しよう。昨夜の出来事でちょっと事態がこんがらがってきた気がする…」



『そうね…急に妙な出来事が重なって訳わかんない』


ため息をひとつくと

ミザリーは天井を見上げた


母の足取りを追って王都の

リーダ・バーンスタインを尋ねたが

これといった収穫はなかった


だが


「まずはアリスさんの足取りを追って、リーダ・バーンスタインに会いに王都に来た。そして、会うこともできた」


『それでもリーダからはこれと言った情報はなし、母さんとリーダに縁があったってことぐらいしかわかんなかった』


「うん、そしてその帰り際に後をつけられた。恐らく、あの時つけてきたやつが深夜の宿に襲いかかってきたやつだ」


『その狙いは…』


考えを口に出すのもなんとなく恐ろしい


「多分…ミザリーだ」


『そんであいつは私たちがハンドベルからやってきたことを、ハンドベルが悪魔に襲われ私が死んだということを知っていた』


「しかも、それが不都合だと言わんばかりにね。恨みを買う覚えなんて…ないよねぇ…」


重なる疑問の中にある

最も深い疑問がそこにあった


ベイカーはミザリーという人を知っている

つんつんしたところはあるが

命を狙われるほどの恨みを買うなんて

まず信じられないのた


『当たり前よ…』


「とどめに四つ脚だもんな…四つ脚も…意思があった」


『四つ脚とあの悪魔になったヤツには繋がりがあると思う?』


「全くの無関係ではないと思う、でも繋がりがあるとすればそれはそれで」


『更に訳わかんないと…なんにしろあの悪魔は四つ脚にやられちゃったし』


「四つ脚はミザでも手に負えない…」


手詰まりという状況に少なからず

気持ちもうなだれてしまっている


「そうだなぁ、切り替えてもう少し王都でアリスさんのこと探ってみる?宿屋とか周りでもなにか手掛かりがあるかも」


『それも良いけど…もう一度リーダ・バーンスタインに会ってみましょ』


「あの隊長さんに?四つ脚のこと?」


『それはとっくに耳に入ってるんじゃない?』


「じゃぁどうして?」


『考えてみなさいよ、私らはここに来たばっかり。それなのにあんな奴らに襲われた、そしてその第一の訪問者はあの隊長さんに会いに行った後に私らの後をつけてきたのよ?』


「なるほど…もしかして無関係ではないってことか…ミザにしちゃ鋭い」


『ひとこと多いわよ』


うっかりといった感じで肩をすくめるベイカーだが、確かにミザリーの言う通りだと感じた


「どっちにしろ少し休もう、四つ脚の報告が入ったばかりで多分隊長さんもドタバタしてるだろうしミザも疲れたでしょ」


『まぁ…結局寝れてないしね』


「明るいうちは狙われるなんてこともないだろうし、仮眠とろうよ」


『そーね…じゃぁそうしましょ』


「そうそう、もうクタクタだし魂にも休息をね」


欠伸混じりに伸びをするとソファに身体を沈め、毛布に包まり


そして


じきに寝息を立て眠り始めた


『馬鹿みたいに早く寝付くわね…』


少し思案するような表情を浮かべ

ミザリーも空いているベッドへと身体を投げた


『少しの仮眠で十分よ…』


間もなくミザリーも眠り着いた

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