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地球では。

※幕間は説明的な部分が多いので飛ばしても構いません。

 朝。ある一戸建ての二階。締め切ったカーテンで薄暗い室内のディスプレイには

『異世界TIPS』の文字が映っていた。


 地球での異変は2013年頃、現在では多くの人々が利用している動画投稿及び配信サイトにて正体不明の異世界の子供の映像が突如配信され始めた。

 当初は物珍しさで注目を集めたが、孤児院と街の生活だけを送る配信は次第に飽きられ、2026年には異世界配信そのものが日常になっていた。


 タンスイは先日、ダンジョンで手に入れた啓示《アポカリプス》を見て前世の記憶を取り戻した。

 直後、また異変が起きた。

 地球人は【機器が無くても念じるだけで視界内に配信画面が浮かび上がる】不思議な力――【天技】を得たのだ。


 天技とは魔力を消費して発動する異能、いわゆるスキルだ。


 半透明の配信画面が視界に映る近未来の技術のような力。

 さらに妖精体では、簡単な魔法を少し使えるようにもなった。

 ――地球では使えないが。



*

 私たちはすぐに本人へ接触し事情を説明した。

 タンスイさんは転生前のことをあまり語らず、転生あるあるの神の存在も知らないという。それ以上はこちらも尋ねないし、詮索すべきではないと考えた。

 転生とは死を以て生まれ変わることで、訊いた所で同情を集めるだけだ。


 彼は異世界の食材を地球の味に例えるっていう、前世でやってた趣味をやりたいそうだ。まぁ確かにドラゴンの肉の味は興味ある。

 

 彼の配信の特徴として、視聴者を参加させようとしてくるんだよね。

 いわゆる参加型ってやつ。

 おかげで地球と異世界が身近になる~っていうのは達成できてると思うな。


 共感と共有、か。あのコメントは間違ってないんだろう。

 古参であればあるほど、彼の幼少の頃を見ているからね。

 私もできる限り協力しよう。


*


*

 あるしがない男性会社員。

 電車に揺られ会社へ向かう中でも、話題はタンスイの配信とドラゴンの肉で持ち切りだった。一体どんな味なんだろうと想像しながら目を閉じて配信を見る。

 いつもなら車内の誰とも分からない談笑はノイズでしかないのだが、同じ話題を共有しているとついつい耳に入ってしまう。これが共感共有というやつなのだろうか。


「俺がドラゴンの肉の味を考えるなら、そうだな。おしるこにしたい」

「嫌すぎる!」


 他人の会話が聞こえたが本当にやめろそれは。意外性に脳を支配されて逆張りする奴ほどおもんないものはない! それなら普通でいい!

*


*

 白杖を持つ若い女性は公園のベンチに座る。

 霧の世界を生きてきた彼女は、初めて鮮明な世界を見た。

 ――異世界を。


 まるで神様のような視点、まるで小人のような視点、まるで恋人のような視点で晴れた世界を見る。音だけの世界から抜け出せた。


 私はタンスイさんの力になりたい。

 魔力が何かは分からない。供給しているらしいけれど、疲れることもないし。

 だから私は、ずっと【はい】を押し続けるんだ。

*


読んでいただきありがとうございます。


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