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My Nightmare  作者: 燕尾あんす
炎上前夜
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25/98

金色と銀色

# another side



親切な兵士に言伝を頼んでもしばしの時間が経った頃


二人の宿泊する宿に先程の兵士が訪れてきた



「リーダ隊長がお会いになるそうだ、この宿の場所を伝えているから此処で待っていれば面会できるだろう」


「ありがとうございます、親切にしてもらっちゃって」


ベイカーが深々と頭を下げる

それにつられてミザリーも頭を下げた


照れくさそうに兵士が片手で頭をかく


「いや、私にもあんたらぐらいの子供が居てね…気にかかっただけだから」


『…助かりました、本当に』


「母親のこと、なにか聞けるといいな」


そう言い残すとどことなく照れくさそうに

兵士は宿を去っていった


「なんかいい感じに事が進んでるね」


『なにか…聞けるかしら』


ミザリーが不意に不安そうな表情を浮かべる


無理もない


ミザリーが命を賭して庇った母親

その母親が自分を救うために

命を落としてまでミザリーの魂を呼び戻したのだ


どんな意図を汲み取れれば

良い結果として捉えれるのか


それは図り知ることができず

正解のない問いの答えを

聞くのが怖いとも思える


「それでも、進もうよ。立ち止まってちゃ何も見えないんだから」


なんとなく諭すかのようにベイカーが言った


『…そうね、なるようになる、ね……?』


ミザリーの語尾が疑問を表したのは

外が少し騒がしくなったような気がしたからだった


『なにかあったのかしら?』


「なにかって…なんだろう?」


ベイカーが宿泊している部屋の窓を開けて外の様子を伺うと


「んー……なんだ?あれ……げっ!」


『げってなによ?………っっ』


素っ頓狂な声を挙げたベイカーを押しのけ、窓の外を覗き視界を空に移したミザリーは言葉に詰まった


『あれって…』


「マカラドレイク…だっけ…?」


往来の人々が騒いでいる原因は

空を悠々と飛ぶ黒い巨大な鳥のような悪魔


以前砦町スラープで、二人の前に現れたマカラドレイクと呼ばれる悪魔だった


『最悪……それも一匹じゃないじゃない、パーティかなんかなの?』


「パーティって割には少ないけど、それでも十ぐらいいるんじゃないか?…」


一匹を退治するのにも散々苦労させられた存在が複数匹いるという事実に二人の表情は曇ったが

そうも言っていられない


「待てよ、僕らが出張らなくてもここには兵士がたくさんいるんだ。対応策ぐらいあるんじゃないかな?…ってあれ?」


ベイカーが尻ごんでいる間に

ミザリーは大剣(鈍器)ノルニルを担ぎ、窓から飛び降りていった


「ちょっと!ミザっ!」


『時間稼ぎくらいはできるでしょ…やってみるわよ』


そう言いながらミザリーは騒動の方へと駆けていく


「ミザは案外正義感強いんだよなぁ…」


とボヤきながらも幼馴染を放っておけるはずもないベイカーは追うように


と言っても窓から飛び降りこそしなかったが


ミザリーを追うことにした





# misery side


先程までの活気とは

また違う騒がしさをかいくぐりながら

ミザリーは駆けていた


この王都ソーデラルは

王城のある中心区から外に向かい住居の第一区、城壁を挟み、第二区、さらに城壁を挟み第三区、城壁、第四区と幾重にも分割されている作りとなっている


ミザリーやベイカーが宿をとっているのは最も外側の第四区


すれ違う人たちの言動からすると

マカラドレイクの襲撃にあっているのは第三区のようだった


とかく急がなければと駆けていると

背後からかすかにベイカーの声が聞こえてきた


(『追ってきたのね……案外根性あるのよねアイツ…』)


砦町スラープの時も

襲われる危険を伴うと知りつつ

弩弓の補修を行い結果的にマカラドレイクへの止めを刺した


(『あのヘタレが…ねぇ』)


となんとなく思いにふけった瞬間


ミザリーの足元に影が落ちた


ハッと視線を上げると

すぐ真上、3mほど上をマカラドレイクが滑空しミザリーを追い抜いていった


低空飛行しているとはいえ

地を走るミザリーには手を出し難い距離である


(『どこかから飛び乗れないかしら』)


目まぐるしく視線を走らせて

機を狙っていると


「ミザっ!撃ってっ!」


言われて思い出した


ミザリーは懐に手を突っ込むと

ベイカーから託された大型拳銃を取り出した


『練習もしてないってのに…』


ぶっつけ本番で使うのに

やや躊躇いが持たれたが

そこは改修したベイカーを信じたのだろう


駆けながら狙いを定め

固い引鉄を


引いた


〈ドンッ〉


〈ボンッ〉


発射音に続き、着弾し破裂した音が響く


『なるほど…ご機嫌みたいね』


案外狙い通りに着弾したことに驚いた


確かに、ベイカーの言った通り弾は貫通せず着弾した場所で爆ぜた


〈ギィャヤァッ〉


大きく翼をぐらつかせ

衝撃に耐え切れなかったらしい


羽ばたきをゆるめ

マカラドレイクは地に墜落した


地に堕ちたマカラドレイクはもがきながらも

なんとか起き上がろうとしていた

だが頭部は揺れ

焦点も定まっていなさそうだった


並の拳銃ではこうはいくまい

ミザリーはやや呆れながらも駆け寄り


革袋を外し

ノルニルをマカラドレイクの頭部目掛けて振りかぶった


ゴギィッ


鈍い音を放ちながら

20kg相当あるノルニルの剣先は

その頭部の側面へとめり込んだ


ピシッ


鈍撃を受けた頭部から硬質化していき

硬質化が全身に回った時

その身体は弾けて、消えた


『物騒なもん持たしてくれるわね』


ノルニルを担ぎ直しながら

追いついてきたベイカーを一瞥しながら愚痴た


「そんな物騒なもん振り回すミザに言われたくないよ」




〈ギィャヤァ〉



と会話を裂くように

嘶きが聞こえた


其方に視線を向けると


町の通路のなか

足踏みのように土を蹴り上げながら


こちらを睨みつけるマカラドレイクの姿があった


「さっきの悲鳴を聞きつけて来たのか?」


『悪魔にも仲間意識があるのかしらね…』


まだ緊張は止まない

と体勢を低くノルニルを構え直した時



ミザリーの耳に金属音が響いてきた



キィンッ…キンッ…



『…なに?』


鋭い金属が不規則になにかにぶつかるような音


それと同時になにか得体の知れぬものが迫る感覚


注意をわずか逸らしていた目を

マカラドレイクに差し戻した


その時


通路沿いの並ぶ家々の屋根の上より

何かがマカラドレイクへと降り立った


ふわっと重力を感じさせないそれは

飛び乗られたマカラドレイクさえ気付くのがかすか遅れた


刹那


フッと


そのなにかが回った


そして銀色の筋が円を描くように

マカラドレイクの首筋を渡った


ミザリーの目が捉えていたのは


銀色の長い髪

ヴェールのような綺麗な髪を揺らしながら


軍服の女性が

剣を構え、回り


マカラドレイクの首を跳ねた瞬間だっ

た


そう認識した時


マカラドレイクの首は胴を離れ

地に落ち弾けて消えた


残った胴は首を落としたことにも気付かず

直立したまま


その女性を身の上に残したまま

弾けた


足場を失った女性は

何事も無かったかのように着地し


視線をこちらに向けた


しなやかな振る舞いでこちらに近づいてくる


身長はミザリーより少し高いだろうか

歳もミザリーより少し上に見える


しかし

かすか開いた目には

若年とは思えない深く燃ゆる赤色が灯っていた


整った顔立ちは美しく

妖艶な雰囲気を感じた


剣を引きずるのは癖だろうか

それとも剣が重いのか


キンッ…キンッ


と地にぶつけながらミザリーの方へと近づき


その口を開いた


「あなたが…アリス・リードウェイの娘、ミザリー・リードウェイ?」



やはりか、と思いつつ

ミザリーは頷いた



「そう、私がリーダ・バーンスタイン…お待たせしたかしら…?」


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