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老鍼灸師は転生しても治さない  作者: かどやん。
第3章 神木エルヴァーナと青い龍

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第57話 野営というか、ほとんどキャンプ

 夕暮れが近づき、その日は山中で一泊することになった。


 日が暮れる前に、サラが野営に適した場所を見つけた。


 水場から近く、風を避けられ、周囲も見渡しやすい。


 騎士たちは手慣れたものだった。


 あっという間に火が起こされ、夕食の準備が進んでいく。


 その中で、少し意外だったのがガイルだった。


「ガイル殿、料理もするのか?」


「遠征ではよくやりますよ」


 そう答えながら、鍋の中身を手際よく混ぜている。


「団長の料理、すごく美味しいんですよ」


 なぜかサラが誇らしげに言った。


「なぜ、おぬしが自慢げなんじゃ」


 サラ自身は料理があまり得意ではないらしく、手伝う気はまるでなさそうだった。


 一方、ロイズは意外にもよく働いている。


「団長、それ切ります!」


「頼む」


「薪も足しておきますね!」


 普段の騒がしさからは想像できんほど、てきぱきと動いていた。


「おぬし、料理はできるのか?」


「最低限ですけどね。遠征じゃ、自分たちでやらないと食えませんから」


「ほう。では儂も――」


 何か手伝おうと腰を上げる。


 すると、すぐさまロイズが振り返った。


「先生は座っていてください!」


「なんじゃ。儂にも何かやらせい」


「大丈夫ですって!」


「儂は九十三じゃが、身体は十歳じゃぞ」


「どっちにしても働かせづらいんですよ!」


 なるほど。もっともじゃ。


 ・・・・・・


 しばらくすると、夕食が出来上がった。


 肉と野菜を煮込んだ、素朴な料理だった。


 一口食べる。


「ほう!」


 思った以上にうまい。


「どうです、先生!」


 なぜかロイズが得意そうに聞いてくる。


 おぬしが作ったような顔をするでない。


「グレイ、ごはん出来たぞー」


 グレイはサラから食事をもらっている。


 だいぶ打ち解けてきたようじゃな。


 そこへ、ロイズがちょっかいをかけておる。


「グレイ、これも食うか?」


 グレイは完全に無視。


 ツンとそっぽを向いた。


 どうやらロイズには、ほとんど興味がないらしい。


 いくら呼ばれても一度見るだけで、すぐに儂の足元へ戻ってくる。


 やがてロイズが、こちらへやってきてぼやいた。


「先生、もしかして俺って嫌われてます?」


 いや、あれは嫌っているというより、関心がないだけじゃろう。


「嫌われてはおらんと思うぞ。たぶん」


「その『たぶん』やめてもらえません!?」


「なんじゃ。グレイと仲良くなりたいのか?」


 そういえば、何度無視されても懲りずに話しかけておる。


「いや、昔うちでも猫を飼ってたことがあって。なんか思い出すんですよね」


「ほう」


 意外な一面だ。見た目はチンピラみたいなくせに。


「それに、カッコいいじゃないですか。あいつら。人に媚びたりしないところとか」


「なるほどのう。媚びない、か……」


 儂の視線の先では、グレイがサラの足元にすり寄って、もっと肉をもらおうとしていた。


 しっかり、媚びておるが。


 ・・・・・・


 食事を終える頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。


 儂は焚き火のそばに腰を下ろした。


 山の夜気は冷たい。


 だが、悪くない。


 ぱちぱちと薪が爆ぜる音を聞きながら、空を見上げる。


 満天の星だった。


「……綺麗じゃのう」


 地球では見たことのない星の並び。


 当然なのだろうが、どれ一つとして馴染みがない。


 危険な森を歩き、魔物と向き合っている時よりも、こうして静かに空を見上げている時の方が、不思議と実感する。


 ああ、本当に異世界へ来たのだな、と。



「神木にはまだかかりそうかの?」


「はい、あと数日はかかりますね」


 サラが答えた。


「順調なら、三日後の午前中には」


「そうか」


 神木エルヴァーナ。


 筮竹が示した、山の向こうの巨大な樹木。


 実際には、どのようなものなのか。


 龍穴と関係しているのか。


 そして、なぜ枯れ始めているのか。


 考え始めると、眠るのが惜しくなる。


「先生」


 サラの声が飛んできた。


「なんじゃ」


「明日は早いですから、ちゃんと寝てください」


「……うむ」


 なぜ分かった。


「今から何か調べようとしてましたよね」


「……いや?」


「夜更かししたら、アリエル様に言いつけますよ」


 それはやめてくれ。


「先生もサラ先輩には勝てませんね」


 ロイズが、同士を見つけたかのように嬉しそうな顔をしている。


 その顔を見て、笑ってしまった。


 やかましいわ。



挿絵(By みてみん)

お読みいただき、ありがとうございます。


キャンプで仲が深まってきた、みたいになってますね。


一日一話、毎日20時30分頃に更新する予定です。


続きを読んでみたいと思っていただけたら、星の評価やブックマークで応援していただけると大変励みになります。


よろしくお願いいたします。

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