↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨のち、エレール〜店主は元最強冒険者、看板娘は……  作者: Kuran


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
28/55

第二十八話:過去を振り返るのは辛いです

 予想外の拒絶に、エリーは立ったまましばらく茫然としていたが、我に返ると力なく椅子に座り込んだ。


「なによ……せっかく私が将来を切り開く道を持ってきてあげたのに。お店だって、もう潰れそうじゃない。……ばかアレン」


 ぶつぶつと独り言をこぼすエリーに、ディーネが優しく語りかける。


「そう言わないであげてください。先ほどのお話。事実ではないものの、アレンは『自分がエレナさんを死なせてしまった』と、本気で信じ込んでいるんですから。それにこのお店を続けているのも、エレナさんとの約束があるからです」


「……魔王討伐の日、本当は何があったの?」  


 普段は明るいディーネが、どこか遠い過去の闇を見るような悲しげな目をした。エリーには、聞かずにいるという選択肢がなかった。


 ディーネは悩んだ。エリーにアレンの過去を明かして良いものかと。  


 だが、闇の中で苦しみ続けるアレンを救い出せるのは、この騎士団長かもしれない。それに、アレンが「後は任せた」と去ったのは、真実をエリーに伝えてほしいという、無意識の願いがあったからではないだろうか。ディーネはそう勝手に解釈することにした。


「……少し、長くなるかもしれませんけれど」


「大丈夫。是非、聞かせて」


 ディーネは一度大きく息をつき、語り始めた。


「まずはエレナさんのことから話しましょうか。彼女は外見の美しさだけではなく、とても強く、誇り高い女性でした」


「……剣聖、だったのよね」


 剣聖。世界でただ一人、剣の道を究めた者にしか許されない称号。エレナはその称号を女性として初めて手にした、最強の剣士だった。


「でも、彼女の凄さは強さだけではありません。間違いを決して許さず、弱きを助け導く、聖女のような方でした。……アレンが彼女に惹かれるのは、必然だったのでしょうね」


「えっ……?」  


 アレンが恋心を抱いていたと聞いて、エリーの胸の奥で、正体不明のモヤモヤが渦巻いた。しかし、今の彼女にはそれが何なのか理解できなかった。


「まあ、アレンも見ての通りの人好しです。二人が恋仲になるのは、時間の問題でした」


「こ、恋仲……!?」


 動揺を隠せないエリーを微笑ましく思いながら、ディーネは本題へ入る。


「将来を誓い合った二人は、魔王を討伐して平和が戻ったら、田舎で小さなお店を開こうと約束していたのです」


「……じゃあ、この店は」


「アレンは一人になっても、その約束を果たすためにこの町で雑貨屋を始めました。アイテムの知識は豊富でしたからね。もっとも、経営者としての才能は壊滅的でしたが。それでも彼がこの店を手放さないのは、ここがなくなると、エレナさんもこの世界から完全に消えてしまう……そんな恐怖に囚われているからかもしれません」


「そうだったの……」  


 知らなかったとはいえ、軽々しく「団長になれ」などと言ってしまった自分を、エリーは激しく恥じた。


「魔王を討伐した日、何があったのかを説明します。あの日は、本当に悪いことが重なりすぎていました」


 ディーネは記憶の悪夢をなぞるように、目を閉じ、両手を固く握りしめた。


「エレナさん、クラウス、そして他の二人の仲間も、確かに最強のパーティーでした。ですが、魔王軍はそれ以上に強大だった。圧倒的な数の力で、皆は分断されてしまったのです。そんな中でアレンは、一人で魔王と戦っていました……」


 言葉を詰まらせるディーネを、エリーは急かさず見守る。


「突然、クラウスの魔法が暴発し、アレンの足場を崩したのです。その隙を、魔王が逃すはずがありません。アレンに振り下ろされた必殺の一撃……」


 ディーネは唇を噛みしめる。


「私はアレンを守ろうとしました。でも、距離が遠すぎた。私は間に合わなかった。全てを諦めかけたその時、アレンの前にエレナさんが立ち塞がったのです。……そして、魔王の剣が……」


 静寂が、店を支配した。


「……逆に隙の生じた魔王に、アレンが渾身の一撃を与え、瀕死になった魔王をクラウスが討ち取りました。けれど、エレナさんは助からなかった。あの時、一瓶でもポーションが残っていれば……」


「だから、彼は……」


「そうです。必要な時に必要な分だけしか売らないのは、あの日のトラウマのせい。……ですが、エレナはクラウスのせいで……」  


 ディーネは首を横に振った。


「戦いの直後で、誰もクラウスを責めませんでした。それほどあの戦いは激しいものだった。それなのに……」


 ディーネは全身を震わせ、表情を険しく歪めた。


「……アレンを悪者にして追放するなんて。もしグランシーヌへ行って、その嘘つきの首を絞められるなら、今すぐにでも殴りに行きたいくらいですわ!」


 だが、ディーネはアレンから遠くへは離れられない。グランシーヌへ行こうと誘っても、彼は二度と戻らないだろう

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

「面白かった!」「続きが気になる!」と思っていただけたら、ページ下部にある【ポイント評価(★★★★★)】やブクマをして応援していただけると、更新の大きな励みになります!

感想や一言レビュー、いいね(リアクション)もお気軽に残してもらえると嬉しいです。

次回もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。