↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨のち、エレール〜店主は元最強冒険者、看板娘は……  作者: Kuran


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/55

第十話:大っ嫌いです

 その鋭い叫びに弾かれたように、エリーは素早く黒衣の男から距離を取った。


「くっくっくっ……危なかったねぇ、グレイグ。契約を果たす前に死なれては困る。だが安心しろ。私が来たからにはお前の望みは叶えてやろう。……代わりに、分かっているな?」


「あぁ……ありがたき、幸せ……」


 急に憑き物が落ちたように正気を取り戻したグレイグが、恍惚とした表情で膝をつく。直後、男の影から噴き出した濃密な黒霧がグレイグを呑み込んだ。やがて霧が晴れたとき、そこにはもう、男の形を留めたものは何一つ残っていなかった。


「……何よ、今のは」


 目の前で起きた超常的な現象を、エリーの理解が拒絶する。しかし、アレンとディーネの視線は、冷徹にその本質を見抜いていた。


「魔人か……」


 アレンの呟きに、黒衣の男が愉悦に満ちた反応を見せる。


「ほう、よく分かったな。私はセリエル。……まぁ、覚える必要はないぞ。お前たちはここで全員死ぬのだから。それにしても美味だった。恨みが強い魂ほど、良い味がする」


 セリエルが放った無造作な殺気。


 それを真正面から浴びたエリーは、一瞬、自分の首が撥ね飛ばされる幻覚を見た。全身の細胞が恐怖に震え、膝が折れそうになる。だが彼女は強靭な精神力で踏みとどまり、白指が浮き出るほど剣を強く握りしめた。


 魔人――。


 かつて魔王が率い、人類を絶滅寸前まで追い込んだ異形の種族。二年前の戦いで大半が掃討されたはずだが、稀にこうして生き残りが現れる。討伐ランクは最低でもB、そのほとんどがAランク以上に分類される人類の天敵だ。


 エリーも過去にAランクの魔人と対峙した経験はある。だが、このセリエルという個体から放たれる圧力は、それらとは次元が違った。


(勝てる……ビジョンが、浮かばない)


 戦う前から突きつけられた圧倒的な実力差。ランクを付けるなら、確実にS。エリーは奥歯を噛み締め、ある覚悟を決めて魔人を見据えた。


「……貴方の狙いは私でしょう? この二人はたまたま居合わせただけよ。彼らを見逃してはくれないかしら」


 セリエルは三人を舐めるように見回し、鼻で笑った。


「お前がエリーか。グレイグとの契約は『お前をできるだけ苦しめて殺すこと』だ」


「なら……!」


「ああ、安心しろ。残りの二人は、苦しまないように一瞬で殺してやるよ」


 気味の悪い笑みを浮かべるセリエルに、エリーは唇を噛み切らんばかりに震わせた。


「……ごめんね、二人とも。私のせいで巻き込んじゃって。私が時間を稼ぐから、その隙に逃げて!」


 剣を構えたまま、死を覚悟した悲痛な声を絞り出す。だが、その震える剣の刀身に、誰かの手がそっと添えられた。


「……?」


アレンだった。彼はエリーの剣を優しく押し下げると、場違いなほど穏やかな笑みを浮かべた。


「あれくらいなら、俺とディーネでなんとかなるよ。団長殿は、無理せず下がっていてくれ」


「……何を言っているの!? 貴方、あいつの強さが分からないの!?」


 エリーは必死に彼らを止めようとした。ディーネがそれなりの魔法の使い手であることは認める。だが、目の前の怪物は桁が違うのだ。


「確かにそれなりに強そうだけどさ。団長殿が命を懸けるまでもないよ。……いいから、見ていてくれ。ディーネ、行くぞ!」


「了解です。……私、魔人って種族は大嫌いなので。手加減抜きで行かせてもらいますね」


ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


**「少しでも面白かった」「続きが気になる!」**と思ってくださった方は、ページ下部の【ブックマークに追加】や【評価(★★★★★)】を押していただけると励みになります!


また明日のお昼に会いましょう(^^♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。